時間は命
「モモ」は主人公の名前です。
親や兄弟はいなく、町のはずれにある劇場跡に一人で住む、浮浪少女です。
モモは「相手の話を聞く」ことに長け、彼女のそばには人が集まります。
モモの話を聞き方は、
じっとすわって、注意ぶかく聞いているだけです。その大きな黒い目は、あいてをじっと見つめています。するとあいてには、じぶんのどこにそんなものがひそんでいたかとおどろくような考えが、すうっとうかびあがってくるのです。
モモは、時間をかけて、相手の話を聞くことができるのです。
一方で、「時間どろぼう」と呼ばれる存在がいます。
人間の時間を食い物にして生きる存在のことです。
時間どろぼうは、人間が節約した時間を借りて、生き永らえています。
なので、多くの人間に、無駄な時間を過ごさないようにしてもらう必要があります。
例えば、時間どろぼうが、理髪店の店主に言ったことは、
- 客と雑談しない
- 母の介護をしない(施設に入れる)
- 飲み会に行かない
- インコを飼うのをやめる
- 読書をやめる
- 彼女と会う頻度を減らす
- 寝る前にぼうっとしない
などです。
時間どろぼうは、言葉巧みに、倹約した時間を借ります。
だいじなことはただひとつ、 できるだけ短時間に、できるだけたくさんの仕事をすることです。
工場や会社には、標語が掲げられます。
時間は貴重だ――むだにするな!
時はかねなり――節約せよ!
子どもたちの遊びは、
なにか役にたつことをおぼえさせるためのものばかりです。こうして子どもたちは、ほかのあることをわすれてゆきました。ほかのあること、つまりそれは、たのしいと思うこと、むちゅうになること、夢見ることです。
人々は、モモのところへは行かなくなります。
無駄なことに時間を割かないという、時間どろぼうの考えは、大切な教えです。
客との雑談や、行く必要のない飲み会など、無駄に感じるものはカットすべきでしょう。
問題なのは、
- 倹約した時間が、自分のために使われていないこと
- 時間の倹約自体が目的になっていること
です。
その結果、倹約した時間を、時間どろぼうに奪われています。
時間どろぼうは、人間の時間でしか生きられない存在なので、なんとかして時間を奪わなければいけません。
時間を倹約した人間はどうでしょう。
例えば、仕事において、業務内容を見直し、作業時間を短縮できました。それにより残業せずに定時で帰れるようになりました。
次に待っているのは……
他の仕事を任されることです。
業務内容を見直し、定時で帰れることになったのに、他の人よりも残業時間が少ないという理由で、仕事を任せられます。それでまた残業です。
それは、倹約した時間を、時間どろぼうに奪われているのと同じでしょう。
では、奪われないようにするにはどうすればいいか。
仕事をきっぱり断ることです。
そのためには、倹約した時間で何をしたいのか、はっきりさせておく必要があります。
調べた言葉
- 評定(ひょうじょう):人々が集まって、相談して決めること
- 強情:自分の考えや行動を押し通そうとすること
- 篠つく雨:激しく降る雨
- 口先三寸:口先だけの言葉で世の中を渡る
- まんじり:ちょっと眠るさま
- 不倶戴天(ふぐたいてん):同じ天下には生かしておけないほど、恨みや憎しみが深いこと
- あでやか:なまめかしく美しいさま
- 鉄面皮(てつめんぴ):恥知らずで、ずうずうしいこと