いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介(著)の感想【介護する側される側】(芥川賞受賞)

介護する側される側 28歳の主人公は、前職を自主退職し、就職活動をしています。 仕事がなかなか決まらないので、家で資格の勉強をしたり、筋トレをしたりします。 主人公は、 現在無職だが死にたいと思うようなときなど一瞬もおとずれず、生を謳歌したい気…

『死んでいない者』滝口悠生(著)の感想【まともでない奴が魅力的】(芥川賞受賞)

まともでない奴が魅力的 死んでいなくなった男の通夜に、親戚が集まります。 子、孫、ひ孫。以前から関係性のある者もいれば、関係性のない者もいます。 親戚一同を分ける場合に、2通りあるそうです。 上の世代、下の世代(年齢)で分ける まともな奴、まと…

『異類婚姻譚』本谷有希子(著)の感想【家族の末路】(芥川賞受賞)

家族の末路 専業主婦の主人公は、旦那と二人暮らしをしています。 ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。 結婚して4年の主人公は、同じマンションの住人の女性に、旦那と顔が一緒になってきたことを打ち明けます。 女性の知り…

『大阪の西は全部海』岸政彦(著)の感想【思考から離れられる場所】

思考から離れられる場所 大阪に住む40歳過ぎの女性が、一人語りしています。 パートナーらしき男性に語っているようですが、誰なのか、生きている人への語りなのかは不明です。 私はただの地味な、真面目な、あんまりよう喋らんけどひとに気ばっか使ってる事…

『悪い音楽』九段理江(著)の感想【心がない教師】(文學界新人賞受賞)

心がない教師 面白く一気に読みました。 文學界新人賞の受賞作2作のうちの1作ですが、本作の単独受賞で良いと思いました。 中学校の音楽教師である主人公は、男子生徒同士の喧嘩の第一発見者として、話し合いの場に出席させられます。 生徒の親や、教頭など…

『穀雨のころ』青野暦(著)の感想【きわめて優れたスケッチ】(文學界新人賞受賞)

きわめて優れたスケッチ 文學界新人賞には、2817作の応募があったそうです。 受賞作は2817作のうちの2作。ですが選考委員の選評は厳しいです。 『穀雨のころ』は、長嶋有さんだけが○をつけ、その他4人の選考委員は×をつけたそうです。 本作は、高校生の男女4…

【三島賞発表】第34回三島由紀夫賞受賞作発表(2021年)の感想

第34回三島由紀夫賞受賞作 三島賞の受賞作が、2021年5月14日(金)に発表されました。 受賞作は、乗代雄介の『旅する練習』です。 旅する練習 作者:乗代雄介 発売日: 2020/12/28 メディア: Kindle版 感想はこちらです。 『旅する練習』は、前回の芥川賞で候…

『彼岸花が咲く島』李琴峰(著)の感想【正しいと思うことをする】(三島賞候補、芥川賞受賞)

正しいと思うことをする 主人公の少女は、流れ着いた島で、記憶をなくしていました。 島の海岸には、彼岸花が咲いています。 主人公を発見したのは、同い年くらいの少女でした。彼女の話す言葉を、主人公は理解できません。 「ノロ」という役割を担った女性…

『象の皮膚』佐藤厚志(著)の感想【アトピーに苦しむ主人公】(三島賞候補)

アトピーに苦しむ主人公 象の皮膚とは、主人公の皮膚のことです。 硬くごわごわした象の皮膚は私の皮膚に似ている 主人公の女性は、小さい頃からアトピーに苦しんでいます。 同級生にいじめられ、家族からも汚いものを見る目で見られています。 社会人になっ…

『増補新版 書く人はここで躓く』宮原昭夫(著)の感想【芥川賞作家の小説の書き方】

芥川賞作家の小説の書き方 著者の宮原さんは、新人賞を受賞後、 芥川賞候補 直木賞候補 を経て、芥川賞を受賞しています。 その後、小説講座の講師をし、村田沙耶香さんを育てたそうです。 芥川賞受賞だけでなく、直木賞の候補にもなっているので、エンタメ…

『[実践]小説教室』根本昌夫(著)の感想【小説を書く楽しさ】

小説を書く楽しさ 著者の根本さんは、小説を書く楽しさや醍醐味を、3つにまとめています。 小説を書くこと、読むことの面白さが増す 過去のある一点から、自分の人生を生き直すことができる 自分が世界そのものなんだ、世界と一体なんだという感覚に目覚めて…

『デビュー作を書くための超「小説」教室』高橋源一郎(著)の感想【新人賞を受賞する方法】

新人賞を受賞する方法 著者の高橋さんは、いくつも文学賞の選考委員をしています。 本書の前半では、 文学賞の選考 文学賞の選考委員 新人作家の条件 が書かれ、後半では高橋さんの選評(群像新人文学賞、すばる文学賞、文藝賞など)が書かれています。 新人…

『本物の読書家』乗代雄介(著)の感想【ミステリー純文学】(野間文芸新人賞受賞)

ミステリー純文学 主人公は、母から3万円を貰う代わりに、老人ホームへ向かう大叔父に同行します。 経路は上野駅から高萩駅までで、電車で向かいます。 主人公が、遠い親戚の大叔父から、 彼に送り届けてもらいたい と指名されたのは、自分が読書家だからと…