いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『舟を編む』三浦しをん(著)の感想①【適材適所の重要性】(本屋大賞受賞)

適材適所の重要性

読んで思ったのは、適材適所の重要性でした。

本作のあらすじに、

出版社の営業部員・馬締光也(まじめみつや)は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた

とあります。

「辞書編集部に引き抜かれた」とありますが、馬締(主人公)は、営業部員として活躍していたわけではありません。

営業部からすると、辞書編集部に引き取ってもらった感じです。

馬締は営業部員としてまともにカウントされず、名指しで引き抜きをかけなければ、直属の上司にすら存在を思い出してもらえなかったほどなのだ

馬締(主人公)が辞書編集部に異動できたのは、

  1. 影響力のある辞書編集部員(他者)に見出された
  2. 営業部(自部署)で活躍してなかった

他者に見出されなければ、主人公は営業部員として在籍し続けて、リストラになった可能性もあります。

また、見出したのが人事に影響を与える人間でなければ、営業部に掛け合うこと自体できなかったでしょう。

それに、営業部で活躍していたら、営業部は主人公を簡単に手放さなかったと思います。

先入観のない他者に見出されたおかげで、主人公は、適材適所といえる辞書編集の仕事に就くことができました。

主人公は、営業部員しては活躍できませんでしたが、辞書編集部員としては、なくてなならない存在になりました。

主人公だけの力ではなく、他者がいたから実現可能でした。

一方、主人公の前任者の男性は、辞書編集の作業には向いてませんでした。

向いてないというより、前任者は辞書編集に興味がありませんでした。

辞書編集部には向いてませんでしたが、執筆者に原稿を依頼することや催促することなど、他者と関わる作業に向いてました。

何でもそつなくこなすけど、これといったものがないと思ってる前任者(対人関係スキルはずば抜けてますが)。

主人公は辞書編集が合ってましたが、前任者は、主人公ほど辞書編集が合ってませんでした。

彼は異動先でも、どんな仕事でも無難にこなせるでしょう。

しかし、主人公にとっての辞書編集のような、没頭できる何かはありません。

私も同じだなと思いました。

どんな仕事でも60点は取れます。赤点にはなりません。

ですが、90点以上取れるものがありません。

もしかしたら、90点以上取れるものが自分に眠ってるのかもしれませんが、自分ではわかりません。

わからなければ、他者から才能を見出してもらって引き抜いてもらうことはできないでしょう。

ではどうすればいいのか。

無理して60点を取らなくていいのかもしれません。

営業部員時代の主人公は、お荷物でした。

できないことを得意になる努力は、しなかったのだと思います。

できない部分は諦めて、できる部分だけをやる。

前任者は、持ち前のフットワークの軽さで、辞書向きの人材の情報を仕入れました。

前任者が情報を仕入れなかったら、人事に顔の効く上司に報告できなかったでしょう。

前任者が上司に報告してなかったら、主人公は辞書編集部に異動しなかったかもしれません。

何でも60点取るより、これはできないけどあれはできるなと思われた方が、できるものが際立つ気がしました。

何が得意かはわからないですが、苦手を無理して克服する必要はないと思いました。

感想②はこちらです。