いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『やまゆり園事件』神奈川新聞取材班 (著) の感想【入所者を助けたのに感謝されなかった】

入所者を助けたのに感謝されなかった やまゆり園事件とは、 2016年7月、神奈川県相模原市の知的障害者施設で起きた、殺傷事件です。 45人を殺傷、うち19人が死亡しました。 犯人(植松)は、事件のあった障害者施設の、元職員でした。 障害者施設に入職した…

『相模原障害者殺傷事件』朝日新聞取材班(著)の感想【同意の上での安楽死は否定できない】

同意の上での安楽死は否定できない 相模原障害者殺傷事件とは、 2016年7月、神奈川県相模原市の障害者施設で起きた、殺傷事件です。 45人を殺傷、うち19人が死亡しました。 被告は事件のあった障害者施設の、元職員でした。 被告は死刑になりました。 検察は…

『名場面で味わう日本文学60選』の感想【『蒲団』は勘違い小説の傑作】

『蒲団』は勘違い小説の傑作 作家、翻訳者、研究者(計6人)が、日本文学を10作ずつを選びます。 10作の名シーンを抜粋 シーンや作品を解説 抜粋シーンや解説により、読みたい本や再読したい本が増えました。 大江健三郎『新しい人よ眼ざめよ』 志賀直哉『城…

映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』の感想【デジモン初代好きにも楽しめる】

デジモン初代好きにも楽しめる 私はデジモン世代です。 携帯ゲーム アニメ(初代、02) プレステのゲーム を通ってきました。 そんな私でも、楽しめました。 本作は、2020年に上映された作品です。 主人公は、大学生になっています。 周りは就職が決まったり…

『教育』遠野遥(著)の感想【小説はなんでもあり】(野間文芸新人賞候補)

小説はなんでもあり 小説はなんでもありと、思わせてくれる作品でした。 主人公は、全寮制の学校の学生です。 この学校では、一日三回以上オーガズムに達すると成績が上がりやすいとされていて、学校側から生徒にポルノ・ビデオが供給される。 どんな学校? …

『街とその不確かな壁』村上春樹(著)の感想③【子易さんという魅力的な人物】

子易さんという魅力的な人物 感想①はこちらです。 感想②はこちらです。 本作で魅力的な人物といえば、 子易(こやす)さんを挙げる人が多いと思います。 私も同感です。 子易さんは、主人公が館長として就任した図書館の、元館長です。 主人公を支えてくれる…

『街とその不確かな壁』村上春樹(著)の感想②【きみはどこへ行った】

きみはどこへ行った 感想①はこちらです。 主人公は高校生のとき、「きみ」に出会いました。 その後、「きみ」と連絡がつかなくなります。 主人公は「きみ」のことを忘れられませんが、どうすることもできません。 十年以上経ったある日、主人公は、別の世界…

『街とその不確かな壁』村上春樹(著)の感想①【40年越しの仕事の背景】

40年越しの仕事の背景 『街と、その不確かな壁』を前作 『街とその不確かな壁』を新作 とします。 今回は、新作の巻末「あとがき」についての感想です。 ネタバレは最小限です。 前作の感想はこちらです。 新作を読む前に、前作を読んだときの感想はこちらで…

『街と、その不確かな壁』村上春樹(著)の感想【新作『街とその不確かな壁』を読む前に】

新作『街とその不確かな壁』を読む前に 2023年4月13日発売の新作を前に、『街と、その不確かな壁』を再読しました。 タイトルがあまりにも似ています。 違いは「、」があるかないかだけ。 新作『街とその不確かな壁』のあらすじを抜粋すると、 その街に行か…

『破局』遠野遥(著)の感想【再読して面白い】(芥川賞受賞)

再読して面白い 読むのは、3回目か、4回目です。 3回以上読む小説は、ほとんどありません。 遠野さんの作品では、『破局』以外にも、『改良』を4回読んでいます。 どうしてそんなに読むのでしょうか。 たぶん、面白いからです。 たぶんとつけましたが、面白…

『パパイヤ・ママイヤ』乗代雄介(著)の感想【少女の秘密基地】

少女の秘密基地 後半に進むにつれ、面白くなります。 前半は、正直退屈です。 乗代さんの作品を読んだことのない人は、序盤で脱落する可能性があります。 最後まで読むと、爽やかな気持ちになれます。 乗代さんの『旅する練習』に近い、ロードムービーのよう…

『オカンといっしょ』ツチヤタカユキ(著)の感想【自虐と皮肉が面白い】

自虐と皮肉が面白い 『笑いのカイブツ』が面白かったので、2作目の本作にも期待していました。 『笑いのカイブツ』の感想はこちらです。 『笑いのカイブツ』は、 笑いにストイックだが結果が出ない 笑いを諦めきれず、もがき苦しむ 認めてくれる友達や恋人と…

『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』町田康(著)の感想③【文学の最終的な目的】

文学の最終的な目的 感想①はこちらです。 感想②はこちらです。 文学の最終的な目的は何ですかって話です。 なぜ文学を読むのか なぜ文学を書くのか に、置き換えてもいいかもしれません。 町田さんは言います。 この世の熱狂から離脱すること、この世にいな…

『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』町田康(著)の感想②【詩と小説の書き方】

詩と小説の書き方 感想①はこちらです。 町田さんには、「おもろい詩の四条件」があるそうです。 感情の出し方がうまい 調べ(調子で持っていく、音楽的) そいつ自身がおもろい 書かれている内容が正しかったり、役に立ったりする 反対に、「おもろない詩」…

『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』町田康(著)の感想①【読書体験を振り返る】

読書体験を振り返る サブタイトルに惹かれて本を読んだのは、初めてでした。 「私の文学史」だけだったら、手に取らなかったかもしれません。 「なぜ俺はこんな人間になったのか?」があることで、どうして町田さんは、町田さんになったのか、気になりました…