きみはどこへ行った
感想①はこちらです。
主人公は高校生のとき、「きみ」に出会いました。
その後、「きみ」と連絡がつかなくなります。
主人公は「きみ」のことを忘れられませんが、どうすることもできません。
十年以上経ったある日、主人公は、別の世界に転移します。
転移先は、主人公と「きみ」が話していた場所(壁に囲まれた街)でした。
街に入るには、自分の「影」を引き離す必要がありました。
主人公は、自分の「影」を引き離します。
街の中にいる人間には、「影」がありません。
街の入り口には、門衛がいます。
街の外に出られるのは、門衛だけです。
一度入ったら、街の外に出られません。
主人公は「影」を引き離してもらい、街の中に入りました。
主人公は、当時の「きみ」に会うことができました。主人公だけが歳を取っています。
「影」は、本体を離れてしばらくすると、死んでしまうそうです。
主人公の「影」は主人公に言います。
あんたは外の世界にいたのが彼女の影で、この街にいるのが本体だと考えている。でもどうでしょう。実は逆なのかもしれませんよ。ひょっとしたら外の世界にいたのが本物の彼女で、ここにいるのはその影かもしれない。
壁に囲まれた街にいる「きみ」が、本体でないかもしれません。
- 壁に囲まれた街の中にいる「きみ」は影
- 外の世界にいた「きみ」が本体
では、外の世界にいた「きみ」はどこへ行ってしまったのでしょうか。
主人公の影は言います。
おれの目からすれば、あっちこそが本当の世界なんです。そこでは人々はそれぞれ苦しんで歳を取り、弱って衰えて死んでいきます。(中略)時間を止めることはできないし、死んだものは永遠に死んだままです。消えちまったものは、永遠に消えたままです。そういうありようを受け入れていくしかありません
外の世界では、「きみ」は主人公のもとから消えました。
影の言うように、消えてしまったものは、永遠に消えたままなのでしょう。
外の世界で、主人公が「きみ」に再会することはありません。
主人公は、壁に囲まれた街で生きることを選びました。
外の世界が本当だとしても、主人公は本当の世界で生きる意味がなかったからです。
主人公は、影だけを壁の外に逃がします。
しかし、影だけでなく主人公も、壁の外の世界に出てしまいました。
外の世界に戻った主人公は、仕事を辞めます。
夢を頼りに、図書館で働くことを選び、地方都市の図書館長になります。
私は何かが始まることを望んではいなかった。私が必要とするのは、 何も始まらない ことだ。このままの状態が終わりなく永遠に続くことだ。
- 何も始まらない
- このままの状態が終わりなく永遠に続く
まさに壁に囲まれた街です。
主人公の前の図書館長は、
本体と影とは本来表裏一体のものです
と言います。
本体と影とは、状況に応じて役割を入れ替えたりもします。そうすることによって人は苦境を乗り越え、生き延びていけるのです。何かをなぞることも、何かのふりをすることもときには大事なことかもしれません。気になさることはありません。なんといっても、今ここにいるあなたが、あなた自身なのです
壁に囲まれた街の「きみ」も、本体であり影なのでしょうか。
それに、「きみ」は一体、どこへ行ったのでしょう。
「きみ」は外の世界にはいません。
図書館に通う少年は、自らを人形として森の中に残し、壁の中の街に行きます。
残された少年の家族は、少年を探しますが、見つけられません。
「きみ」も外の世界のどこかに、人形のようなものを、残していたのかもしれません。
主人公は、「きみ」の残したものを見つけられませんでした。
それでも、主人公は外の世界で生きていきます。
新しい世界で、新しい人間関係を構築して、生活し始めるのが、良かったです。
感想③はこちらです。