いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『街とその不確かな壁』村上春樹(著)の感想②【きみはどこへ行った】

きみはどこへ行った

感想①はこちらです。

主人公は高校生のとき、「きみ」に出会いました。

その後、「きみ」と連絡がつかなくなります。

主人公は「きみ」のことを忘れられませんが、どうすることもできません。

十年以上経ったある日、主人公は、別の世界に転移します。

転移先は、主人公と「きみ」が話していた場所(壁に囲まれた街)でした。

街に入るには、自分の「影」を引き離す必要がありました。

主人公は、自分の「影」を引き離します。

街の中にいる人間には、「影」がありません。

街の入り口には、門衛がいます。

街の外に出られるのは、門衛だけです。

一度入ったら、街の外に出られません。

主人公は「影」を引き離してもらい、街の中に入りました。

主人公は、当時の「きみ」に会うことができました。主人公だけが歳を取っています。

「影」は、本体を離れてしばらくすると、死んでしまうそうです。

主人公の「影」は主人公に言います。

あんたは外の世界にいたのが彼女の影で、この街にいるのが本体だと考えている。でもどうでしょう。実は逆なのかもしれませんよ。ひょっとしたら外の世界にいたのが本物の彼女で、ここにいるのはその影かもしれない

壁に囲まれた街にいる「きみ」が、本体でないかもしれません。

  • 壁に囲まれた街の中にいる「きみ」は影
  • 外の世界にいた「きみ」が本体

では、外の世界にいた「きみ」はどこへ行ってしまったのでしょうか。

主人公の影は言います。

おれの目からすれば、あっちこそが本当の世界なんですそこでは人々はそれぞれ苦しんで歳を取り、弱って衰えて死んでいきます。(中略)時間を止めることはできないし、死んだものは永遠に死んだままです。消えちまったものは、永遠に消えたままです。そういうありようを受け入れていくしかありません

外の世界では、「きみ」は主人公のもとから消えました。

影の言うように、消えてしまったものは、永遠に消えたままなのでしょう。

外の世界で、主人公が「きみ」に再会することはありません。

主人公は、壁に囲まれた街で生きることを選びました。

外の世界が本当だとしても、主人公は本当の世界で生きる意味がなかったからです。

主人公は、影だけを壁の外に逃がします。

しかし、影だけでなく主人公も、壁の外の世界に出てしまいました。

外の世界に戻った主人公は、仕事を辞めます。

夢を頼りに、図書館で働くことを選び、地方都市の図書館長になります。

私は何かが始まることを望んではいなかった私が必要とするのは、 何も始まらない ことだこのままの状態が終わりなく永遠に続くことだ

  • 何も始まらない
  • このままの状態が終わりなく永遠に続く

まさに壁に囲まれた街です。

主人公の前の図書館長は、

本体と影とは本来表裏一体のものです

と言います。

本体と影とは、状況に応じて役割を入れ替えたりもします。そうすることによって人は苦境を乗り越え、生き延びていけるのです。何かをなぞることも、何かのふりをすることもときには大事なことかもしれません。気になさることはありません。なんといっても、今ここにいるあなたが、あなた自身なのです

壁に囲まれた街の「きみ」も、本体であり影なのでしょうか。

それに、「きみ」は一体、どこへ行ったのでしょう。

「きみ」は外の世界にはいません。

図書館に通う少年は、自らを人形として森の中に残し、壁の中の街に行きます。

残された少年の家族は、少年を探しますが、見つけられません。

「きみ」も外の世界のどこかに、人形のようなものを、残していたのかもしれません。

主人公は、「きみ」の残したものを見つけられませんでした。

それでも、主人公は外の世界で生きていきます。

新しい世界で、新しい人間関係を構築して、生活し始めるのが、良かったです。

感想③はこちらです。