いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

小説

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『プールサイド』村上春樹(著)の感想【35歳問題と主人公が泣いた理由】

35歳問題と主人公が泣いた理由 宮崎智之さんの『平熱のまま、この世界に熱狂したい』で、35歳問題として本作が取り上げられてたので、読みました。 35歳問題は、私にとってタイムリーな話題でした。 35歳になった春、彼は自分が既に人生の折りかえし点を曲っ…

第172回芥川賞受賞作発表、選評(2024年下半期)の感想

第172回芥川賞受賞作発表 2025年1月15日(水)、芥川賞の受賞作が発表されました。 ダブル受賞です。 DTOPIA 作者:安堂ホセ 河出書房新社 Amazon ゲーテはすべてを言った 作者:鈴木 結生 朝日新聞出版 Amazon 『DTOPIA』は予想当たりましたが、『ゲーテはす…

『ダンス』竹中優子(著)の感想②【他人の家の風呂を借りる老夫婦】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補)

他人の家の風呂を借りる老夫婦 感想①はこちらです。 他人の家の風呂を借りる旅をしてる老夫婦の話が、ちょっとしたエピソードで出てきます。 本書を読んだ後にも、どこか頭に残ってました。 不動産屋で働く青年の、子どもの頃に起きた話です。 小学生の彼が…

『死んだ山田と教室』金子玲介(著)の感想【声だけ残される存在】(メフィスト賞受賞)

声だけ残される存在 男子校の教室は、静まり返ってます、 二年E組の人気生徒だった山田が、交通事故で亡くなったからです。 担任が、気分転換に席替えを提案したとき、山田の声がどこからか聞こえます。 いくら男子校の席替えだからって盛り下がりすぎだろ …

【芥川賞予想】第172回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2024年下半期)

第172回芥川賞候補作発表 2024年12月12日(木)、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、2025年1月15日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 安堂ホセ『DTOPIA』文藝秋季号 『ジャクソンひとり』(第168回候補…

『ゲーテはすべてを言った』鈴木結生(著)の感想【名言の出典を求めて】(芥川賞候補)

名言の出典を求めて 主人公は、ドイツ文学を研究する大学教授です。 日本におけるゲーテ研究の第一人者とされてます。 主人公が学生時代、ドイツに留学してたときに、隣人の美大生は言いました。 ドイツ人はね(中略)名言を引用するとき、それが誰の言った…

『DTOPIA』安堂ホセ(著)の感想【睾丸を摘出する少年】(野間文芸新人賞候補、芥川賞候補)

睾丸を摘出する少年 「DTOPIA」の読み方は、「デートピア」です。 「DTOPIA」は、配信の恋愛リアリティーショーの番組名です。 舞台は、フランス領ポリネシアのボラ・ボラ島。 ヒロインの女性一人を巡って、多様な国から集められた男性10人が競います。 フラ…

『字滑り』永方佑樹(著)の感想【文字が消えて使えなくなる現象】(芥川賞候補)

文字が消えて使えなくなる現象 字滑り(じすべり)とは、突然、文字が消えて使えなくなる現象です。 例えば、漢字やひらがなやカタカナが、消えて、使えなくなります。 見る・聞く・話す言葉が、消えます。 どの言葉が消えたり、使えなくなったりするのかは…

『二十四五』乗代雄介(著)の感想【リアリティのあるなし】(芥川賞候補)

リアリティのあるなし 主人公は、弟の結婚式に出るために、新幹線で仙台へ行きます。 新幹線から降りるとき、就活帰りの女子大生から声を掛けられます。 タイトルにもあるとおり、主人公は、24、5歳の女性です。 女子大生は、自分の読みたかった漫画を主人公…

『ハイパーたいくつ』松田いりの(著)の感想【冒頭乗り切れば面白い】(文藝賞受賞)

冒頭乗り切れば面白い 冒頭を読んだとき、挫折しそうでした。 誰が何を語ってる何の話なのか、全くつかめなかったからです。 途中で、しんどさから解放されます。 主人公が経理の仕事をしており、相手先の会社に、本来の1000倍の金額を振り込んでしまったこ…

『光のそこで白くねむる』待川匙(著)の感想【幼馴染との脳内対話】(文藝賞受賞)

幼馴染との脳内対話 主人公は、お土産屋でバイトをしてます。 店が無期限休業することになり、主人公は仕事がなくなります。 出勤最終日に主人公は、店から7万円をもらいます。 時間と臨時収入を得た主人公は、故郷へ行くことにします。幼馴染の墓参りをする…

『ダンスはへんなほうがいい』新崎瞳(著)の感想【外れ値の友だち】(すばる文学賞佳作)

外れ値の友だち 主人公は27歳の男性です。 うつ状態を理由に、勤め先の広告代理店を休職します。 主人公が自宅で配達を頼むと、幼稚園の同級生という男性が、配達員として来ました。 主人公は、その同級生を覚えてませんでした。 その後、同級生は再びやって…

『泡の子』樋口六華(著)の感想【トー横キッズの末路】(すばる文学賞受賞)

トー横キッズの末路 読み方は、泡(あぶく)の子(こ)です。 主人公は、トー横(新宿東宝ビルの横)を生活の拠点としてます。 主人公が17歳のとき、トー横で同い年の友達ができました。 知り合いに、トー横を見下ろせる部屋に住んでる青年がいます。 青年は…

『さびしさは一個の廃墟』仁科斂(著)の感想【言葉は廃墟化する】(新潮新人賞受賞)

言葉は廃墟化する 同時受賞の『ダンス』とは異なり、新潮新人賞っぽい作品だと思いました。 文章が濃密で、簡単には読ませてくれません。 新人賞受賞作でなければ、途中で投げ出してたかもしれません。 私は二度読みました。 金原ひとみさんが選評で、 初読…

『ダンス』竹中優子(著)の感想①【馴染めてない人たち】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補)

馴染めてない人たち まず一文目が良いです。 今日こそ三人まとめて往復ビンタをしてやろうと堅く心に決めて会社に行った。 「三人まとめて」、「往復」ビンタに、私は引きつけられました。 三人まとめてってどういうことだろう ただのビンタではなく往復ビン…

小説「ハリー・ポッターと秘密の部屋」の感想【感動して泣くとは思わなかった】

感動して泣くとは思わなかった ハリーポッターを読んで(聴いて)、泣くとは思いませんでした。 読んで(聴いて)と書いたのは、Amazonオーディブルを使ったからです。 Amazon.co.jp: Audibleオーディオブック 厚い本を読む時間や気力はありませんでしたが、…

『手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~』喜多川泰(著)の感想【自己啓発的小説】

自己啓発的小説 本書は、『なぜ僕らは働くのか』という本で紹介されてました。 感想はこちらです。 本書は、おすすめキャリア本として挙げられてました。 「喜多川泰」という作家さんの名前は、Amazonでよく見ました。 作品を読むのは初めてでした。 自己啓…

『大解剖!文學界新人賞』の感想【純文学新人賞の獲り方】

純文学新人賞の獲り方 文學界編集部が出した、文學界新人賞の電子書籍です。 新人賞を実施してる編集部が出してるので、貴重な情報です。 私は過去に文學界新人賞に送ったことがありますが、選考を通過したことはありません。 最近は送っていませんが、有益…

『遠くから来ました』白鳥一(著)の感想【遭難者が潜む喫茶店】(群像新人賞優秀作)

遭難者が潜む喫茶店 作品の舞台は、宮城県の田舎にある喫茶店です。 その喫茶店は昔、自転車屋でした。 喫茶店の店主の父が、自転車屋を営んでました。 父が亡くなり、娘が店主として、喫茶店を始めました。 その喫茶店には、遭難者と呼ばれる存在がいます。…

『月ぬ走いや、馬ぬ走い』豊永浩平(著)の感想【タイトルの意味】(群像新人賞受賞、野間文芸新人賞受賞)

タイトルの意味 タイトルの読み方は、「ちちぬはいや、うんまぬはい」です。 沖縄の言葉で、意味を作中から引用すると、 馬さながらに歳月は駆け抜けてしまいますから、時をだいじにすべし、けれど苦悩は結局なくなるものとして抛ってしまいなさいな! 別の…

『夏帆』村上春樹(著)の感想【朗読のために書かれた新作】

朗読のために書かれた新作 本作は、朗読のために書かれた作品だそうです。 村上さんによる朗読は、2024年3月1日、早稲田大学で行われました。 タイトルの「夏帆」(かほ)は、主人公の名前です。 主人公の26歳の女性は、初対面の男性から言われます。 正直い…

第171回芥川賞受賞作発表、選評(2024年上半期)の感想

第171回芥川賞受賞作発表 2024年7月17日(水)、芥川賞の受賞作が発表されました。 ダブル受賞です。 サンショウウオの四十九日 作者:朝比奈秋 新潮社 Amazon バリ山行 作者:松永K三蔵 講談社 Amazon 『サンショウウオの四十九日』は予想当たりましたが、『…

『ミスター・チームリーダー』石田夏穂(著)の感想②【ミスターとは何か】

ミスターとは何か 感想①はこちらです。 タイトルにある「チームリーダー」は、主人公のことです。 主人公は会社の係長で、上司から、 頼むよ、チームリーダー と言われてます。 上司に頼られる係長です。 では、「ミスター」とは何でしょう。 主人公のことで…

『ミスター・チームリーダー』石田夏穂(著)の感想【コントのような面白さ】

コントのような面白さ 主人公は、会社のチームリーダー(係長)です。 主人公は、ボディビルの大会に出るため、減量してます。 デブが嫌いだった。自分の身体に対するリスペクトに欠けているから。自分の体型なんて、自分の意志で、どうにでもなることなのに…

【芥川賞予想】第171回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2024年上半期)

第171回芥川賞候補作発表 2024年6月13日(木)、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、7月17日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』新潮5月号 初の候補入りです。 『植…

『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋(著)の感想②【オムライスはオムレツの誤植か】(芥川賞受賞)

オムライスはオムレツの誤植か 感想①はこちらです。 ある一場面について、誤植なのか気になりました。 瞬 私 父 が、いる場面です。 瞬は、オムレツとオムライスを作ってます。 オムレツは自分用、オムライスは父用です。 料理ができた後、 瞬は父にオムライ…

『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋(著)の感想①【結合双生児の双子姉妹】(芥川賞受賞)

結合双生児の双子姉妹 主人公は、結合双生児で、双子の姉妹です。 私たちは、全てがくっついていた。顔面も、違う半顔が真っ二つになって少しずれてくっついている。結合双生児といっても、頭も胸も腹もすべてがくっついて生まれたから、はたから見れば一人…

『海岸通り』坂崎かおる(著)の感想【ニセモノのバス停】(芥川賞候補)

ニセモノのバス停 「海岸通り」とは、バス停の名前です。 老人ホームの敷地にあります。 しかし、そのバス停に、バスは停まりません。 偽物のバス停です。 主人公は、老人ホームで派遣の清掃員をしています。 偽物のバス停をみがきます。 バス停は偽物でも、…

『いなくなくならなくならないで』向坂くじら(著)の感想【迷惑な居候】(芥川賞候補)

迷惑な居候 タイトルに驚きます。 「いなくならないで」の間に、 なく:否定 ならなく:否定 があります。 いなく(なく)(ならなく)ならないで。 いなくならないでの否定の否定なので、 結果としては、いなくならないで、でしょうか。 とはいえ、 なく な…

『バリ山行』松永K三蔵(著)の感想【本当の危機】(芥川賞受賞)

本当の危機 読み方は、バリ山行(さんこう)です。 読む前は、バリ山に行く話だと思ってました。 全然違いました。 主人公は、建物の外装を修繕する会社に転職して2年。 前の会社から紹介してもらって、今の会社に勤めました。 前の会社には、首を切られた形…