いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

小説

『手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~』喜多川泰(著)の感想【自己啓発的小説】

自己啓発的小説 本書は、『なぜ僕らは働くのか』という本で紹介されてました。 感想はこちらです。 本書は、おすすめキャリア本として挙げられてました。 「喜多川泰」という作家さんの名前は、Amazonでよく見ました。 作品を読むのは初めてでした。 自己啓…

『大解剖!文學界新人賞』の感想【純文学新人賞の獲り方】

純文学新人賞の獲り方 文學界編集部が出した、文學界新人賞の電子書籍です。 新人賞を実施してる編集部が出してるので、貴重な情報です。 私は過去に文學界新人賞に送ったことがありますが、選考を通過したことはありません。 最近は送っていませんが、有益…

『遠くから来ました』白鳥一(著)の感想【遭難者が潜む喫茶店】(群像新人賞優秀作)

遭難者が潜む喫茶店 作品の舞台は、宮城県の田舎にある喫茶店です。 その喫茶店は昔、自転車屋でした。 喫茶店の店主の父が、自転車屋を営んでました。 父が亡くなり、娘が店主として、喫茶店を始めました。 その喫茶店には、遭難者と呼ばれる存在がいます。…

『月ぬ走いや、馬ぬ走い』豊永浩平(著)の感想【タイトルの意味】(群像新人賞受賞)

タイトルの意味 タイトルの読み方は、「ちちぬはいや、うんまぬはい」です。 沖縄の言葉で、意味を作中から引用すると、 馬さながらに歳月は駆け抜けてしまいますから、時をだいじにすべし、けれど苦悩は結局なくなるものとして抛ってしまいなさいな! 別の…

『夏帆』村上春樹(著)の感想【朗読のために書かれた新作】

朗読のために書かれた新作 本作は、朗読のために書かれた作品だそうです。 村上さんによる朗読は、2024年3月1日、早稲田大学で行われました。 タイトルの「夏帆」(かほ)は、主人公の名前です。 主人公の26歳の女性は、初対面の男性から言われます。 正直い…

第171回芥川賞受賞作発表、選評(2024年上半期)の感想

第171回芥川賞受賞作発表 2024年7月17日(水)、芥川賞の受賞作が発表されました。 ダブル受賞です。 サンショウウオの四十九日 作者:朝比奈秋 新潮社 Amazon バリ山行 作者:松永K三蔵 講談社 Amazon 『サンショウウオの四十九日』は予想当たりましたが、『…

『ミスター・チームリーダー』石田夏穂(著)の感想②【ミスターとは何か】

ミスターとは何か 感想①はこちらです。 タイトルにある「チームリーダー」は、主人公のことです。 主人公は会社の係長で、上司から、 頼むよ、チームリーダー と言われてます。 上司に頼られる係長です。 では、「ミスター」とは何でしょう。 主人公のことで…

『ミスター・チームリーダー』石田夏穂(著)の感想【コントのような面白さ】

コントのような面白さ 主人公は、会社のチームリーダー(係長)です。 主人公は、ボディビルの大会に出るため、減量してます。 デブが嫌いだった。自分の身体に対するリスペクトに欠けているから。自分の体型なんて、自分の意志で、どうにでもなることなのに…

【芥川賞予想】第171回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2024年上半期)

第171回芥川賞候補作発表 2024年6月13日(木)、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、7月17日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』新潮5月号 初の候補入りです。 『植…

『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋(著)の感想②【オムライスはオムレツの誤植か】(芥川賞受賞)

オムライスはオムレツの誤植か 感想①はこちらです。 ある一場面について、誤植なのか気になりました。 瞬 私 父 が、いる場面です。 瞬は、オムレツとオムライスを作ってます。 オムレツは自分用、オムライスは父用です。 料理ができた後、 瞬は父にオムライ…

『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋(著)の感想①【結合双生児の双子姉妹】(芥川賞受賞)

結合双生児の双子姉妹 主人公は、結合双生児で、双子の姉妹です。 私たちは、全てがくっついていた。顔面も、違う半顔が真っ二つになって少しずれてくっついている。結合双生児といっても、頭も胸も腹もすべてがくっついて生まれたから、はたから見れば一人…

『海岸通り』坂崎かおる(著)の感想【ニセモノのバス停】(芥川賞候補)

ニセモノのバス停 「海岸通り」とは、バス停の名前です。 老人ホームの敷地にあります。 しかし、そのバス停に、バスは停まりません。 偽物のバス停です。 主人公は、老人ホームで派遣の清掃員をしています。 偽物のバス停をみがきます。 バス停は偽物でも、…

『いなくなくならなくならないで』向坂くじら(著)の感想【迷惑な居候】(芥川賞候補)

迷惑な居候 タイトルに驚きます。 「いなくならないで」の間に、 なく:否定 ならなく:否定 があります。 いなく(なく)(ならなく)ならないで。 いなくならないでの否定の否定なので、 結果としては、いなくならないで、でしょうか。 とはいえ、 なく な…

『バリ山行』松永K三蔵(著)の感想【本当の危機】(芥川賞受賞)

本当の危機 読み方は、バリ山行(さんこう)です。 読む前は、バリ山に行く話だと思ってました。 全然違いました。 主人公は、建物の外装を修繕する会社に転職して2年。 前の会社から紹介してもらって、今の会社に勤めました。 前の会社には、首を切られた形…

『転の声』尾崎世界観(著)の感想②【無観客ライブ】(芥川賞候補)

無観客ライブ 感想①はこちらです。 転売の仕掛人(カリスマ転売ヤー)は、無観客ライブを企画します。 客を入れない ボーカルはステージに立たない、歌わない 配信もしない チケットは売る 私にはわかりません。 配信なしで客を入れないのに、チケットを売る…

『転の声』尾崎世界観(著)の感想①【転売されたいバンドボーカル】(芥川賞候補)

転売されたいバンドボーカル タイトル「転の声」は、転売にも使われるSNSアプリの通称名です。 「転」は、転売からきてるのでしょう。 主人公は、バンドのボーカルです。 生放送のテレビの音楽番組(Mステを想起させる)に、初登場します。 デビュー当初はそ…

『日曜日(付随する19枚のパルプ)』福海隆(著)の感想【アライ女性に邪魔される】(文學界新人賞受賞)

アライ女性に邪魔される 選評を読んで、「アライ」という言葉を知りました。 アライとは、 LGBT(中略)の当事者ではない人が、LGBTに代表される性的マイノリティを理解し支援するという考え方 (「人事労務用語辞典」から抜粋) 主人公は、社会人二年目のゲ…

『私は無人島』旗原理沙子(著)の感想【受精卵が堕胎に向かう旅】(文學界新人賞受賞)

受精卵が堕胎に向かう旅 私は無人島。強烈なタイトルです。 私は人間なのに、無人島とはどういう意味か。 考えながら読みました。 主人公は、都内のタワーマンションに住んでる女性です。 占い師をしています。 夫はおりますが、子どもはいません。 主人公に…

『AU』遠野遥(著)の感想【自分の顔を叩くことを希望する女性】

自分の顔を叩くことを希望する女性 タイトルにある「AU」は、マッチングアプリの名前です。 主人公は、クリニックで働く医師です。 二重手術の件数において、私はグループでトップクラスだし、患者満足度も高い。 主人公は、院長の座を狙ってます。 クリニッ…

『舟を編む』三浦しをん(著)の感想②【松本先生について】(本屋大賞受賞)

松本先生について 感想①はこちらです。 松本先生は、主人公(馬締)の出版社が新たに刊行する辞書の「監修者」です。 松本先生は、主人公が辞書編集部に異動する前から、荒木という編集者と、辞書を作ってきました。 荒木は、定年後は嘱託職員として、辞書編…

『舟を編む』三浦しをん(著)の感想①【適材適所の重要性】(本屋大賞受賞)

適材適所の重要性 読んで思ったのは、適材適所の重要性でした。 本作のあらすじに、 出版社の営業部員・馬締光也(まじめみつや)は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。 とあります。 「辞書編集部に引き抜かれた」とありますが、馬締…

『スカイ・クロラ』森博嗣(著)の感想【著者最高傑作のとおり】

著者最高傑作のとおり 著者最高傑作らしい本作。 森さんが自分の作品で最高傑作と言ったようです。 そのとおりだと思いました。 読めて良かったです。 本作を読めたのは、森作品を読む順番が関係してます。 『喜嶋先生の静かな世界』 『すべてがFになる』 …

『すべてがFになる』森博嗣(著)の感想【巻末解説の感想】

巻末解説の感想 ミステリ作品の感想を書くのは難しいです。 ネタバレに配慮する必要があるからです。 犯人の言及は避けるとして、 犯人が意外だった 犯人が思ったとおりだった という感想は、ネタバレにはならないにしても、ヒントにはなり得ます。 なので感…

『個人的な体験』大江健三郎(著)の感想【障害のある子が産まれたら】

障害のある子が産まれたら 主人公は27歳の男性で、大学受験予備校の講師をしています。 アフリカ旅行をしたいと考えており、その冒険記を出版することを夢見てます。 主人公は結婚してから、家族の檻の中に閉じ込められてると感じています。 結婚以来、おれ…

『狭間の者たちへ』中西智佐乃(著)の感想【女子高生の匂いで元気をもらう】

女子高生の匂いで元気をもらう 「狭間の者たち」とは誰のことでしょう。 主人公は該当しそうです。 主人公は、保険の営業をする店で、店長をしています。 営業成績は、エリアの店舗の中で、下位に位置します。 年下のエリアマネージャーから指導されてしまい…

『キシマ先生の静かな生活』森博嗣(著)の感想【『喜嶋先生の静かな世界』との違い】

『喜嶋先生の静かな世界』との違い 『喜嶋先生の静かな世界』が良かったので読みました。 感想はこちらです。 『キシマ先生の静かな生活』は、Amazonで合本版の「1 (全2冊) 番目の本」として紹介されてました。 『喜嶋先生の静かな世界』の前日譚かと思って…

『喜嶋先生の静かな世界』森博嗣(著)の感想【純粋な研究者の末路】

純粋な研究者の末路 喜嶋(きしま)先生は、主人公の通う大学の助手です。 助手は、 教授 助教授 の次に位置するポジションです。 喜嶋先生は、立派な業績を持ってますが助手のままです。 主人公は、大学の研究室(ゼミ)で、喜嶋研究室に配属されます。 喜…

『なれのはて』加藤シゲアキ(著)の感想【細部が気になった】(直木賞候補)

細部が気になった 壮大な作品でした。 加藤さんはアイドルなので、そのイメージが先行してしまいます。 アイドルでもこんな作品書けるのかという驚きに、繋がってしまいます。 その驚きはいけない気がします。 アイドルが書いたのではなく、加藤さんが書いた…

『世紀の善人』石田夏穂(著)の感想【善人とは誰か】

善人とは誰か 文章だけで笑わせてくれる小説は、石田さんの作品以外、ぱっと思いつきません。 稀有な作家さんです。 本作の掲載は、すばる1月号。 まだ、芥川賞候補にも単行本にもなっていない作品を、読みました。 雑誌の表紙に「石田夏穂」の文字が見えて…

『臆病な都市』砂川文次(著)の感想【新型感染症の噂で】

新型感染症の噂で 都心で新型感染症の噂が広まります。 主人公は、首都庁に勤めている職員です。 部署は、総務局行政部市町村課地域連携係。 業務内容は連絡・調整で、悪くいえば単なる伝声管だ。 主人公に、感染症関連の仕事が降ってきます。 鳥の新型感染…