いっちの1000字読書感想文

平成生まれの社会人。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

小説

『狭間の者たちへ』中西智佐乃(著)の感想【女子高生の匂いで元気をもらう】

女子高生の匂いで元気をもらう 「狭間の者たち」とは誰のことでしょう。 主人公は該当しそうです。 主人公は、保険の営業をする店で、店長をしています。 営業成績は、エリアの店舗の中で、下位に位置します。 年下のエリアマネージャーから指導されてしまい…

『キシマ先生の静かな生活』森博嗣(著)の感想【『喜嶋先生の静かな世界』との違い】

『喜嶋先生の静かな世界』との違い 『喜嶋先生の静かな世界』が良かったので読みました。 感想はこちらです。 『キシマ先生の静かな生活』は、Amazonで合本版の「1 (全2冊) 番目の本」として紹介されてました。 『喜嶋先生の静かな世界』の前日譚かと思って…

『喜嶋先生の静かな世界』森博嗣(著)の感想【純粋な研究者の末路】

純粋な研究者の末路 喜嶋(きしま)先生は、主人公の通う大学の助手です。 助手は、 教授 助教授 の次に位置するポジションです。 喜嶋先生は、立派な業績を持ってますが助手のままです。 主人公は、大学の研究室(ゼミ)で、喜嶋研究室に配属されます。 喜…

『なれのはて』加藤シゲアキ(著)の感想【細部が気になった】(直木賞候補)

細部が気になった 壮大な作品でした。 加藤さんはアイドルなので、そのイメージが先行してしまいます。 アイドルでもこんな作品書けるのかという驚きに、繋がってしまいます。 その驚きはいけない気がします。 アイドルが書いたのではなく、加藤さんが書いた…

『世紀の善人』石田夏穂(著)の感想【善人とは誰か】

善人とは誰か 文章だけで笑わせてくれる小説は、石田さんの作品以外、ぱっと思いつきません。 稀有な作家さんです。 本作の掲載は、すばる1月号。 まだ、芥川賞候補にも単行本にもなっていない作品を、読みました。 雑誌の表紙に「石田夏穂」の文字が見えて…

『臆病な都市』砂川文次(著)の感想【新型感染症の噂で】

新型感染症の噂で 都心で新型感染症の噂が広まります。 主人公は、首都庁に勤めている職員です。 部署は、総務局行政部市町村課地域連携係。 業務内容は連絡・調整で、悪くいえば単なる伝声管だ。 主人公に、感染症関連の仕事が降ってきます。 鳥の新型感染…

『しをかくうま』九段理江(著)の感想【本物の競馬実況】(野間文芸新人賞受賞)

本物の競馬実況 「シヲカクウマ」は、馬の名前で、競馬の出走馬です。 主人公は、「シヲカクウマ」のファンです。 「シヲカクウマ」だけでなく、主人公は馬を愛しています。 馬を愛するがゆえ、主人公はTV局のアナウンサーになりました。 我々が今、実際に目…

『名場面でわかる 刺さる小説の技術』三宅香帆(著)の感想【小説を読む人や書く人に】

小説を読む人や書く人に 小説を読む人にも、書く人にも、参考になります。 小説を読む人へは、著者が紹介してる本の中で、読みたいと思う本がきっとあるからです。 私は、森博嗣さんの『喜嶋先生の静かな世界』を読みたくなりました。 『喜嶋先生の静かな世…

『おわりのそこみえ』図野象(著)の感想【選評を読んで】(文藝賞優秀作)

選評を読んで 「おわりのそこみえ」は、「終わりの底見え」と書けます。 終わりの底が見えたとき、希望なのか、絶望なのか。 タイトルがひらがなの理由は、わかりません。 ただ、ひらがなだと、柔らかい印象を受けます。 漢字だったら、怖い印象を受けます。…

『解答者は走ってください』佐佐木陸(著)の感想【選評を読んで】(文藝賞優秀作)

選評を読んで タイトルでクイズの話かと思いましたが、全然違いました。 主人公は27歳。名前は怜王鳴門(れおなるど)。 生まれてからこの部屋を出たこともない 主人公は、パソコンに表示された文章を読みます。 文章は、主人公について書かれた内容でした。…

第170回芥川賞受賞作発表、選評(2023年下半期)の感想

第170回芥川賞受賞作発表 2024年1月17日(水)、芥川賞の受賞作が発表されました。 九段理江『東京都同情塔』 東京都同情塔 作者:九段理江 新潮社 Amazon 私の予想ははずれました。 受賞予想はこちらです。 選評 選考委員の吉田修一さんの会見は、NHKの記事…

『無敵の犬の夜』小泉綾子(著)の感想【指がないこと】(文藝賞受賞)

指がないこと 最初の一文を読んだら、次の文、次の文と、読み進められます。 短文の畳みかけで、最後まで疾走感があります。 主人公は男子中学生。右手の小指と、薬指半分がありません。 4歳のとき、タンスで指を挟んだからです。 父と母とは別居で、祖母と…

『海を覗く』伊良刹那(著)の感想②【殺意と自殺の理由】(新潮新人賞受賞)

殺意と自殺の理由 感想①はこちらです。 読み終わってからも、頭に残ります。 観念的な内容が多く、私が読み解けてないから、頭に残ってる気がします。 いつもなら、感想を書いたら次の作品を読むのですが、この作品がこびりついて、次の作品へ移行できません…

『海を覗く』伊良刹那(著)の感想①【選評を読んで】(新潮新人賞受賞)

選評を読んで 著者は17歳で、史上最年少受賞とのことです。 どんな小説を書くのだろうと読み始めたら、厳かな文章という印象を持ちました。 人物の描写では、 目鼻立ちの、運命に苛まれているような美貌は思わず息を呑むほどで、傑出した細長い眉、翳りのあ…

『シャーマンと爆弾男』赤松りかこ(著)の感想【選評を読んで】(新潮新人賞受賞)

選評を読んで シャーマンとは、 神や精霊との直接接触からその力能を得、神や精霊との直接交流によって託宣、予言、治病、祭儀などを行う呪術・宗教的職能者(日本大百科全書) とあります。 作中でシャーマンを託されてるのは、主人公です。 主人公は、南米…

『みどりいせき』大田ステファニー歓人(著)の感想【選評を読んで】(すばる文学賞受賞)

選評を読んで 最初は読みにくかったです。 誰が誰か、わからない 誰が何を言ってるのか、わからない 途中で読むのをやめようかと思いました。 私は新人賞受賞作を読む際には、 受賞作 選評 の順で読みます。 なぜ、こんな読みにくい作品が受賞したのかを知り…

『アイスネルワイゼン』三木三奈(著)の感想【自分に都合の悪いことを隠す】(芥川賞候補)

自分に都合の悪いことを隠す 「アイスネルワイゼン」は、夜想曲「ツィゴイネルワイゼン」をもじった曲です。 どうしてもじったのか、結局聞きそびれてしまいました とあるとおり、理由はわかりません。 主人公は32歳の女性で、ピアノ講師をしています。 以前…

『猿の戴冠式』小砂川チト(著)の感想【人と猿の交流】(芥川賞候補)

人と猿の交流 主人公は、女子競歩の選手です。 テレビ中継された大会で、失格になります。 失格になった主人公は、バッシングを受けます。 故意による妨害に見えたからです。 主人公は、家に引きこもります。 競歩のコーチも母も、頼りになりません。 コーチ…

『東京都同情塔』九段理江(著)の感想【新宿御苑に建つ刑務所】(芥川賞受賞)

新宿御苑に建つ刑務所 「東京都同情塔」とは、新宿に建つ、新しい刑務所のことです。 正式名称は、「シンパシータワートーキョー」。 受刑者が服役する場所です。 塔は、スカイツリー、東京タワーに次ぐ高さの建物です。 建築家である主人公は、自問します。…

『Blue』川野芽生(著)の感想【トランスジェンダーの物語】(芥川賞候補)

トランスジェンダーの物語 本作は、特集「トランスジェンダーの物語」として、『すばる』に掲載されました。 トランスジェンダーとは、 生まれつきの身体的性別と、自分が認識する性別(性自認、ジェンダー・アイデンティティ)が異なる人々の総称。(日本大…

『迷彩色の男』安堂ホセ(著)の感想【誰のことか】(野間文芸新人賞候補、芥川賞候補)

誰のことか 描かれるのは、私の体験したことのない世界です。 しかしこの世界には、既視感があります。 同じ著者の前作『ジャクソンひとり』 千葉雅也さんの作品 と似ていると思いました。 物語が似ているというわけではありません。 黒人と日本人のハーフ …

『僕はうつ病くん』大谷朝子(著)の感想【うつ病課長と専業主夫】

うつ病課長と専業主夫 主人公は39歳の女性で、会社の課長職に就いてます。 30代で課長職に就任したのは、社内初でした。 主人公は夫と2人暮らしで、夫は専業主夫です。 夫は結婚前、アパレルでバイトをしていました。 主人公と同棲したのち、バイトを辞めま…

『ハンチバック』市川沙央(著)の感想【ご指摘いただいた点について】(文學界新人賞、芥川賞受賞)

ご指摘いただいた点について 本書について、以前読書メーターで感想を書きました。一部抜粋します。 ラストのわかりにくさの原因は、主人公と同じ名前の女性が、女子大生で風俗で働いてるからだろう。病気で入院してる今までの話は何だったのかと。 この感想…

『出版禁止 いやしの村滞在記』長江俊和(著)の感想【なぜ出版禁止か】

なぜ出版禁止か 『出版禁止』は、「放送禁止」シリーズの作者である長江俊和さんの小説作品です。 「放送禁止」とは、放送禁止になった映像を再編集したという設定の、フィクションです。 「放送禁止」は、 なぜ、放送禁止になったのか どの部分で、放送禁止…

『ビューティフルからビューティフルへ』日比野コレコ(著)の感想【膨大な読書量に裏付けされた感覚】(文藝賞受賞)

膨大な読書量に裏付けされた感覚 作者が18歳というのが、どうしても目についてしまいます。 若い感性で書かれた小説ね、と思ってしまいます。 よくない先入観です。早計でした。 言葉の引き出しが凄まじい作品でした。 作品を読んで、 選評を読んで、 対談を…

『ジャクソンひとり』安堂ホセ(著)の感想【敵と見なす勇気】(文藝賞受賞、芥川賞候補)

敵と見なす勇気 ジャクソンは、アフリカのどこかの国と日本のハーフで、ゲイです。 日本で言うところの、マイノリティの中のマイノリティ。 ジャクソンに似ている人間が、他に3人集まります。 4人が集まった場所で、4人の心情も描かれるので、これは誰の心情…

『最高の任務』乗代雄介(著)の感想【最高の任務とは何か】(芥川賞候補)

最高の任務とは何か 前回読んだときの感想(2019年12月)はこちらです。 そのときも、最高の任務とは何だろうと、思っていた気がします。 しかしそこには触れずに、書きやすそうなところを選んで感想を書いています。 最近は、わからないことはわからないと…

『未熟な同感者』乗代雄介(著)の感想【完全な同感者にはなれない】

完全な同感者にはなれない 前回読んだとき(2021年4月)の感想はこちらです。 本を再読したら、前回に書いた感想を読みます。 『十七八より』のときもそうでしたが、再読して感想が変わってます。 初読時の感想が残ってればいいと思ってましたが、再読時に感…

『窓』古川真人(著)の感想【視覚障害者の兄と二人暮らし】

視覚障害者の兄と二人暮らし 主人公は、大学を中退した後、兄と一緒に住んでいます。 兄は目が見えないので、主人公が手助けしています。 兄弟の生計は、兄が立てています。 兄は仕事をし、主人公は家事をします。 兄は出勤前に、窓を開ける習慣があります。…

『十七八より』乗代雄介(著)の感想【あの少女と呼ぶ理由】(群像新人賞受賞)

あの少女と呼ぶ理由 読むのは3回目です。 2021年2月に感想を書いてます。 今回読み返して、読み間違いが見つかりました。 前回の感想では、 回想形式の作品ですが、現在の主人公は、物語に登場しません。 と書いています。 しかし、現在の主人公は、書き手と…