いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『名場面でわかる 刺さる小説の技術』三宅香帆(著)の感想【小説を読む人や書く人に】

小説を読む人や書く人に

小説を読む人にも、書く人にも、参考になります。

小説を読む人へは、著者が紹介してる本の中で、読みたいと思う本がきっとあるからです。

私は、森博嗣さんの『喜嶋先生の静かな世界』を読みたくなりました。

『喜嶋先生の静かな世界』では、「社会」と「研究」が対立するものとして描かれる

生きるために人々が上手く立ち回り駆け引きをする場としての社会一方でその社会から隔絶された「静かな」場としての研究

喜嶋先生は大学教員です。

喜嶋先生の生活は、社会から離れた、学ぶこと、謎を解き明かすことだけを求めるものだったそこは社会とは異なる場所だったそんな場があることをいままで知らなかった僕は、すっかり飲み込まれる

喜嶋先生の研究世界に惹かれた主人公(僕)は、大学院に進みます。

僕も結婚する子どもも生まれるそうして僕は、社会のほうにどんどん近づく喜嶋先生からはどんどん遠ざかる

  • 「社会」と「研究」の対立の結果、どうなるのか
  • 「社会」に近づく主人公は、喜嶋先生への印象はどうなっていくのか

読みたい一冊になりました。

小説を書く人へは、どうしたら面白い小説になるかについて、書かれてます。

本当に面白い小説の共通点

(中略)「自分が好きな場面を挙げられること」!

確かに、面白いと感じる作品には、好きな場面があります。

名場面さえあれば、その小説はもう、勝ったも同然なのに!

(中略)忘れられない場面さえ書くことができたら、それは読者に「刺さる」小説になるのです

とはいえ、名場面を書こうと思って書けるほど、甘くはないでしょう。

私が参考になったのは人物描写と情景描写について。

人物描写については、

家族を描く際、(中略)「それぞれ構成員に役割を与えること」が大切だとわかる「役割」があってはじめてそこは家族という組織になり得る

どんな関係性でもいい、でも何かを分かち合っているように見えること、それこそが本当の意味で家族を描く時に必要なことなんじゃないか

家族だけでなく、職場でも学校でも、複数の人間が集まる場所では、「構成員に役割を与えること」が重要だと思いました。

「役割」がなくても組織にはなり得ると思います。

ただ、「役割」があった方が、いきいきとした組織になる気がします。

メンバーに得意分野や苦手分野があり、対立したり協力したりしながら物語が展開した方が、名場面につながりそうです。

情景描写については、

小道具が細かいと、小説としての説得力が増す。(中略)ただ細かいだけじゃなくて、解像度が高いものだと、「わかる!」と小説に対して前のめりになれる

本書で挙げられてるのは、会社員が主人公の小説での、年収や買ったマンションの金額が書かれてることについてです。

会社員なら、「どういう生活をしているか」を構成する最たるものが、家賃そして手取りである

お金以外にも、仕事内容や、何時まで残業してるかなどの細かさも、小説が信頼されるための鍵だと言います。

全体的に細かく書くより、登場人物に応じて細かく書くのが良さそうです。