いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『未熟な同感者』乗代雄介(著)の感想【完全な同感者とは】

完全な同感者とは 本作には3つの軸があります。 主人公である女子大生の生活(主にゼミ活動) サリンジャーをはじめとするゼミの文学講義 講義で参考にする文学の引用 2と3だけでは小説にはならないので、1を書いたという印象があります。 著者が2と3に労力…

『コンビニ人間』村田沙耶香(著)の感想【「○○人間」と言えるもの】(芥川賞受賞)

「○○人間」と言えるもの タイトルにあるとおり、主人公は「コンビニ人間」です。 18歳から18年間、コンビニでバイトし、 コンビニの商品を飲み食いし、 コンビニの勤務に備えて体調を万全にします。 コンビニ中心に生活する人間。当然、無遅刻無欠勤です。 …

『しんせかい』山下澄人(著)の感想【切ない青春小説】(芥川賞受賞)

切ない青春小説 主人公は、著者と同姓同名の山下スミト、19歳です。 主人公は、高校を卒業しアルバイト生活を送っていたところ、家に間違えて配達された新聞で募集記事を見て、応募しました。 俳優と脚本家、脚本家というものが何なのかよくわからなかったの…

『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子(著)の感想【生きた意味、生きる意味】(芥川賞受賞、文藝賞受賞)

生きた意味、生きる意味 主人公は、東北出身の74歳の女性です。 夫に先立たれ、残された家に一人で暮らしています。 一人の老後生活には、寂しさがつきまといますが、主人公はしたたかに生きています。 満二十四のときに故郷を離れてかれこれ五十年、日常会…

【三島賞予想】第34回三島由紀夫賞候補作発表(2021年)

三島賞候補作発表 2021年4月21日、三島由紀夫賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、5月14日(金)です。 以下、候補作をまとめ、受賞予想をいたします。 『水と礫』藤原無雨 初の候補です。 文藝賞を受賞したデビュー作です。 水と礫 作者:藤原…

『百年泥』石井遊佳(著)の感想【面白いが実態をつかめない】(芥川賞受賞、新潮新人賞受賞)

面白いが実態をつかめない 主人公は、男に借金を背負わされたため、インドで日本語教師をします。 資格も経験もありません。 インドのチェンナイで、若いIT技術者たちに日本語を教えていると、百年に一度の大洪水が起きました。 橋の上に積み上げられる泥。 …

『ニムロッド』上田岳弘(著)の感想【駄目な人間、完全な人間】(芥川賞受賞)

駄目な人間、完全な人間 主人公はサーバーのサポート業務をしていますが、社長から、仮想通貨を採掘する業務を言い渡されます。 新設される課で、主人公は名ばかりの課長昇進ですが、 新しいことに取り組むのは何にせよ楽しみ と、仮想通貨のマイニングに意…

『1R1分34秒』町屋良平(著)の感想【自分の人生と照らし合わさずにはいられない】(芥川賞受賞)

自分の人生と照らし合わさずにはいられない プロボクサーの主人公は、初戦を勝利しましたが、その後は2敗1分けと、負け越しています。 主人公は21歳なので、私としては「まだまだこれから」と思ってしまうのですが、主人公は違います。敗戦後に頭部CTを撮っ…

『星に帰れよ』新胡桃(著)の感想【現役女子高生の作品】(文藝賞優秀賞)

現役女子高生の作品 文藝賞に応募があった2360作の第2位です。 受賞作は『水と礫』です。感想はこちらです。 本作『星に帰れよ』の何がすごいって、高校2年生が書いた作品であることです。 反対に、高校2年生が書いた作品だからこそ、優秀賞を受賞したのかも…

『追いつかれた者たち』濱道拓(著)の感想【最後まで読ませる力】(新潮新人賞受賞)

最後まで読ませる力 途中で読むのをやめようと、何度か思いました。 登場人物の独白や、まとわりつく文章に、胸やけするような感じがあったからです。 また、小山田浩子さんの選評で、 読んでいて暴力や陰惨さに心乱されねばならない間合いでいちいちつまず…

『わからないままで』小池水音(著)の感想【選評を読んで】(新潮新人賞受賞)

選評を読んで 物語の章ごとに登場人物の人称が変わるので、読みにくさがあります。 例えば、1章で「父親」と書かれていた人物が、2章では「男」と書かれています。 章ごとに人称が変わることについて、選評で小山田浩子さんは、 効果よりもわかりづらさが勝…

『一億三千万人のための小説教室』高橋源一郎(著)の感想【自分にしか書けない小説を書く方法】

自分にしか書けない小説を書く方法 小説の書き方の本というより、小説に対する考え方の本です。 著者の高橋さんは、小説を書きたい人に向けて、 あなたが書かねばならない、あなたにしか書けない小説 を書くよう、言います。 小説を書くには「バカ」でなけれ…

『命売ります』三島由紀夫(著)の感想【死ぬのに疲れた主人公】

死ぬのに疲れた主人公 主人公が目を覚ますと、病院でした。 主人公は、自殺に失敗したことを知ります。 なぜ、自殺を図ったのかというと、 新聞の活字だってみんなゴキブリになってしまったのに生きていても仕方がない、と思ったら最後、その「死ぬ」という…