第170回芥川賞受賞作発表
2024年1月17日(水)、芥川賞の受賞作が発表されました。
九段理江『東京都同情塔』
私の予想ははずれました。
受賞予想はこちらです。
選評
選考委員の吉田修一さんの会見は、NHKの記事(https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240117/1000101154.html)からの引用です。
「1回目の投票で過半数のかなり高い評価を得てほぼ決まりました。最終的に小砂川チトさんの『猿の戴冠式』も含めてもう一度投票しましたが、九段さんの受賞となりました」
『猿の戴冠式』との決選投票だったようです。
毎日新聞の記事(https://mainichi.jp/articles/20240117/k00/00m/040/295000c)では、
二つの作品で2回目の投票をやった。結果的に過半数に届かず、九段さんの「東京都同情塔」が単独での受賞となった。
と書いてます。「結果的に過半数に届か」なかったのは、『猿の戴冠式』だと思われます。
「東京都同情塔」について、吉田修一さんは、
「選考委員の皆さんが口をそろえて話していたのはとても完成度が高く欠点を探すのが難しい作品ということでした。架空の東京を舞台にした小説ですが、登場人物の思想の一貫性などいろんなものがリアリティーを与えてうまく機能しているのではないかと評価されていました。芥川賞ではありますが、エンターテインメント性の高い作品ではないかという意見があって、舞台設定や登場人物の動かし方など、多くの読者に届くというか、読者がおもしろがって読めるような作品になっていて、これまでの、最近の芥川賞の中でもけうな作品だという話も出ていました」
「完成度が高く欠点を探すのが難しい作品」という評価だったようです。
私は、発想が素晴らしい作品で、欠点を探そうと思えば、探せてしまえる作品だと思います。
例えば、塔の中では、「受刑者」と「同情される人」が、手錠なしで男女分けられずに過ごすという明らかなカオスな状況なのに、カオスになっていません。
なっていないなら、その理由が欲しいと思いました。作品の世界が本当らしくないと思ってしまったのです。
塔に住んでいる人間模様をもっと見たかったという思いがあります。
しかし、選考委員の方々からすれば、欠点とは言えないのでしょう。
「芥川賞ではありますが、エンターテインメント性の高い作品ではないかという意見」とあり、今までの芥川賞にとっては、マイナスの要素だった気がします。
私は、本作がエンタメ性の高い作品だとは思いませんでした。
面白がって読める作品というよりは、考えさせる作品だと思いました。
- 「シンパシータワートーキョー」を建てるとなったら、どうなるか
- 受刑者が同情される人として暮らすことは、できるのか
- 同情される人が犯罪の被害者だったら、受刑者と一緒に過ごせるのか
『東京都同情塔』の感想はこちらです。