アイドル映画ではない
主人公の15歳の女子高生が、小説の新人賞に応募します。
タイトルの「響」は、主人公の名前です。
主人公の小説が、新人賞を受賞し、芥川賞と直木賞にノミネートされます。この時点でおかしいです。
ノミネートの基準は、
- 芥川賞:雑誌に掲載された短篇
- 直木賞:出版された単行本
から選ばれるからです。
主人公の小説は、単行本化されていないのに、直木賞に選ばれています。
面白さを演出するためにダブルノミネートにしたのでしょうが、少なくとも理由(なぜ雑誌掲載作なのに直木賞にノミネートされたか)を説明してほしいです。
主人公の他に芥川賞の候補になった作品は、雑誌掲載ではなく単行本で、その単行本が短篇とは思えない厚さだったので、リアリティに欠けました。厚い単行本を出すのなら、芥川賞ではなく直木賞候補にしてほしかったです。
映画の作り手にとっては、芥川賞・直木賞のノミネートの基準といった部分は気にならないのかもしれません。ですが、見ている私は、そうした細かいところが気になっていまいました。
また、主人公の小説の、どこがどう良かったのか、伝わってこなかったです。芥川賞と直木賞にノミネートされているからこそ、
- 作品内容
- 文章
- どこが優れているか
を具体的に提示してほしかったです。女子高生の作品という話題性ではなく、小説を評価されている理由を描くために、具体的に提示してほしかったです。
他にも気になる部分として、
- すぐれた小説を書く主人公が、なぜ暴力をふるうのか(なぜ言葉で解決を図らないのか)
- 芥川賞と直木賞にノミネートされた主人公の作品と、新人賞でダブル受賞した作品が、なぜスルーされているのか
- 偶然、芥川賞落選者と受賞者が踏切前で遭遇する展開
です。
良かったところは、キャスティングと役者さんの演技です。
- 主人公(平手友梨奈さん)
- 主人公の友人(アヤカ・ウィルソンさん)
- 芥川賞を目指す作家(小栗旬さん)
平手友梨奈さんは、暴力的な主人公の演技を、無理なくこなしている感じがしました。欅坂46のメンバーで、アイドルだから主演に起用されたのかもしれませんが、アイドルっぽさを感じませんでした。役者でした。
アヤカ・ウィルソンさんからは、笑顔の裏に隠れた、嫉妬や悲しみ、やるせなさなどの複雑な感情が伝わりました。セリフで言っていないのに、小説家の父から自分の小説を褒められるより、自分の認めている主人公から否定された方を受け入れていると、伝わりました。
小栗旬さんの、芥川賞に落選続きで行き場を失っている演技に迫力がありました。小栗さんを主人公としたサイドストーリーを見たいと思いました。
ストーリーのご都合展開と、文学賞の基準など、気になる部分がある作品ですが、展開の早さと役者さんの演技で、退屈せずに最後まで一気に見ることができました。
ちなみに私は、以下のAmazonプライムビデオで、無料で視聴しました。