第163回芥川賞予想
7月15日(水)に第163回芥川賞、直木賞が決まります。
「文学賞メッタ斬り!スペシャル」は、受賞作の決定前に、どの作品が受賞するかを予想するラジオ番組です。
予想する方
- 大森望(書評家、SF翻訳家)
- 豊崎由美(書評家)
芥川賞候補作
- 『赤い砂を蹴る』石原燃
- 『アウア・エイジ(Our Age)』岡本学
- 『首里の馬』高山羽根子
- 『破局』遠野遥
- 『アキちゃん』三木三奈
芥川賞予想作品
大森さん、豊崎さんとも、
『首里の馬』を予想しています。
(豊崎さんの発言を抜粋)
一応、現実の沖縄を舞台にしているのだから、そういう設定にするんだったら、ある種の説得力をくれよって小説に対して思う人は、たぶんそこに説得力がないって言いそうな気がするんですよ。こんな商売が成り立つとも思えないとか、そういうのも言われちゃうと思うんですよ。
私は好きな小説だし、これで取るっているのが一番いいんじゃないかなと思うから、本命にしてますけど、だめな可能性もすごくある小説じゃないかなって。選考会次第だなって。
ここまでの不思議を、選考委員が、さあ受け止めてくれるのかっていうところがねえ、非常に不安。
(大森さんの発言を抜粋)
今までの中では一番取りそうな感じはしますけどね。
こういうジャンルっていうのに還元できない面白さっているのがすごくあると思いました。
(『首里の馬』以外に)はずし先がない。代わりにこれっていうのがなかなか。
「資料館」「クイズ」「宮古馬」など、不思議なものが混在していて面白いっていうのを、『首里の馬』に感じました。
すごい作品を読んだという読後感を味わえます。
『赤い砂を蹴る』を酷評
大森さん、豊崎さんとも、
『赤い砂を蹴る』を酷評します。
(豊崎さんの発言を抜粋)
(石原さんの小説で)芥川賞の候補にならないやつを読むかっていったら、読まない。あんま必要じゃない、私にはね。
赤い砂を蹴るって、そういうシーンがあるんですけど、「何?」って。
(豊崎さんが小説の冒頭を読み上げ、)一つも面白くない。
人が一人死んだりもするんだけど、それ無駄死にだなっていう。それ殺す意味あったのかなっていう感じもするわけですよ。
(大森さんの発言を抜粋)
大変な目をしてあんなところ(サンパウロ)まで行って、そんな苦労して、何がしたかったのか。
ご苦労様でしたみたいな感じで。最後まで読み終わって、読んだ自分にもご苦労様でしたって言いたい。
あんな遠いところまで行くんだから、バスの中にしろ、飛行機の中にしろ、空港にしろ。いろいろありそうな気がするけど、なんかそのすごく疲れたなって感じは伝わるんですけど、特に面白くはない。
ここまでボロクソに言われるとは思いませんでした。
私は、『首里の馬』とのダブル受賞だと予想しています。
ただ、豊崎さんの言うとおり、芥川賞候補にならない石原さんの小説を読むかというと……読まない気がしました。
芥川賞を取らないけど面白い『破局』『アキちゃん』
(『破局』について、豊崎さんの発言を抜粋)
(芥川賞)取らないけど、おすすめしたい。取らないけど、面白いよ。絶対10か所くらいで笑うよ。
奇人変人小説が好きな人は、喜んで読む小説じゃないかなと思いますね。
この人の(作品)は、これからも読もうと思います。
主人公の語りがとにかく不穏です。
私も、遠野さんの新作が出たら読むと思います。
(『アキちゃん』について、豊崎さんの発言を抜粋)
今村夏子が出てきたときの衝撃に近いものを感じました。
この人にしか書けないんだっていう文章を読まされている気がする。
この人しかない日本語なんですよ。そこにものすごく期待しますし。(芥川賞を)取らないんですけど。
「この人しか書けない」とまで褒められています。
今村夏子さんの『こちらあみ子』の衝撃まではありませんでしたが、『アキちゃん』の叙述トリックは衝撃でした。
(『アキちゃん』について、大森さんの発言を抜粋)
だめだっていう理由もわかりますよ。ミステリ的な読み方で読むと、やっぱちょっと不自然さは免れないので、すごい作為的に見えるところもある。
作為的な部分があるんですよね。どうしてもそこが引っかかりました。
私の第163回芥川賞の予想はこちらです。