番組概要
1月20日(水)に第164回芥川賞受賞作が発表されました。
- 宇佐見りん『推し、燃ゆ』
受賞予想した作品の答え合わせや、結果を受けて話すラジオ番組です。
前回(予想編)の放送の感想はこちらです。
出演者(予想する方)
- 大森望(書評家、SF翻訳家)
- 豊崎由美(書評家)
芥川賞発表を受けて
- 大森さんの予想:砂川文次『小隊』
はずれです。
(『小隊』についての発言を抜粋)
(「戦闘の背景が見えにくい」という選評について)戦争の背景がちゃんと書かれていないっていうのは明らかにないものねだりというか、そういう小説ではない。
むしろ戦闘を書くためで、別に攻めてくるのはどこでもいいんで、とりあえずロシアにしてあるっていうふうな感じで。
戦争が起きたらどうなるかっていう小説ですからね。
自衛隊と外国勢力との間で戦いが起きてどうなるかっていう話は、エンターテイメントとか漫画とかではたくさん書かれているテーマなわけですけど、それをそうじゃない書き方で、あれだけミリタリー用語、軍事用語を投入しながら、全然違う形で書いたっていうところが『小隊』の面白さ
突然ロシアが攻めてきて、戦闘経験の乏しい人間が立ち向かう姿を、膨大な専門用語を駆使して描くというのは、この作品ならではですよね。
- 豊崎さんの予想:宇佐見りん『推し、燃ゆ』、乗代雄介『旅する練習』のダブル受賞
一つ当たり、一つはずれです。
(『旅する練習』についての発言を抜粋)
(次点だったので)前回の候補になったときよりは、たぶん今回の『旅する練習』の方が選考委員に受け入れられているなと思ったから、乗代さん次です。次で取りましょう。
次こそは取ってほしいですね。
『推し、燃ゆ』の受賞について、大森さんは、
若い才能を後追いしようっていうコンセンサスでまとまるところが芥川賞ですよね。
と、受賞に好意的には感じてはいないようでした。
他にも、『コンジュジ』に対する、「症例報告を超える文学的な冒険に欠けるのではないかというのが相対的評価」という選評について、
それはね、おかしいですよ。『推し、燃ゆ』に受賞させといて。
むしろ、文学的な冒険みたいなことで言うんであれば、『コンジュジ』の方が色々やっているわけです。違うことをするって意味ではね。
その評で言うのであれば、『推し、燃ゆ』とどこがどう違うのか説明しないといけない。
宇佐見りんにいこうっていうね、暗黙のコンセンサスがあったんじゃないかと思いますけどね。
やはり『推し、燃ゆ』の受賞に納得されていない感じがします。
豊崎さんも、『コンジュジ』への選評に、
「症例報告を超える文学的な冒険に欠ける」って言い方は、厳しいなと思いましたよね。
と批判的です。
私は『コンジュジ』について、「ロックスターの伝記」や「伝記に入り込む主人公」など、候補作の中で文学的な冒険をしている作品だと感じました。
『母影』で、30代の男性作家が、小学校低学年の女の子を視点にすることについて、豊崎さんは、
小さな女の子の声を30代の男がやることは、なんて言い始めたら、本当に何もできなくなっちゃうんですよ。
大森さんは、
自分とは全然違う話者を語り手にした作品でチャレンジした。その範囲においては非常によくできている。
と、二人ともフォローしています。
今回、豊崎さんが、芥川賞選考委員「島田雅彦さんの読み上げた選評」をもとに、メッタ斬りしています。芥川賞の選評に切り込んでいるのでわかりやすいですが、選評を読み上げながら、出演者の小馬鹿にしたような笑いが入っているのが気になりました。その部分だけは、聞いてて感じの良いものではありませんでした。
第164回芥川賞の受賞作発表、会見、選評の感想はこちらです。
私の第164回芥川賞の予想はこちらです。