第166回芥川賞候補作発表
2021年12月17日、芥川賞の候補5作品が発表されました。
受賞作の発表は、2021年1月19日(水)です。
以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。
石田夏穂『我が友、スミス』(すばる11月号)
初の候補入りです。
同作ですばる文学賞を佳作受賞しました。
感想はこちらです。
九段理江『Schoolgirl』(文學界12月号)
初の候補入りです。
『悪い音楽』で文學界新人賞受賞。本作が2作目です。
感想はこちらです。
島口大樹『オン・ザ・プラネット』(群像12月号)
初の候補入りです。
『鳥がぼくらは祈り、』で群像新人文学賞受賞。本作が2作目です。
感想はこちらです。
砂川文次『ブラックボックス』(群像8月号)
第164回の候補『小隊』に続き、3度目の候補です。
感想はこちらです。
乗代雄介『皆のあらばしり』(新潮10月号)
第164回の候補『旅する練習』に続き、3度目の候補です。
感想はこちらです。
受賞予想
受賞作を○△×で予想しました。
- 石田夏穂『我が友、スミス』:△
- 九段理江『Schoolgirl』:△
- 島口大樹『オン・ザ・プラネット』:×
- 砂川文次『ブラックボックス』:○
- 乗代雄介『皆のあらばしり』:△
『オン・ザ・プラネット』は、
- 理屈をこねくり回す大学生たちの会話が空虚に感じられる
- 似たような登場人物が多く、魅力的な人物がいない
ことから、受賞はないと判断しました。
『Schoolgirl』は、
- 頭だけ賢くなった中学生
- 子ども中心に生きる母親
の構図にありきたりを感じました。
ですが、芥川賞受賞作の『推し、燃ゆ』に似ていたので、△にしました。
『皆のあらばしり』は、
- 「おめでたい語り」という新しさを文学に取り入れた点
- 乗代さんの文学観が現れている点
に良さを感じたものの、
- 歴史要素が多すぎる点
- 物語の面白みに欠ける点
で△にしました。本作は乗代さんの過去作品『本物の読書家』に似ていて、私はそちらの方が好きです。
『我が友、スミス』は、
- 女性主人公の語りにユーモアがある点
- 筋トレの行く末にジェンダー問題がある点
が良かったです。候補作で一番笑った作品です。
ただ、すばる文学賞の佳作という点が引っかかりました。なぜ受賞作が芥川賞候補にならなかったのでしょう。
『ブラックボックス』は、
- 耐えきることのできない主人公を憎めない点
- 刑務所に入って終わりではなく、その後の生活が描かれる点
が良かったです。
タイトルの「ブラックボックス」に複数の意味を持たせているのも良く、うまく作られた小説だと感じました。
『ブラックボックス』の単独受賞と予想します。
前回までの芥川賞の予想結果
第165回:李琴峰『彼岸花が咲く島』当たり、石沢麻依『貝に続く場所にて』はずれ
【芥川賞予想】第165回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2021年上半期)
第164回:宇佐見りん『推し、燃ゆ』はずれ
【芥川賞予想】第164回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2020年下半期)
第163回:高山羽根子『首里の馬』当たり、遠野遥『破局』はずれ
【芥川賞予想】第163回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2020年上半期)
第162回:古川真人『背高泡立草』当たり
【芥川賞予想】第162回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2019年下半期)
第161回:今村夏子『むらさきのスカートの女』当たり
【芥川賞予想】第161回芥川賞候補作発表・掲載誌まとめ(2019年上半期)