第167回芥川賞候補作発表
2022年6月17日(金)、芥川賞の候補5作品が発表されました。
受賞作の発表は、7月20日(水)です。
以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。
小砂川チト『家庭用安心坑夫』群像6月号
初の候補入りです。
同作で群像新人文学賞を受賞しました。
感想はこちらです。
鈴木涼美『ギフテッド』文學界6月号
初の候補入りです。
高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』群像1月号
第165回の候補『水たまりで息をする』に続き、2度目の候補です。
感想はこちらです。
年森瑛『N/A』文學界5月号
初の候補入りです。
同作で文學界新人賞を受賞しました。
感想はこちらです。
山下紘加『あくてえ』文藝夏季号
初の候補入りです。
感想はこちらです。
受賞予想
『ギフテッド』は、
- 主人公が、物事に他人事過ぎる(例:母の死、800万円もらうこと)
- 主人公の母のファンだった男が、母を「お母さん」と呼ぶのに違和感がある
ことから、受賞はないと判断しました。
『あくてえ』は、
- 悪態がコミュニケーションの手段になっているのが面白い
のですが、
- 物語の構図に展開がない(例:主人公が祖母に悪態を続ける、母が祖母の言いなり)
ことから、△にしました。
『N/A』は、
- 主人公と対立する考え方に、一理あると思わせる点
は良かったのですが、
- 「かけがえのない他人」を求める主人公の、頑固さや柔軟のなさに冷酷さ
- 最後に重要人物に会うのが偶然というご都合主義
を感じたので、△にしました。
『おいしいごはんが食べられますように』は、
- 登場人物の誰にも魅力を感じなかった
- 読んでて胸糞が悪い
のですが、
- 人生をうまく選ぶために、感情でなく理屈で行動する主人公
- おいしいごはんを食べたいように見えない主人公
に特異性を感じ、△にしました。
『家庭用安心坑夫』は、
- 坑道に立つマネキン人形を盗む
という展開が面白く、
- 家を出て行った父への報復に、父の代わりであるマネキンを閉じ込める
- マネキンを閉じ込めるために自宅を出た主人公が、報復を受ける
のが寓話のようですが、理解できない部分もあり、それを含めて楽しめました。
『家庭用安心坑夫』の単独受賞と予想します。
ちなみに、候補作はすべて女性作家とのことです。
それ自体は全く問題ないのですが、五大文芸誌の「すばる」と「新潮」からは候補作が出ていません。高瀬隼子さんはすばる文学賞でデビューしてるので、半分「すばる」枠としても(いいのか?)、「新潮」からは候補作が出ていません。
新潮枠として、岡田利規さんの『ブロッコリー・レボリューション』(新潮2月号)を候補作に入れてほしかったです。三島賞を受賞したことですし。
前回までの芥川賞の予想結果
第166回:砂川文次『ブラックボックス』当たり
【芥川賞予想】第166回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2021年下半期)
第165回:李琴峰『彼岸花が咲く島』当たり、石沢麻依『貝に続く場所にて』はずれ
【芥川賞予想】第165回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2021年上半期)
第164回:宇佐見りん『推し、燃ゆ』はずれ
【芥川賞予想】第164回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2020年下半期)
第163回:高山羽根子『首里の馬』当たり、遠野遥『破局』はずれ
【芥川賞予想】第163回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2020年上半期)
第162回:古川真人『背高泡立草』当たり
【芥川賞予想】第162回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2019年下半期)
第161回:今村夏子『むらさきのスカートの女』当たり