第162回芥川賞候補作決定
2019年12月16日、芥川賞の候補5作品が発表されました。
受賞作の発表は、2020年1月15日(水)です。
以下、候補作と掲載誌をまとめます。
木村友祐『幼な子の聖戦』
初の候補です。
前回(161回)の芥川賞で、古市憲寿さんの『百の夜は跳ねて』の参考文献に、木村さんの小説『天空の絵描きたち』が入っていて話題になりました。
今回は、木村さんの作品が候補です。(古市さんの『奈落』(新潮12月号掲載)は候補になりませんでした)
単行本はこちらです。
感想はこちらです。
髙尾長良『音に聞く』
第148回の候補『肉骨茶』、第152回の候補『影媛』に続いて3度目の候補です。
単行本はこちらです。
感想はこちらです。
千葉雅也『デッドライン』
初の候補です。
同作品で第41回野間文芸新人賞を受賞しました。
単行本はこちらです。
感想はこちらです。
乗代雄介『最高の任務』
初の候補です。
『本物の読書家』で第40回野間文芸新人賞を受賞しました。
単行本はこちらです。
感想はこちらです。
古川真人『背高泡立草』
第156回の候補『縫わんばならん』、第157回の候補『四時過ぎの船』、第161回の候補『ラッコの家』に続いて4度目の候補です。
単行本はこちらです。
感想はこちらです。
受賞予想は、古川真人『背高泡立草』
受賞作を○△×で予想しました。
- 木村友祐『幼な子の聖戦』:×
- 髙尾長良『音に聞く』:△
- 千葉雅也『デッドライン』:×
- 乗代雄介『最高の任務』:△
- 古川真人『背高泡立草』:○
先をぐいぐい読ませるのは『幼な子の聖戦』です。受賞すれば売れるでしょう。
この作品以外は、受賞しても前回の受賞作(『むらさきのスカートの女』)ほど売れないと思います。(売れることがすべてではないですが、娯楽が多様化した現代、売れなければ文化が衰退していきます)
今回は、難解な言葉や表現が多く使われ、物語性に乏しい作品が目立ちました。
普段、純文学を読まない人が手に取って、さくっと読めるのは『幼な子の聖戦』しかありません。
近年の受賞作(『むらさきのスカートの女』、『1R1分34秒』)を見ても、読みやすさや物語性は重要だと思います。
芥川賞の近年の傾向は、「読みやすいが、読者に考えさせる」作品です。「作品の言いたいことはわかる。だが読者としてはこう考える」という余地を残した作品です。
となると、『幼な子の聖戦』の受賞は難しいです。展開や先を読ませる力はあるのですが、物語が軽いのです。現代を象徴するものの上辺をすくい取って、張り付けた感じがあります。
すると、
- 物語に展開があり、ある程度読みやすい
- 狭い世界でありながら、物を起点に時空を超えることで、大きな物語に挑戦している
古川真人さんの『背高泡立草』だと予想します。
ちなみに、前回の受賞作(今村夏子『むらさきのスカートの女』)は予想が当たりました。
前回の予想はこちらです。
前回の結果はこちらです。
第162回芥川賞・直木賞を予想した番組、ラジオ日本『大森望×豊崎由美 文学賞メッタ斬り!スペシャル(予想篇)』の感想はこちらです。
第162回芥川賞・直木賞の結果発表、会見、選評の感想はこちらです。