いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

★★★(超お気に入り本)

『老人と海』ヘミングウェイ(著)の感想【ぶちのめされても負けない】

ぶちのめされても負けない 読むまでの印象は、 老人が、海で大きな魚を釣り上げる奮闘記 辛いことでも、我慢し苦労すれば、良い結果が得られる でした。全く違いました。 老人は、命を懸けてカジキマグロを釣り上げ、釣り上げた後も命がけだったのです。 特…

『勝ち続ける意志力』梅原大吾(著)の感想【勝ちを目的にしない生き方】

勝ちを目的にしない生き方 著者の梅原さんは、プロゲーマーです。 小学生の頃から、ゲームへの意識が並外れていました。 唯一の存在だったゲームを諦めたら、続けることをやめたら人生が終わる。 同級生でサッカーをする人が増えても、一人でゲームを続けま…

『あひる』今村夏子(著)の感想【口に出してはいけないこと】(河合隼雄物語賞受賞、芥川賞候補)

口に出してはいけないこと 主人公と両親の三人暮らしの家で、あひるを飼うことになりました。 名前は「のりたま」 近所の子どもたちがあひるを見に来るので、家が賑わいます。 両親は、家に来る子どもたちのために、お菓子やお茶を出したり、勉強できるよう…

『日曜日の人々』高橋弘希(著)の感想【自傷する若者の集まり】(野間文芸新人賞受賞)

自傷する若者の集まり 「日曜日の人々」とは、自助グループのメンバーが書いた原稿を、まとめた冊子です。 そのグループは、病を語れる場所があればというきっかけでできました。 活動場所は、ワンルームマンションの一室です。 原稿をメンバーの前で読んだ…

『四時過ぎの船』古川真人(著)の感想【認知症の祖母と無職の孫】(芥川賞候補)

認知症の祖母と無職の孫 長崎の島を舞台に、 章ごとで、視点が交互に変わります。 認知症の祖母の視点 無職の孫の視点 また、語られる時間軸は同じではありません。 祖母の視点:孫が中学一年生 孫の視点:孫が30歳直前 よって、語られる内容も異なります。 …

『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作 再び』の感想【少年の日の思い出】

少年の日の思い出 ヘルマン・ヘッセ『少年の日の思い出』を読むため、手に取りました。 中学1年生の国語の教科書に掲載されているようですが、 私の中学時代の教科書には載っていませんでした。 では、なぜ読みたくなったのかというと、 ある日、朗読で聞い…

『漁港の肉子ちゃん』西加奈子(著)の感想【ありのままに生きること】

ありのままに生きること タイトルの通り、「漁港の」そばに住む「肉子ちゃん」の話です。 肉子ちゃんの本名は、菊子ですが、焼肉屋でバイトしており、太っているから、「肉子ちゃん」と呼ばれています。 なぜ漁港のそばに住んでいるかというと、 肉子ちゃん…

『壺中に天あり獣あり』金子薫(著)の感想【閉じ込められた世界で没頭する】(三島賞候補)

閉じ込められた世界 主人公は、広大なホテルの中をさまよいます。 どんなに歩いても、 廊下が一直線に続き、 部屋のドアがずらっと並び、 螺旋階段が上下に伸びています。 ホテルの外へは出られません。 部屋のドアを開けると、ベッドがあったり、バーや資料…

『神前酔狂宴』古谷田奈月(著)の感想【披露宴の滑稽さを高めるため全力で働く男】(野間文芸新人賞受賞)

披露宴の滑稽さを高めるため全力で働く 神前酔狂宴を文字どおり読むと、神の前で酔い狂う宴。 主人公は、結婚披露宴の会場の派遣スタッフです。 結婚披露宴って何?(中略)なんでみんな、結婚を披露するの?(p.40) そう思いながら、時給が高いので働いて…

『掏摸』中村文則(著)の感想【手のひらで転がされる人間の抵抗】(大江健三郎賞受賞)

手のひらで転がされる人間の抵抗 行動を起こすのは、それをしたいからですよね。 その行動が、実は誰かの手の上だったら。 怖いですよね。 この作品には、他人の人生を手のひらで転がす人間が登場します。 他人の人生を、机の上で規定していく。他人の上にそ…

『年収90万円で東京ハッピーライフ』大原扁理(著)の感想【好きなことを優先するために】

好きなことを優先するために考える 週に2日だけ介護の仕事をして、他の日は散歩したり読書したり野草を摘んだり。 大原さんは、東京の多摩地区で、2万8000円のアパートに住んでいます。(その後、台湾に転居したそうです) みんなもわたしを見習って隠居しよ…

『夢をかなえるゾウ』水野敬也(著)の感想【今度こそ変わりたい人に】

今度こそ変わりたい 主人公は、普通のサラリーマンです。 変わりたいと思いながら、変われずに日々働いている青年です。 ある日、呼んでもらったパーティーが華やかで、そんな世界に行きたいと思いました。 ですが、主人公には何もありません。 自己啓発本を…

『ことり』小川洋子(著)の感想【コミュニケーションが苦手なだけ】(芸術選奨文部科学大臣賞)

コミュニケーションが苦手な兄弟 小鳥の小父さん(おじさん)と呼ばれる人は、毎朝幼稚園の鳥小屋を掃除します。 彼は近所の幼稚園の小鳥たちを、二十年近くに亘って世話していた時期があった。誰に頼まれたわけでもない、全くの奉仕活動だった。その間にい…

『鳥打ちも夜更けには』金子薫(著)の感想【やりたくない仕事を辞めた先に】

仕事のスタンスが異なる3人 やりたくない仕事、辞めますか? 続けますか? 舞台は、日本ではないどこかの島。 「架空の港町」と呼ばれる島で、「鳥打ち」という仕事をしている3人がいます。 鳥打ちは、観光資源の蝶を守るため、鳥を駆除します。 草むらに隠…

『ウィズ・ザ・ビートルズ』村上春樹(著)の感想【教科書に載ってほしい】

教科書に載ってほしい 教科書に載ったら、国語の問いが変わるかもしれません。 国語の問いには、回答の正誤を論理的に判定できないものがあります。 例えば、以下のようなものです。 この文章に託されている、戦争についての作者の姿勢はどのようなものか 月…

『青が破れる』町屋良平(著)の感想【言いにくいことを人に伝えるときに】(文藝賞受賞)

ひらがな、カタカナを多用する文体 「あいつ、ながくないらしいんよ」 とハルオはいった。 ハルオの彼女の見舞いにいったかえりだった。 おれは、 「ビョーキ?」 ときいた。(p.9) 本来、漢字で書くところを、ひらがなやカタカナが使われています。 その文…

『人を操る禁断の文章術』メンタリストDaiGo(著)の感想①【人を動かす文章を書く方法】

何のために文章を書くか 文章を書く理由って何でしょう。文章を書く場面の一例を挙げます。 学校の作文、読書感想文 就職活動のエントリーシート 議事録 企画書 メール 共通するのは、読み手がいること。 読み手からすると、読みにくい文章は嫌です。 では、…

『博士の愛した数式』小川洋子(著)の感想【数学嫌いな方にもおすすめ】(読売文学賞、本屋大賞受賞)

数学嫌いの方にもおすすめ タイトルに「数式」「博士」が入っていますが、数学嫌いの方、どうか敬遠しないでください。 阪神タイガース(野球)が好き 子どもが好き きれいな文章が好き あてはまる人は必読です。 解説で数学者の藤原正彦さんは言います。 純…

『おとなの進路教室。』山田ズーニー(著)の感想【進学、就活、転職で悩んでいる人に】

どうやって生きていくか 進学、就職、転職、そんな分岐点に現れる「進路」という言葉。 私は社会人ですが、いまだ進路に悩んでいます。 辞める理由がないので仕事を続けていますが、このままでいいのかと考えない日はありません。 「おとなの」と題打たれて…