いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『坂下あたるとしじょうの宇宙』町屋良平(著)の感想【文学が好きな人に】

文学が好きな人に

タイトルの「坂下あたる」は、主人公の憧れの存在です。

小説投稿サイトに投稿する高校生で、新人賞の最終選考に残ったこともあります。

あたるには才能がありますが、主人公には才能がなく、劣等感を抱きます。

それでも主人公は、あたるが語らなかった言葉を拾い、こっそり詩を書いて、公募に出しています。

その作品で佳作を取りましたが、誰にも言えずにいます。

おれたちはなにをやっているのだろう?(中略)貴重な青春を、現代詩だの小説投稿サイトだの、そんなものに費やしていて、空しくないか? だけど、あの書店で自分の名前を見つけたときの宇宙が、この青空すらを貫いていた

雑誌に名前が載った瞬間、青春をかけてもいいと思えたのでしょう。

ただ主人公は、自分の詩が、あたるから生まれたものだと感じています。

人から影響を受けて書いた作品だって、自分の作品だと思います。

タイトルの「しじょう」は、詩情=詩に読まれた感情のことでしょう。

ひらがなにしていることから、他にも意味がありそうです。

例えば主人公の「私情」です。

おれが問題にしてるのは、あくまでおれとあたるのことだ!

と主人公は言い、周りの雑音を気にしません。

あたるは言います。

読者のためだけにかかなくてもいい! 文学のためにかけば、それが反射して読者をしあわせにする。読者がよんでくれるだけで、文学から反射されるもので著者もしあわせになれる。

読者のためでも自分のためでもなく、文学のために書くという感覚。

文学が好きな人、才能や嫉妬について興味がある人におすすめです。

坂下あたると、しじょうの宇宙

坂下あたると、しじょうの宇宙

  • 作者:町屋 良平
  • 発売日: 2020/02/05
  • メディア: 単行本
 

好きなものがなかったら

私が高校生のときは、主人公たちと違い、好きなものに没頭できませんでした。

入りたい部活はないのに、運動部に入らない奴はダサいという固定観念から、運動部に入りました。

むしろ私こそダサい奴です。

文化部や帰宅部は、ヒエラルキーの下な気がして嫌でした。

それだけで運動部に入るなんて、本当にダサいです。

それに比べ、あたると主人公はキラキラしています

好きな文学や詩に、周りの目を気にすることなく没頭しています。

投稿サイトには、あたるの作品によく似た小説が投稿されます。それは、AIが書いた作品でした。

AIは、あたるの書く作品を参考に小説を書きます。

一方主人公は、あたるが語りこぼしたものを、自分なりにアレンジして詩を書いています。

アレンジしたものはオリジナルでしょう。

私は、好きなものがあったら躊躇せずに没頭すべきだったし、好きなものがなかったら探せばよかったのです。

過去を悔いても仕方ありません。

今、どうするか。

キラキラとは程遠いですが、主人公たちのように、好きなものに没頭します。

坂下あたると、しじょうの宇宙

坂下あたると、しじょうの宇宙

  • 作者:町屋 良平
  • 発売日: 2020/02/05
  • メディア: 単行本
 

調べた言葉

  • たけだけしい:ずうずうしい
  • 快哉:痛快なこと
  • ほだされる:情に引かれて気持ちや行動が束縛される
  • 穏当:おとなしいこと
  • 倦む:飽きていやになる
  • 迂遠(うえん):回りくどいさま
  • 交錯:いくつかのものが入り交じること
  • 神出鬼没:自由自在に出没し、所在が容易にわからないこと
  • 侃々諤々(かんかんがくがく):正しいと思うことを主張し、議論すること
  • 詩情:詩に読まれた感情
  • 気ぜわしい:気持ちがせかされて落ち着かないさま
  • 俄然:急に