新人賞
ビートルズ「レボリューション9」 主人公は、5歳か6歳。来年小学校に入学します。 父親と二人暮らしで、父親は多摩川の河川敷で銃を探しています。 探している銃は父のものではありません。拾って報奨金をもらおうとしています。 父親は毎日河川敷に通ってお…
保育園の運転手のぼやき 主人公は保育園の運転手をしています。 鬼滅の刃とうっせぇわに辟易しながらバックミラーを見ると8人の保育園児が緑と黒の格子柄のマスクをしながらうっせーうっせーと叫んでいた。 一文目から飛ばしてます。語り口が面白く、引き付…
坑道に立つマネキン人形を盗む タイトルの「家庭的安心坑夫」とは何でしょうか。 作中には明言されていません。 関連しているのは、主人公の実家近くのテーマパークの坑道にいる、ツトムというマネキン人形のことです。 ツトムはその坑道の中腹に立っている…
つらい人に掛ける言葉 感想①はこちらです。 主人公の友人であるオジロの祖父が、コロナにかかり、入院します。 オジロから直接報告を受けた主人公は、どのように声を掛けていいか、悩みます。 オジロにとって重要な友だちだから打ち明けてもらえたのであって…
かけがえのない他人 主人公の女子高生は、教育実習生の女子大生と付き合っています。 主人公は、「かけがえのない他人」に憧れていました。 ホットケーキを食べたりおてがみを送るような普遍的なことをしていても世界がきらめいて見えるような、他の人では代…
一人称内多元視点 書き方が特殊です。 「ぼく」が使われているので、「ぼく」の視点から描かれている作品かと思いきや、他の登場人物の視点からも描かれます。 例えば、 山吉が振り向いて遣った視線の先にいたのはぼくだった というように、視点が「ぼく」で…
犬を放ちたい 2021年の群像新人賞は、入賞作が3作ありました。 当選作「貝に続く場所にて」 当選作「鳥がぼくらは祈り、」 優秀作「カメオ」 3番目の賞が「カメオ」ですが、私は3作の中で一番面白く読みました。 先が気になり、途中で読むペースを落とすこと…
小型カメラから見る世界 「眼球達磨式」というタイトルに、怪しくも引き付けられました。 一体何のことでしょうか。 ごく小さい機体で、手のひらに包み込むことのできるサイズ感。眼球を連想させる球体の合成樹脂ボディは、中央から黒目様のレンズが隆起して…
別の生き物になりたい 主人公は30歳の女性。仕事終わりにジムで筋トレに励んでいます。 フィットネス感覚ではなく、徹底的に体を鍛える、ガチな筋トレです。 スミスとは、筋トレマシンの名前です。 バーベルの左右にレールがついたトレーニング・マシンであ…
震災で行方不明になった知人 主人公の女性は、ドイツのゲッティンゲンに住み、論文を書いています。 そこに、東日本大震災で行方不明になった知人が来ます。大学のときに、主人公と同じ研究室に所属していた男性で、9年ぶりの再会です。 話しぶりや様子を見…
心がない教師 面白く一気に読みました。 文學界新人賞の受賞作2作のうちの1作ですが、本作の単独受賞で良いと思いました。 中学校の音楽教師である主人公は、男子生徒同士の喧嘩の第一発見者として、話し合いの場に出席させられます。 生徒の親や、教頭など…
きわめて優れたスケッチ 文學界新人賞には、2817作の応募があったそうです。 受賞作は2817作のうちの2作。ですが選考委員の選評は厳しいです。 『穀雨のころ』は、長嶋有さんだけが○をつけ、その他4人の選考委員は×をつけたそうです。 本作は、高校生の男女4…
生きた意味、生きる意味 主人公は、東北出身の74歳の女性です。 夫に先立たれ、残された家に一人で暮らしています。 一人の老後生活には、寂しさがつきまといますが、主人公はしたたかに生きています。 満二十四のときに故郷を離れてかれこれ五十年、日常会…
面白いが実態をつかめない 主人公は、男に借金を背負わされたため、インドで日本語教師をします。 資格も経験もありません。 インドのチェンナイで、若いIT技術者たちに日本語を教えていると、百年に一度の大洪水が起きました。 橋の上に積み上げられる泥。 …
現役女子高生の作品 文藝賞に応募があった2360作の第2位です。 受賞作は『水と礫』です。感想はこちらです。 本作『星に帰れよ』の何がすごいって、高校2年生が書いた作品であることです。 反対に、高校2年生が書いた作品だからこそ、優秀賞を受賞したのかも…
最後まで読ませる力 途中で読むのをやめようと、何度か思いました。 登場人物の独白や、まとわりつく文章に、胸やけするような感じがあったからです。 また、小山田浩子さんの選評で、 読んでいて暴力や陰惨さに心乱されねばならない間合いでいちいちつまず…
選評を読んで 物語の章ごとに登場人物の人称が変わるので、読みにくさがあります。 例えば、1章で「父親」と書かれていた人物が、2章では「男」と書かれています。 章ごとに人称が変わることについて、選評で小山田浩子さんは、 効果よりもわかりづらさが勝…
他の作品にはない 「17、8歳」の女子高生が主人公です。 主人公の回想で、 学校生活 家族と過ごす日常 叔母との会話 が描かれます。 回想形式の作品ですが、現在の主人公は、物語に登場しません。 私が、2年以上前に本書を読んだときの感想を、一部抜粋しま…
吉祥寺での戦闘 主人公は、自衛官勤務する前の、最後の訓練に参加しています。 装備をして、ある地点からある地点まで歩くという、行軍とよばれる訓練です。 訓練に参加しながら、主人公は大学時代に思いをめぐらせています。 大学時代の回想が何度も入るこ…
ロックスターの配偶者 後半からの熱量が凄い作品です。 すばる文学賞の選評で、川上未映子さんは、 何よりもラストシーン。評価を忘れただ物語を読む者として深く胸打たれた と書いています。 主人公は11歳のとき、イギリスのロックバンドのボーカルに恋をし…
小説の外に広がる世界 磯﨑憲一郎さんは選評で、 小説とは、作者の思想信条や問題意識を披露する場ではないし、溜め込んだ苦悩を吐露するための媒体でもない、具体性を積み上げることで自らの外側に広がる世界を照らし出し、作品という形で現前させる言語芸…
読ませる文章 一気に最後まで読ませる文章です。 断片的に描かれる語りは乾いていて、 その断片が、のちに結びつくさまに、面白みを感じます。 例えば、小学生のときに通っていたスイミングスクールについて、 私は喘息持ちで、水泳をやらせると心肺機能が鍛…
タイトルの意味 タイトルに、ぞわぞわします。 「うどん キツネつきの」 倒置法です。 「キツネつきのうどん」ではありません。 なぜ、倒置法なのか 「キツネ」はうどんに乗せる揚げなのか さらに副題が付けられています。 「Unknown Dog Of Nobody」 「誰に…
大事なことを隠すズルさ 「アキちゃん」は、主人公が小学5年生のときの同級生です。 大人になった主人公が、過去を回想する形で、物語は進みます。 わたしはアキちゃんが嫌いだった。 (中略) これまでの人生において、これほど真剣に誰かを憎んだことはな…
戦争の敗残者 太平洋戦争が舞台ですが、敵軍との戦闘がメインではありません。 赤道より南の半島で負傷した主人公が、野戦病院に運び込まれてからがメインです。 山裾に建てられた野戦病院には、 片足のない兵士 マラリアで衰弱した青黒い顔の兵士 顔中に包…
銃を見つけたら 道端で銃を見つけたらどうしますか? それを誰にも見られていないとして。 選択肢は3つです。 警察を呼ぶ(警察に届ける) 見て見ぬふりをして立ち去る 拾う 普通は、1か2ですよね。 この作品の主人公である大学生は、銃を拾います。 冒頭の…
日本人女性と黒人兵の愛欲 主人公は、横須賀のクラブで、歌手やストリッパーとして働いています。 クラブでビリヤードに熱中する黒人男性を見つめていると、彼から目で合図を受けます。誘導されるがまま、誰もいないボイラー室へ行きます。 主人公が何か話そ…
乱交、ドラック、暴力 米軍基地が身近に存在する、若者たちの乱交、ドラック、暴力です。 主人公の名前、リュウは著者と同じです。 著者の経験が入った作品でしょう。 あとがきでは、ヒロインに向けて書かれています。 こんな小説を書いたからって、俺が変わ…
いじめられたと思わない 中学2年生の主人公は、クラスメイトからいじめを受けています。 殴られるのは日常茶飯事で、 筒型の風呂で冷水や尿をかけられたり、尻の穴にモップの柄を入れられたりします。 主人公は、独自の「論理」を持ち込んで耐えます。 いじ…
失踪した親友を探す 30代の主人公は、岩手に転勤し、一人暮らしをしています。 2年経っても、人との交流はほとんどありません。 主人公は釣り好きで、釣りのイベントに参加したのですが、 誰とも世間話ひとつできず、そんな自分に落胆します。 唯一、心を許…