いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いています。

介護と戦争がリンクする 中西智佐乃『尾を喰う蛇』(新潮新人賞受賞)の感想(1000字)

介護と戦争がリンク

 主人公は35歳の介護福祉士で、病院に勤めています。

 入居者の老人が、女性の身体に触れたり、暴力をふるったりすることに、苛立っていました。

 老人が暴れたとき、主人公は力で抑えます

 そして、相手を暴力で封じ込むことに味をしめます

どうしてこんな歳になるまで気が付かなかったのだろう。こんなに簡単なことならば、もっと早くからやっておけば良かった。(p.30)

 老人は主人公を恐れます。

 老人は夜にうなされていました。

しかたないんや

(中略)

へいたい、の」(p.33)

 老人は、戦争中に兵隊だったのかもしれません。

 何が「しかたない」のか、主人公は追求していきます。

 また、戦争のことを調べ始めます。

  • 老人が戦時中に暴力で服従させたこと
  • 主人公が介護の名のもとに暴力で老人を抑えること

 がリンクします。

 以下に興味がある人におすすめです。

  • 介護
  • 戦争
  • 暴力
  • 働くこと
新潮 2019年 11 月号 [雑誌]

新潮 2019年 11 月号 [雑誌]

 

一言あらすじ

 介護福祉士の主人公は、暴れる老人を力で抑えつけたことに味をしめる。暴力で相手を封じることを、職場のパートや家族に展開していく。

 

主要人物

  • 興毅:主人公。病院で働く35歳の介護福祉士
  • 89:89歳の老人。89歳になっても人間ができていないから、興毅が名付けた

 

何が仕方ないのか

 老人(89)の「しかたないんや」は、興毅の暴力とつながります。

 ですが、興毅の力で抑えつける行為は、仕方ない範囲を超えています(必要な力以上で抑えつけます)。

 だからこそ、興毅は89の言う「しかたない」を疑います。

 本当に仕方なかったのか? したかったのではないか?

 戦時中に仕方なく行われたこと(仮に性暴力)は、仕方なかったのでしょうか

  • 戦時中に行われたこと
  • 暴れる老人を、介護の名のもとに力で抑えつけること
  • 働くこと

 は、仕方がないのでしょうか。

 

仕方なく働く

 この病院で、働きたくて働いている人はいません

 社員もパートも、仕方なく働いています。

 興毅は、結婚相手に働くことを求めます。

働いて、子どもを産んで、家事をして、子どもを育てて、働いて。そこまでしてくれよと興毅は思う。俺だってする。手伝うなんて言い方もしない。(p.24) 

 結婚して子どもを産んだ妹は、働いていなく実家住まいです。

 興毅は妹に言います。

働いて、働いて、働いて家事もせいや。出来るわ。皆やっとんじゃ。(p,51)

 働く苦しみをお前も味わえと言わんばかりです。

 昔でいう戦争が、現代の労働です。

  • 男女平等が浸透していながら女性が働かない
  • 何故自分だけが苦しい思いをしなければならないのか

 と、興毅は苛立ちます。

 閉塞感しかない環境が、リアルに描かれます。

新潮 2019年 11 月号 [雑誌]

新潮 2019年 11 月号 [雑誌]

 

調べた言葉

しばたく:しきりにまばたきをする

もうろく:老いぼれること