いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『東京を生きる』雨宮まみ(著)の感想【幸せとは何か】

幸せとは何か

 幸せになりたい。誰もが願います。

 その漠然とした、幸せとは何でしょう。

そんなことしてたら、ずっと幸せになんかなれないよ」。

そう言うときの人の顔が、いちばん醜いと思う。(p.185)

 「幸せになんかなれないよ」という言葉は、足を引っ張ります。

 二言目には、「あなたのためを思って」が聞こえてきそうです。言われる側の気持ちはお構いなしです。

みんながそう言う「幸せ」が、「好きなものを諦めて、自由を諦めて、自己主張を諦めて、その末に手に入れる、なにごとも起こらない日々」のことに見えた。(p.185)

 確かに、幸せ=安定と考えてしまいます。

 ですが、幸せは、一律に測られるものではありません

 人によって違います。自分のしたいことをする=幸せです。

 幸せだと思う道を進むべく、雨宮さんは行動します。

 福岡の高校を卒業後、親の反対を押し切って上京しました。

 夢があったわけではありません。

  • 大学進学で上京
  • 卒業してフリーター
  • 給料が低いから、会社に入社
  • 退社して、アルバイトしながらフリーライター
  • アルバイトを辞め、専業のフリーライター

会社に通わなくてもいい身分になったとき、地面に触れている両足から、じわじわと熱がのぼってくるように嬉しかったのを覚えている。(p.95) 

 子どもの頃から会社員にはなりたくないと思っていたそうです。

 以下に興味がある人におすすめです。

  • 東京への憧れ
  • 会社員になりたくない
  • 歳をとることが恐ろしい
東京を生きる

東京を生きる

 

歳をとることに恐ろしさ

 雨宮さんは、歳をとることに恐ろしさを感じていました。

早く結婚するか、早く死ぬか、どちらかしかないように思えた。三十歳より先の人生は、真っ暗闇に思えた。(p.140)

 こんなに歳を気にしているのが意外でした。

 さらに、

若い人間は、年寄りの毎日には、何の楽しみもないと思っている。私だってそう思っていた。(p.142)

 「思っていた」と過去形で語られているので、その認識が変わっていきますが、歳をとることへのネガティブさは、完全には拭えていない気がします。

 その行き場のなさが伝わります。

 

なぜ生きるか

 Amazonで『完全自殺マニュアル』を注文したら、練炭やロープがおすすめ商品に挙がったそうです。

生きていることは、疲れる。愛しても、求める愛が得られるとは限らない。努力しても成果が得られるとは限らない。生きている限り、生活を維持していかなければならない。(p.151)

 なぜ生きる必要があるのでしょうか

 生きるのが楽しくなければ、生を終わらせてはいけないのでしょうか。

 生きる意味を探すために生きる、なんて馬鹿げたものはいりません。

 雨宮さんは、東京で、必死にもがいています。

東京を生きる

東京を生きる

 

調べた言葉

野暮ったい:あかぬけていない

餞(はなむけ):旅立ちや門出を祝って金品や言葉を贈ること

血道を上げる:分別を失うほど異性や道楽に集中する