タイトルの意味
タイトルに、ぞわぞわします。
「うどん キツネつきの」
倒置法です。
「キツネつきのうどん」ではありません。
- なぜ、倒置法なのか
- 「キツネ」はうどんに乗せる揚げなのか
さらに副題が付けられています。
「Unknown Dog Of Nobody」
「誰にも知られない犬」でしょうか。
単語の頭文字をとると「UDON」=「うどん」です。
タイトルだけで、疑問がわらわら出てきます。
本作はSF短編賞の作品です。
淡々と描かれる日常の中に、不可思議さが潜む短編を読みたい人におすすめです。
生き物を育てる理由
「うどん」は主人公の飼っている犬の名前です。
高校生の主人公は、パチンコ屋の看板のゴリラから声が聞こえ、屋上に上ります。
屋上で発砲スチロールの箱を見つけ、その中に生まれたばかりの犬がいました。
主人公は生まれたての犬を持ち帰り、育てます。
犬が家に来てから
- 1日目
- 7日目
- 4年目
- 7年目
- 11年目
- 15年目
が、断片的に描かれます。
犬が中心の話ではありません。主人公や家族の生活に、ちょこんと犬がいる感じです。
7日目ですでに、犬の餌を買いに行くのが、犬を持ち帰った主人公ではなく、妹です。
11年目では、一人暮らしの主人公が、スーパーで買った沢蟹を飼っています。
15年目では、主人公の祖母の「狐が憑いた女の人の話」を思い出し、「うどん(犬)」にも狐が憑いてるのかと考えます。
タイトルの「キツネつきの」は、「狐憑きの」です。
ただ、うどんに狐が憑いているかは不明で、憑いていたからどうなるわけでもありません。
不可思議さは続きます。
突然、空から「頭が狐、体が人間」という謎の生命体が降りてきます。
それを見た主人公は、
自分たちがをうどんを拾い、必死で育ててきたことの理由が解った気がした。
主人公がうどんを必死で育ててきた感じは、伝わりませんでしたが笑。
例えば、
- 7日目で妹に餌を買いに行かせる
- 病院に行ったうどんの心配をそこまでしていない
- うどんだけを家に置いて、何日か家を空ける
などです。
仮に必死に育ててきたとして、その理由は何でしょう。
食べるためにでも働かせるためにでもなく育ててきた。人間ではない、絶滅する心配のない生き物。 食が細っては気をもみ、追っては捕まえた。今まで不思議に思わず、まともに考えてもみなかった理由だった。
いまごろ家ではたぶん、うどんが寝息を立てている
必死に育ててきた理由は書かれていません。
ですが、家で寝息を立てているうどんを想像していることから、その場にいなくても存在を想えることが、育ててきた理由かもしれません。
生活の中心にうどんはいないですが、1日目から15年目まで、何かしらの形で登場していますから。
一方で、狐につままれた感じもします。
調べた言葉
- 撥水(はっすい):水をはじくこと
- 凝(こご)る:かたまって堅くなる
- まろぶ:転ぶ
- まんじり:ちょっと眠るさま
- 至極:この上ないこと
- 湛(たた)える:いっぱいになる
- 撓(たわ)む:曲がる