いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いています。

美しくなりたい男の凶器めいた語り 遠野遥『改良』(文藝賞受賞)の感想(1000字)

美しくなりたい男の凶器めいた語り

 主人公の大学生は、女装をします。

 一度買ったウィッグが気に入らないから買い直したり、メイクを研究したりと、ストイックです。

 男が好きなのかな? と思いますが、そうではありません

私は、美しくなりたいだけだった。男に好かれたいわけでも、女になろうとしたわけでもなかった。(p.82)

 主人公は、純粋に美を追求しています。

 私は、女装=男が好き、と思い込んでいたことに気づきました。

 女装するのは男が好きだから、男装するのは女が好きだから。そんな単純ではないと、はっとしました。

 そんな主人公の語りが客観的で凶器めいていて、ぐいぐい引き込まれます。

個室に入ると便座が上がっていて、私は憤りを覚えた。(中略)勢いよく叩きつけてしまいたい気分だったが、悪いのは便座を上げたまま出ていった人間であって、便器には何の落ち度もない。(p.57)

 以下に興味がある人におすすめです。

  • 意識の流れ
  • 客観的な語り
  • 女装
  • LGBT
改良

改良

 

一言あらすじ

 主人公の大学生は女装をするが、男が好きなわけではない。美しくなりたいだけ。女装して外に出るタイミングを伺うも、テレアポのバイトやデリヘルを呼ぶ日常を送る。

 

主要人物

  • 私:主人公。美を追求する20歳の大学生

 

勝手に解釈して安心する

 主人公は小学生の頃、同級生の男の子から性的な強要を受けます。

 主人公が「なんで女子と男子で水着のかたちが違うんだろう」とぼそっと言ったことで、男の子が興味を抱いたからです。

 その子は言います。

お前は女だよ。オレにはわかる。男みたいに見えるけど、お前は女だ。(p.53)

 勝手に解釈された主人公は、ぐいと引き寄せられます。

 ですが、主人公は男が好きなわけではありません。

 女装が好き=男が好き、という図式と同じです。

 そう単純ではなかったのです。

 単純化するのは、受け手が安心するからだと思います。

 現に私も、主人公が幼い頃に男の子から性的な強要をされたことで、男が好きになった物語なんだろうと予想していました。

 みごとに外れました。

 

改良の意味

 タイトル「改良」の意味は、作中に書かれていません。

 このタイトル、100か200の案を出して選んだそうです。

 かなり凝られているようで、深い意味がありそうです。

 改良(=欠点・短所などを改めてよりよくすること)とは何なのか

 主人公の語りで「マスクをすると男には見えないので、顔の下半分の処理に問題がある」という箇所があります。

 顔の下半分をメイクで改良する(美のために改良する)と考えると、なぜ主人公はそこまで美にこだわるのだろうと思いました。

 この作者の次の作品を早く読みたいです。

改良

改良

 

調べた言葉

改良:欠点・短所などを改めてよりよくすること

機先を制する:相手より先に行動して気勢をくじく