他人が産んだ子を育てるか
他人が産んだ子とは、養子のことではありません。
主人公の彼氏には、お金を払って会っている女性がいました。
その女性の産む子です。
彼氏は浮気をしていただけでなく、相手を妊娠させていたのです。
主人公は、卵巣の腫瘍を切除していました。
彼氏とは半同棲していますが、3か月以上性交渉はありません。
浮気相手の女性は言います。
子どもを育てたくない。産むのだってこわいし、痛いから本当は嫌だけど、おろすのはもっとこわい。だけど育てる気はありません。
主人公がされた提案は、次の1から5です。
- 彼氏と浮気相手が結婚
- 浮気相手が子どもを産む
- 彼氏と浮気相手が離婚
- 彼氏と主人公が結婚
- 彼氏と主人公が浮気相手の子どもを育てる
そんな馬鹿な話が! と思いますが、その世界にぐいぐいと引っ張られます。
主人公は、子どもをもらうのか、もらわないのか。
以下に興味がある人におすすめです。
- 人の産んだ子をもらう
- 子どもが産めない
- 子どもが好きではない
- 性交渉と愛
一言あらすじ
彼氏とは半同棲だが3か月以上性交渉はない。彼氏から紹介された女性が、彼の子を妊娠したらしい。女性から、産んだ子どもをもらってほしいと言われる。
主要人物
- 薫:主人公。30歳。卵巣の腫瘍を切除した
- 郁也:薫の恋人で半同棲している
- ミナシロ:郁也の子を妊娠したが、育てたくない
性交渉と愛
薫と郁也には、3か月以上性交渉がありません。
郁也はそれでもいいと言っていましたが、実際は浮気していました。
ですが、ミナシロへの特別な感情はないと言います。
愛はないですが、性交渉はあります。
一方で、薫と郁也には愛があります。
性交渉と愛がつながっていなければ、
- 郁也とミナシロは快楽を追求し、
- 薫と郁也には愛情が結ばれます。
悪者は生まれません。
しかし、3人にとってそんなうまい話はありません。
何かをしてあげるのが愛
薫は、愛することを、飼い犬ロクジロウへの思いで知りました。
ロクジロウはわたしより先に死ぬんだって理解した頃から、分かり始めた。
(中略)
この子が助かるならなんでもするのに、っていう祈り。
(中略)
自分にはなにも返ってこなくていいから、この子にいつもいいものがありますように。
そう考えたとき、
郁也からの愛は、薫が「卵巣に病気」があるからだと察します。
相手に「何かをしてあげたい」から生まれるのが愛だとしたら、対等な関係で愛は生まれません。
飼い犬を愛することのように、人を愛することはできるのか。
文章は読みやすいですが、考えさせる作品です。
芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』の感想はこちらです。