第33回三島由紀夫賞受賞作
2020年9月17日(木)に発表されました。
『かか』宇佐見りん(著)です。最年少での受賞だそうです。
感想はこちらです。
正直、受賞するとは思いませんでした。
予想では×をつけています。
ただ、『かか』の独特の語りや表現には、新しさを感じました。
風呂場で浮かぶ金魚が、初潮の血だったという冒頭の描写に、引き込まれました。
では、なぜ×で予想したかというと、
- 他の作品が素晴らしかった
- 物語や主人公に魅力を感じなかった
からです。
1.他の作品について、
- 『土に贖う』河﨑秋子
- 『首里の馬』高山羽根子
が素晴らしかったです。
どちらの作品も、世界観や登場人物の葛藤が、丁寧に描かれています。
そして、読み終わった後、読んで良かったと思えます。『かか』には感じられませんでした。
2.物語と主人公の魅力について、
- 浪人生の主人公が、入院し手術する母を残し、母のために遠野まで一人でお参りに行く理由が、よくわからない(物語にするために遠野に行くことを選んでいる感じ)
- 主人公の語りが、かまってちゃんの一人語りにしか聞こえない(しかも残された高校生の弟に向けられている……弟はどう思っているのか気掛かり)
- 主人公が、SNSで人々の関心を寄せるため、あり得ない嘘を吐く
なので、どうも魅力を感じられないんですよね。
最近の文学賞の予想では、一作は当たっていました。
野間文芸新人賞では、
- 『神前酔狂宴』古谷田奈月:的中
- 『デッドライン』千葉雅也:はずれ
芥川賞では、
- 『首里の馬』高山羽根子:的中
- 『破局』遠野遥:はずれ
ちなみに、『デッドライン』と『破局』は、どちらも×で予想しています。
で、今回の三島賞は、完全にはずしています。
ここからわかるのは、私が良いと思った作品と、受賞に値する作品が違うことです。
三島賞の規定をホームページから抜粋します。
文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に授賞する。
新鋭とは「新しく現れて、勢いが鋭いこと」ですから、この点で『かか』は該当しそうです。
でもなあ……『かか』は2回読んでいますが、もう一度読みます。