いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『本の読み方 スロー・リーディングの実践』平野啓一郎(著)の感想【本を読む理由】

本を読む理由

なぜ、本を読むのか。

主体的に考える力を伸ばすことこれこそが、読書の本来の目的である

そうなのでしょうか。

確かに、考える力を伸ばしたいと思って手に取る本もあります。

ただ、それだけではありません。

本を読む喜びの一つは、他者と出会うことである自分と異なる意見に耳を傾け、自分の考えをより柔軟にする

これもあります。

小説については、

小説を読む理由は、単に教養のため、あるいは娯楽のためだけではない人間が生きている間に経験できることは限られているし、極限的な状況を経験することは稀かもしれない小説は、そうした私たちの人生に不意に侵入してくる一種の異物であるそれをただ排除するに任せるか、磨き上げて、本物同様の一つの経験とするかは、読者の態度次第である

小説に限ることではない気がします。

ビジネス書でも、エッセイでも、著者の経験を吸収し、自分の血肉にできるところはしたいと考えてます。

本物同様の経験にはならないにしても、読書を通じて、「私ならどうするか」を考えるきっかけになると思ってます。

本を読む理由は、

  • 考える力を伸ばす
  • 他者と出会う
  • 経験値を上げる

以外にも、

  • 本を読んでる自分が好き(自己肯定感が上がる)
  • 話やブログのネタになる

があります。

では、本をどう読むかについて。

常に「なぜ?」という疑問を持ちながら読むことこれは、深みのある読書体験をするための一番の方法である

書かれてることを鵜呑みにしないのは、難しいです。

私は、著者の言うことならそうに違いないと、疑問を持たずに読んでしまいがちなので、注意が必要だと感じました。

著者を先生だと思い過ぎるのは、良くないのかもしれません。

とはいえ、小説家が「本の読み方」について書いたら、信用しないわけにはいきません。平野先生ですから。

小説の読みについて、

たとえば、登場人物が、会話の中で茶を一杯飲むというたったそれだけの、何でこんな描写が必要なんだというような箇所にも、実は緊張から来る口の渇き、間の必要といった意味が暗示されているかもしれない。とするならば、それに続いて発せられるのは、緊張を以て語られるべき重要な言葉である可能性がある

間を開けてる場面は、読むスピードが速まってる気がします。

早く結論を言ってくれよって、先を急いでしまいます。

一般的に、こうした間の後には、重要な発言が控えていることが多い作者としては、ここぞという発言を読者にサラッと読み流してはもらいたくないそのために、一旦会話を切って、注意を促すわけである

読み落としを防ぐには、タイトルにあるとおり、「スロー・リーディング」が必要でしょう。

「スロー・リーディング」をするには、読んだ冊数のカウントが邪魔です。

どうしても、冊数を多く読めた自分を褒めてしまします。

自分を褒めるには、読んだ冊数が簡単だからです。

月に10冊読めたのか、すごい、みたいな感じで。

いつの間にか、多くの本を読むのが良いことと、認識してた気がします。

その認識を壊さなければ、「スロー・リーディングの実践」は難しいでしょう。

読んだ本の数より、語れる本の深さが重要だと、頭ではわかってるのですが。

特に、小説を語る場合は、いかに深い読みができたかが大事な気がします。

小説の読み方に「正解」はない。「作者の意図を探る」ことは間違いなく有意義だが、必ずしもそれだけに拘束される必要はない。作者の意図を理解しようとするアプローチと、自分なりの解釈を試みようとするアプローチ、常にこの二本立てで本を読み、作品によっては、その比重を変える。これが恐らくは、最もスマートな戦術だ。

  • 作者の意図
  • 自分なりの解釈

を考えながら、本を読む。勉強になりました。