いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『家』高橋弘希(著)の感想【老婆を殺して良心が痛むか】

老婆を殺して良心が痛むか

29歳の主人公は、ネット掲示板で募集の仕事に応募します。

仕事内容は、老婆の家の金庫にある2000万円を盗むことでした

主人公の取り分は、半分の1000万です。

財布に250円しか入っていない主人公には、僥倖でした。

押し入った民家の金庫には、2000万ではなく、2億はありました。

バッグに札束を入れていると、依頼主に殴られ、主人公の意識が飛びます

主人公は依頼人に裏切られました。

目を覚ますと、民家に住む老婆と主人公の二人だけ。依頼人は逃げたようです。

当然2億はありませんが、20万円だけ残されていました。

老婆は手を縛られていながらも、生きています。

主人公は、老婆に顔を見られました。

主人公の選択は2択です。老婆を殺して逃げるか、殺さずに逃げるか

主人公は中学2年生のときに万引きしたことを、思い出します。

友達に誘われ、スーパーでポテトチップスとジュースを盗んだのです。

万引きに参加しなかった一人の友達がいました。

その友達に、万引きをしなかった理由を聞くと、

万引きをしたら、良心が痛むだろう

と言いました。

主人公は考えます。

老婆を殺して、俺の計画通りに事が運んだ場合、俺は良心が痛むだろうか

主人公は、自分の家のように、冷蔵庫を開けて麦茶を飲み(コップに注いで)、トウモロコシを食べ、二羽の鳥に餌や水をあげます。

決断できない主人公は、老婆を殺すかどうかを、コイントスで決めようとします。

コイントスの直前、二羽の鳥の様子がおかしいことに気付きます。

一羽の鳥が、もう一羽を攻撃していました。

こいつらはいったい何をしているこんな狭い鳥かごの中で、彼らの家である鳥かごの中で、いったい何を争っている

主人公は、一羽の鳥を逃し、攻撃していた一羽の鳥を包丁でぶった切ります。

満足した主人公は、包丁を握りしめ、老婆のいる方へ歩みを進めます。

二羽の鳥の関係を、主人公と老婆として見立てた場合、主人公は争わず、老婆と取引するかもしれません。

一思いに老婆をぶった切るかもしれません。

短篇でなく、長編小説の冒頭として読みたかった作品です

現代版の『罪と罰』になるんじゃないかと思います。

続きが気になります。

  • 包丁を持った主人公は、老婆を殺害するのか、殺さずに家を出るのか
  • 家を出た主人公は、どうやって逃げるのか
  • 依頼人に連絡はつくのか

鳥を簡単に切断した主人公は、老婆も簡単に殺せるでしょう。

鳥を逃したことも、殺したことも、主人公は良心を痛めているようには見えません。

続編を期待します。