いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

漫画『20世紀少年』浦沢直樹(著)の感想【原動力は嫉妬と復讐】

原動力は嫉妬と復讐

主人公が小学生のときに書いた「よげんの書」どおりに、なぜか日本は進んでいきます。

行き着く先は、世界滅亡

世界滅亡の危機の元凶である「ともだち」の原動力は、嫉妬と復讐でした。

「ともだち」は2人います

動機をそれぞれ、

  • 1人目:小学校のクラスのリーダー(ケンヂ)への嫉妬
  • 2人目:いじめられたことへの復讐

とします。本人の口で語られてるわけではないので、想定です。

嫉妬と復讐、どちらも個人的な因縁です。

個人的な因縁を世界の問題に持ち込むなよ、と思います。

ただ、「ともだち」1人目の動機は、わからなくはありません。

クラスで注目を浴びたい、注目を浴びている人から認められたいという感情は、理解できます。

嫉妬の感情を原動力とし、自ら成長するのは、目的としては間違ってはいないでしょう(手段は間違っていますが)。

それに比べ、「ともだち」2人目の動機(=復讐)は、おかしいです。

いじめへの復讐から人類滅亡に発展させるのは、行き過ぎています

復讐するなら

  • いじめた相手
  • いじめに関わった人間
  • いじめを作り出したシステムやそれに関わった人間

であって、関係ない一般人まで巻き込んだら、復讐は全体の悪でしかありません。

では、悪を作り出した、いじめた側に非はないのでしょうか

ないとは言えません。いじめた側に、クラスのリーダー(ケンヂ)は関わっています

いじめの原因をつくったのは主人公のケンヂです。

「ともだち」2人目がいじめられたきっかけは、駄菓子屋で商品万引きの罪をかぶったことです。万引きの商品は、当たりの券と引き換えにもらえるバッチです。

いじめの流れは、

  1. 「ともだち」2人目が駄菓子屋に行くも、店員がいない
  2. 当たりの券を置いて、バッチを持っていく
  3. 当たりの券を持っていないケンヂが、バッチを盗む
  4. 駄菓子屋の店員がバッチを盗まれたことに気づく
  5. 駄菓子屋の店員が、「ともだち」2人目に当たりをつけて、犯人扱いする
  6. それを見ていた同級生たちが、便乗して非難する(ケンヂは自分が盗んだと名乗り出ずに、その場から逃げる
  7. 「ともだち」2人目がいじめられる(死んだものとして扱われる)

問題なのは、

  • 「ともだち」2人目:駄菓子屋店員がいないのに、勝手に商品を交換した
  • 駄菓子屋店員:盗まれた現場を見ていないのに、犯人扱いする
  • 同級生たち:盗んだ現場を見ていないのに、駄菓子屋店員の言葉を鵜呑みにして非難する
  • ケンヂ:盗んだ犯人なのに、名乗り出ずに、その場から逃げ出す

復讐の矛先が、駄菓子屋店員やいじめた人間、名乗り出ないケンヂに向かえばいいのですが、人類滅亡に向かっていきます。

それにより、「ともだち」2人目が、一手に悪を請け負います。

ケンヂは後になって、

もしもあの時、俺もああしてあやまっていたら……

と、後悔しますが、時すでに遅しです。

もちろん、万引きの一件がいじめにつながり、人類滅亡の危機への引き金になったとして、ケンヂや駄菓子屋店員、同級生たちが悪だとは思えません

「ともだち」2人目の手段が、悪です。

それでもやはり、「ともだち」2人目だけに責任を負わせるのは酷だとも思います。

そして矛先は読者である私に向かいます。

――お前ならどうするのか、と。

私は、批判される人を助けられるとは思いませんいじめられている人を救えるなんて思いません

ですが少なくても、自分が見てもいなく知りもしないのに、人を批判したり批判する多数側についたりは、したくないと思いました

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