引きこもりなのに憧れる
主人公の男の子は、中学2年生です。
海辺の街に転校してきましたが、仲の良い友達はいません。
友達はいないのに、同級生の女の子に告白できる強さがあります。
振られてしまいますが、のちにその女の子から誘われ、体の関係を持ちます。
女の子は主人公を好きになったわけではなく、好きだった先輩から雑な扱い受けた腹いせに、都合の良い主人公を選んだだけです。
主人公は、振られた後もその女の子のことが好きでしたが、女の子は主人公のことが好きではありません。体の関係は持ちますが、キスは拒みます。
主人公は、傷ついているような発言を女の子にしますが、そこまで傷ついているようには見えません。
主人公は、女の子に、
俺のこと好きじゃなくても全然いいやと思って
……俺都合のいい道具で十分だよ
と、諦めのような発言をします。
『うみべの女の子』という、やわらかいタイトルですが、性描写が多いです。
主人公の両親は家にほとんどいないので、主人公は多くの時間を一人で過ごしています。
私が主人公に憧れるのは、主人公の「落ち着き具合」です。
- 友達がいなくても、
- 学校に行かなくても、
- 両親が家にいなくても、
- 好きな女の子に拒まれても、
動じているようには見えません。焦ることなく落ち着き払っています。
私が中学生なら、無理にでも友達を作ろうとするし、嫌われないように人付き合いをすると思います。学校をさぼることなく、運動部に入り、テスト勉強もするでしょう。
他人の目が気になるからです。
主人公は他人の目を気にしません。自分のやりたいようにやります。
主人公の、中学生なのに諦めているような脱力感がうらやましいです。
極端ですが、部活や学園祭に励んでいる中学生が幼稚に見えてきます。
ですが、「うみべの女の子」に遭遇した主人公は、一変します。
「うみべの女の子」とは、主人公の死んだ兄のカメラに写っていた、綺麗な女性です。
「うみべの女の子」が、高校生だと知った主人公は、高校進学をどうでもいいと思っていたはずなのに、彼女と同じ高校に通うべく受験勉強を始めます。
主人公が希望を見出したときの、いきいきとしたはしゃぎ具合に、私はしらけました。
普通の高校生になりかけているけど、主人公はそういうんじゃないと思ったからです。
普通の学生生活を送らなくても気後れしない精神を持った、強い主人公に私は憧れていました。
部屋に引きこもってゲームをしたり寝たりしても、焦りはなく気怠そうにしている姿に、孤高な格好良さを感じていました。
人生に目的を見出したことは、主人公にとって良いことでしょうが、読んでいる私としては、寂しさを覚えましたし、主人公が量産型の陳腐な人間になり下がったとさえ、思ってしまいました。