いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『天空の絵描きたち』木村友祐(著)の感想【死と隣り合わせのビルの窓拭き】

死と隣り合わせのビルの窓拭き

主人公の女性は、窓拭きの仕事をしています。

前職のデザイン会社は、連日の徹夜作業で辞めてしまいました。

彼女は、友人や親から「なぜ窓拭き?」と訊かれても、うまく答えられません

広告代理店に勤める彼氏からは、「辞めたら?」と言われます

彼によれば、危険なうえに歳をとったら働けなくなる窓拭きは、職業とはいえない、ということだった。そんなのはどこにも行き場のない人間がやればいいことで、わざわざお前がやることはないんだよ、とも言った。

言い方は別として、身の危険を心配する気持ちはわかります。

高層マンションの窓拭きは、死と隣り合わせです。

補助ロープがあっても、メインロープが切れて宙吊りになったら、

肋骨や背骨が折れたり、内臓が破裂したりすることもあるそうです。

周りの人間としては、そのような仕事に就いてほしくないでしょう。

それに、待遇も良くありません

主人公は先輩に訊きます。

「なんで肉体労働って、そんな安い扱いなんですかね」

「さぁ。なんでだろうね」

そんな話をしながらも、ふたりともからから笑っているのだった

待遇の不満を言い、からから笑えるのは、待遇以外の何かがあるからですよね。 

仕事をなんとなく続けている人や、仕事で悔しい思いをしている人におすすめです。

幼な子の聖戦

幼な子の聖戦

  • 作者:木村 友祐
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本
 

待遇以外の何か

「待遇以外の何か」を持っている人には、かなわないと思いました。

窓拭き仕事に比べると、私の仕事は危険が伴わないし、待遇も良いでしょう。

ですが、私には「待遇以外の何か」がないので、仕事の質は一定で、仕事での成長は見込めません。

主人公の先輩が言います。

「外を見る人にとっては、窓枠は額縁、外の景色が絵だよ。つまりぼくらってのは、せっせと窓拭いて、額縁のなかにきれいな絵を描きだしてんだよ」 

もう一人の先輩は、

たかがガラスでも、自己満足も許されない仕事なんか、やる意味がないっておれは思うんだ。人生のほとんどの時間は、仕事なわけでしょ?

私は、仕事を仕事として割り切っているので、自己満足はありません。

どう効率的に終わらせるかが重要です。

この小説だと、窓拭きの仕事に就く前の、デザイン会社で働く主人公に近いです。

ただ私は、徹夜作業がなく、定時で帰っています。

主人公の彼氏は、主人公に言います。

なんでお前がその仕事をしているか。それは、やりたいことがみつかってないからだよ。やりたいことがわかんないから、刺激に満ちた仕事をやることで、自分の現実を忘れようとしてるんだ

やりたいことがあっても、それで食っていけない場合、どうしたらいいのでしょう。

最低限の仕事をして、残りの時間にやりたいことをするしかないですよね。

幼な子の聖戦

幼な子の聖戦

  • 作者:木村 友祐
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本
 

調べた言葉

  • 硬質:質がかたいこと
  • ギャルソン:ホテルやレストランのボーイ
  • 烙印(らくいん):火で焼いて物に押し当てる金属製の印
  • ほうける:ぼんやりする
  • 逃げ水:前方に水たまりがあるように見え、近づくとそれがさらに前方へ移って見える現象