いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

アニメ「灰と幻想のグリムガル」の感想【特殊能力なしで異世界転生】

特殊能力なしで異世界転生

主人公は、異世界に転生しますが、チート能力はありません

特殊能力は与えられず、前世の記憶もありません。

お金もなく、携帯もありません。

携帯という言葉が何を意味しているのかすら、主人公は覚えていません。

何も知らない街「グルムガル」に転生した主人公は、何もできません

しかし生きるために、パーティを組んで、ゴブリンを狩ります。

主人公たちが食っていくためには、ゴブリンを狩るしかありませんでした

6人のパーティで、1匹のゴブリンを襲います。

最弱と言われるゴブリンでも、主人公たちにとっては強いです。

パーティのリーダーが、メンバーに呼びかけます。

みんな、これは命のやりとりなんだ

俺たちも、相手も

ゴブリンだって、真剣なんだ

これ以上ない真剣勝負なんだ

どんな生き物だって死にたくないだろ

ゴブリンの方から、主人公たちを襲う描写はありません。

しかし主人公たちは、食うために、ゴブリンを狩る必要があります。

生活しているゴブリンを襲うのですが、6対1でも簡単にはいきません。

主人公たちの息が上がります。

ゴブリンも必死で食らいつきます。

リアルな肉弾戦。食うか食われるか、命のやりとりです。

相手の骨を突いた感触に気持ち悪さを感じたり、ナイフで刺され首を絞められたときに、死がよぎったりします。

ゴブリンにとどめを刺すときは、まるで人を殺してるかように見えました。

武器を連続で突き刺し、息の根を止めます。

ゴブリンを初めて殺したメンバーの目からは、涙が溢れます。

動物を殺したときに溢れる感情は、こうかもしれないと思いました。

勝利した喜びではなく、自分も逆の立場になり得た恐ろしさや、相手を倒した安堵感、動物を殺した罪悪感でいっぱいになる。

今日は生き伸びたかもしれませんが、明日は死ぬかもしれません。

ある日、メンバーの一人が殺されます。

死体を焼くと知った主人公から出た言葉は、

それも、金取られるんですか

仲間の死は痛いです。それなのに、金も取られるのかというやるせなさが伝わります。

タイトルにある「灰」は、仲間の死体を焼いたときの灰でしょう。

死は身近にあります。いつ、誰が殺されてもおかしくありません。

では、タイトルの「幻想」とは何か。

「幻想」の「グルムガル」なので、幻想的な街の意味かと思いましたが、実際「グルムガル」は、死と隣り合わせの現実的な街です。

水墨画や印象派の絵画のようなタッチで描かれた街は、幻想的です。

「幻想」が、「灰」=死の対比だとすると、「幻想」=生で、生活を示しているのかもしれません。

殺すか殺されるかの戦いの後、メンバーの一人は、女子風呂を覗きます。

また、ゴブリンを狩って得た、なけなしの金で、衣服や食べ物を買います。

死と隣り合わせの状況でも、生活が描かれています。

生活が描かれているからか、自分の状況とリンクさせてしまいます。

  • 今と同じ状況で異世界に転生させられたら、生きていけるか
  • 刃物を持ったゴブリンと戦えるか

生きるか死ぬかの戦いをする必要のない、私の今の環境が、いかに恵まれているか、再認識させられました。

もし、主人公の転移した世界にゴブリンがいなかったら、主人公たちは生きるために、どうしたでしょうか。

平和に生きているゴブリンを狩っていることから、人間から金品をせしめていた可能性も、考えられます。

それはもう、仕方のないことと割り切って。