いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

映画「浅草キッド」の感想【ビートたけしの師匠】

ビートたけしの師匠

ビートたけしさんが漫才師になる前に過ごした「浅草フランス座」での出来事を描いています。

浅草フランス座では、ストリップショーの間に、お笑いコントをやっています。コントがメインではありません。

浅草フランス座のお客さんは、女性の裸を見るために来ます

その客にコントをするので、笑いを取るのは難しいです。

主人公は、浅草フランス座で行われるコントの師匠に心酔します

師匠は本気で笑いに取り組んでいる人でした。

主人公は、

  • 舞台のエレベーターボーイ
  • 師匠のかばん持ち
  • 舞台の雑用
  • 師匠のタップダンスの完コピ
  • 舞台の司会進行
  • コントの代役出演

と、ステップアップしていきます。

「浅草キッド」というタイトルは、若い頃のビートたけしを示す言葉だと思っていました。一人の若者(キッド)が、浅草で成り上がっていく姿を表す言葉だと錯覚していました。

映画を観た後、「浅草キッド」は主人公ではなく、師匠を表す言葉だと感じました

主人公のビートたけしは、浅草フランス座を辞め、別の舞台で漫才を始めます。漫才で売れ、テレビ出演をし、スターになっていきます。

一方、師匠は浅草フランス座で、ストリップショーの合間のコントを続けています

全く売れず、ストリップの客も途絶え始め、浅草フランス座の運営に支障をきたします。

師匠は、弟子の紹介で、工場での仕事を始めます。年下の先輩に馬鹿にされながら、金を稼ぐために働きます。

師匠の奥さんも、飲み屋の仕事を始めます

客が離れても、弟子が離れても、師匠の奥さんは、師匠のコントのファンであり続けました。

ですが、師匠の奥さんは過労で倒れ、亡くなってしまいます

奥さんを亡くした師匠は、廃人になってしまいます

師匠の奥さんが亡くなったことを知らない主人公は、漫才で賞金をもらった帰り、師匠の家に行きます。

主人公は、賞金を師匠に渡します。

小遣いですよ小遣い

と笑いを交えます。

師匠は、

弟子が師匠に小遣い渡すなんてな、聞いたことねえよ

と言いつつ、お金を受け取り、2人で飲みに行きます。

2人は居酒屋でフリートークをし、客や店員の笑いをかっさらいます

帰り道の、

師匠受けましたねえ

受けたなあ

のやりとりが、どうしようもなく良いです。

主人公は、廃人だった師匠を、再生させました

師匠は、奥さんの遺影の前で、

俺も負けてらんねえからよお

と宣言します。

人を復活させるのは、金ではなく、自信なのだと思いました。

師匠に工場の仕事を紹介した弟子が悪いわけではありません。生活に苦しんでいる師匠を見て見ぬふりをできず、仕事を紹介したのでしょう。

一方、主人公は、師匠の教えを忠実に守りながら、居酒屋で笑いをかっさらったことで、師匠に自信を取り戻させました

「浅草キッド」は弟子に小遣いをもらい、妻に愛され、最後まで舞台で戦った、頑固者の子どもでした。