いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『ミシンと金魚』永井みみ(著)の感想【育児放棄の末路】(すばる文学賞受賞、三島賞候補、野間文芸新人賞候補)

育児放棄の末路 主人公は認知症で、デイサービスや訪問ヘルパーを利用しています。 ある日、主人公は、通院に同行したヘルパーから、聞かれます。 カケイさんの人生は、しあわせでしたか? カケイとは、主人公の名前です。 自分の人生についてしあわせだった…

『ボギー、愛しているか』伊藤たかみ(著)の感想【売春島に打ち上げられた男】(芥川賞候補)

売春島に打ち上げられた男 ボギーとは、主人公の地元の同級生です。保木のあだ名がボギーです。 ボギーは、十九の夏に死んだ。溺死だった。九月の終わり、W島の海岸に打ち上げられたのだ。そこは、地元の売春島だと噂される小さな島だった。 なぜ、ボギーが…

『眼球達磨式』澤大知(著)の感想【小型カメラから見る世界】(文藝賞受賞)

小型カメラから見る世界 「眼球達磨式」というタイトルに、怪しくも引き付けられました。 一体何のことでしょうか。 ごく小さい機体で、手のひらに包み込むことのできるサイズ感。眼球を連想させる球体の合成樹脂ボディは、中央から黒目様のレンズが隆起して…

『サイドカーに犬』長嶋有(著)の感想【母が家を出た】(芥川賞候補)

母が家を出た サイドカーに乗った犬を、主人公は海沿いの道路で見ます。 サイドカーに犬を乗せたバイクが前方を走っていた。犬は行儀よくすわっていた。 主人公も、サイドカーの犬のように行儀がよいです。 欲しいものを、人にねだることができません。 主人…

『猛スピードで母は』長嶋有(著)の感想【心強いシングルマザー】(芥川賞受賞)

心強いシングルマザー 主人公の母の車の運転は、いつも猛スピードです。 主人公は小学5年生の男の子で、母と二人、北海道で暮らしています。 北海道の南岸沿いの小都市だが、背後を背の低い山が囲んでいた。だから海から流れてくる雲が停滞しやすいのだとい…