いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

野間文芸新人賞

『デッドライン』千葉雅也(著)の感想【締め切りに追われるゲイの大学院生】(野間文芸新人賞受賞、芥川賞候補、三島賞候補)

締め切りに追われるゲイの大学院生 デッドライン=修士論文の締め切りです。 主人公は、哲学を研究する大学院生です。 とりあえず惰性でモースの研究を続けていた。それでいいのかどうかはまだよく考えていなかった。 モースの研究をするのは、流されて行き…

『青痣』宮下遼(著)の感想【母に一人残された少女】(野間文芸新人賞候補、三島賞候補)

母に一人残された少女 二人暮らしの家から、母が消えます。 母の最後の言葉です。 「ジターヌを切らしてるみたいなの」 (中略) 「だから、ちょっと買いに行ってくるわ」(p.37) ジターヌ(煙草)を買いに、少女から離れる母。 少女は、子を預かっている貸…

『五つ数えれば三日月が』李琴峰(著)の感想【大切な人が可哀そうであってほしい】(芥川賞候補、野間文芸新人賞候補)

5年間、会わずに思い続けること 5年間会わなかった人を、思い続けることができますか? この作品の主人公(女性)は、大学院時代から好意を寄せていた女性と、5年の月日を経て再会します。 その女性は結婚し、台湾で暮らしています。 日本で働く主人公は、彼…

『雪子さんの足音』木村紅美(著)の感想【人との距離感を考えたい人に】(芥川賞候補、野間文芸新人賞候補)

野間文芸新人賞がきっかけ 普段あまり読まない新人賞ですが、2018年の受賞作、候補作が面白かったので、手を伸ばすことにしました。 受賞作、候補作はこちらです。(太字は読了) 金子薫『双子は驢馬に跨がって』(受賞) 乗代雄介『本物の読書家』(受…

『風下の朱』古谷田奈月(著)の感想【健康と野球からジェンダーを考える】(芥川賞候補、野間文芸新人賞候補)

芥川賞候補作 受賞作は読むのですが、候補作はあまり手にとりません。 しかし、受賞作や候補作が面白かったので手を伸ばしました。 受賞作、候補作はこちらです。(太字は読了) 高橋弘希『送り火』(受賞) 古谷田奈月『風下の朱』 北条裕子『美しい顔』 町…

『無限の玄』古谷田奈月(著)の感想【非現実を現実的に思わせる濃密な文章】(三島賞受賞、野間文芸新人賞候補)

野間文芸新人賞がきっかけ 私は芥川賞受賞作は読みますが、非公募型の純文学系新人賞の残り二つ、三島賞と野間文芸新人賞の作品はあまり読んできませんでした。 ですが、2018年の野間文芸新人賞受賞作が面白かったので、手を伸ばすことにしました。 受賞…