詩の書き方のコツ
吉野さんは、詩の定義を、
言葉で、新しくとらえられた、対象(意識と事物)の一面
としています。
対象は、
- 人
- 自然現象
- 社会現象
- 意識
何でもいいと、言います。
心惹かれた対象をほめようと思い、それを明確に意識の中に持ちこもうとしたり、他者に伝達しようとするとき、私たちにできる最高のことは、それを、すでに言われた表現方法によってではなく、個性的に行なうということです。
既存の表現方法ではなく個性的に表現するために、詩がわかりにくくなったり、難しくなったりするのかもしれません。
しかし、対象への関心や愛着がない限り、個性的な表現は必要にならないと言います。
表現とはある事についての関心の持ち方なのです。関心のないことを表現することはできません。表現の面白さは、関心の強さ・深さの反映です。
対象への関心がなければ、詩は書けないし、詩を書く必要はないのでしょう。
詩の書き方は、
- 何かに関心を持つ(持ってしまった)
- 自分の言葉で表現する
と、言葉にしたらシンプルです。
関心を持つ対象は人それぞれでしょうが、吉野さんが詩を書きたくなるのは、
何かに気付いたとき
だと言います。
物の見方や感じ方に”揺れ”ないし”ずれ”が生じて新しいことに気付こうとしている状態、あるいは、それまで漠然としてわからなかったことの意味に気付く状態
になったとき、詩を書きたくなるそうです。
では、詩をどう書くかについて。
詩は本質的に、作者の思いを述べる行為ではありますが、思いを述べるだけで、その思いを喚起した事象を的確に述べていない詩もたいへん多いのです。
思いだけ書いてあっても、読み手としては、どうしてそのような思いに至ったのか気になります。
吉野さんは、
事件や事物から喚起された思いを直接、読者に押しつけるという方法をとりません。自分が、そのように事件をとらえたか、事物を見たかということだけを書き、そこに読者も立ち会ってもらうようにします。(中略)私の思いではなく、私の経験が読者に共有されれば、読者はその経験から、判断なり感情なりを独自に喚起するでしょう。
思いを書かず、事象だけを書くのですね。
詩の魅力は、
- 「何が」
- 「どのように」
書いてあるかで決まると、吉野さんは言います。
- 「何が」は書き手の関心の対象
- 「どのように」は書き手の個性的な表現方法
だと、私は本書から受け取りました。
個性的な表現方法については、対象への関心(愛着)が強くなるほど個性が強くなると考えると、難解になってしまうのは仕方がないと感じました。