いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

「受賞者インタビュー 無職の二年間が精神修行になった」の感想(『文藝春秋』2017年9月号)

無職の二年間が精神修行になった

沼田真佑さんが『影裏』で芥川賞を受賞したときのインタビュー記事です

タイトルが強烈です。

  • 無職の二年間が
  • 精神修行になった

どういうことなんでしょうか?

沼田さんは、約10年間働いた後に、無職になったそうです

九州の勤め先を辞めて、両親の住む盛岡に引っ越しました。

両親は、無職で帰ってきた沼田さんを受け入れます。

うるさいことも言わず、無職の息子を寛大に受け入れてくれた両親には感謝しています結果的に、無職だった二年ほどの時間は、自分にとって大きかったと思っているんです

10年勤めた後に、2年間の無職期間って、すごいです。

もう後には戻れないというか。実際はそんなことないのかもしれませんが。

小説家になれなかったら、沼田さんはどうなっていたのでしょう。

無職でも人間性は変わらないし、別に気品がないわけじゃないそんな、精神修行にはなったと思います

確かに、無職になった途端、人間が変わるわけではありません。

ですが、周りの目は変わってくる気はします。

社会人に対する扱いと、無職に対する扱い。

沼田さんのご両親は、うるさく言わなかったようで、それは救いになったはずです。

無職でいることの実感は、本人が一番わかっています。周りにとやかく言われたくないでしょう。

沼田さんが精神修行のような扱いを受けてきたのか、ご自身でそう感じ取ったのか、詳しいことはわかりません。

ただ、沼田さんは精神修行になったと言っているので、無職になったことの影響は、何かしらあったのだと思います。

沼田さんは、家にずっと引きこもって執筆していたわけではありません。

田舎は噂が立ちやすいですから、いい年齢の男がひきこもってると近所が不安がりますそれではせっかく家を建てた両親が不憫ですから、地域の草取りに積極的に顔を出したり、掃除をしたり、アルバイトで塾講師の仕事を見つけたりといった、自分なりの努力はしていました(笑)

これはすごいです。

30歳過ぎて無職で両親の元に帰って、地域のイベントに顔に出すなんて、何を言われるかわかりません。

無職で実家に戻ってきたとなると、良くは思われない気がします。

仮に私が無職で実家に帰ったら、家からはなるべく出ないようにします。存在を消そうとするでしょう。

沼田さんはそうしませんでした。家にこもらず、外に出ました。

無職の二年間がどう精神修行になったかまではつかめませんでしたが、地域のイベントに精を出す姿が目に浮かびました。

無職だからってうしろめたく思う必要はないし、姿を隠す必要もありません。

言葉で言うのは簡単ですが、自分がいざ実行するとなると、難しいです。

沼田さんは、仮に小説家としてデビューできなくても、地域で生きていける人だと思いました。