幸せな夢と残酷な現実
映画はアニメの続編なので、先にアニメを見ました。感想はこちらです。
アニメは、1話から5話が好きでした。
弱い主人公が、もがき苦しみ、決して諦めず、努力の末に認められる姿に感動しました。
残念ながら、アニメの6話以降は、5話までを超えませんでした。
アニメを見終わったときの私の心境としては、
――アニメの続編だから映画は観るけど、そこまでいいのかなあ
と、半ば疑っていました。
疑いは、映画開始早々に払拭されます。
以下、映画のネタバレを含みます。
ちなみに映画の内容は、コミックの7、8巻です。
列車の中にいた主人公は、いつの間にか催眠をかけられ、眠ってしまいます。
主人公が見る夢は、家族との暮らしで、一家団らんです。
夢の中では、鬼に殺されたはずの家族が生きていて、主人公を笑顔で迎え入れます。
主人公は、家族が生きていた喜びで、泣いてしまいます。
家族は、主人公がなぜ泣いているかわかりません。
主人公は、夢の中だとわかりません。
ですが、家族は鬼に殺されたのだと思い出し、夢の中だとわかります。
そして、ここにいてはいけないと、家族団らんの家を離れます。
家族は、なぜ主人公が家を離れるのかわからず、追いかけます。
主人公も、家を離れたくありません。家族と一緒に暮らしたいからです。
ですが、現実で家族は殺されたのだから、いるはずがない。だからここはおかしいと、今いる場所を泣きながら振り切ります。
夢だとわかっても、
――ずっと、ここにいたいなあ
と、つぶやきます。
主人公の願いは、当たり前にあるはずだった家族との暮らしです。決して豊かとはいえない、平凡な暮らしです。
その暮らしを望む、切実なつぶやきが、胸に響きます。
夢だとわかっても、夢を見続けていたいという気持ち。
家族が生きていたら、鬼に殺されていなければ――家族みんなで幸せに暮らせていたのに。
もう頑張ったのだから、ゆっくり休みなよ、と言いたくなります。
家族に囲まれた優しい夢の中に、い続けてもいいじゃないかと思ってしまいます。
ですが主人公は、幸せな夢を自ら捨てます。
夢から覚める手段は、残酷なものでした。
夢の中で自分を殺すというものです。殺すことで、現実に戻ってきます。
家族に囲まれた、幸せな夢の中の自分を、殺さなければいけない無常さ。
夢から覚めた先に待つのは、家族が残虐され、妹が鬼に変化している現実です。
夢では人間の妹がいますが、現実では鬼になった妹を助けられるか、わかりません。
なのになぜ、主人公はそこまで頑張れるのでしょうか。
なぜ、夢の中で家族団らんをするより、家族が殺され、妹が鬼になった現実を選べるのでしょうか。
私はそこまで頑張れません。もうだめだと思ったら、手を離してしまいたくなります。
主人公は諦めません。
諦めなかった先に、助けてくれる仲間がいます。励まし合える仲間がいます。
家族は殺されてしまい、妹は鬼に変わってしまいましたが、決して諦めない主人公の周りには、共に戦う仲間がいます。