元少年Aの人を殺してはいけない理由
感想①はこちらです。
――どうして人を殺してはいけないのか?
もし元少年Aが、10代の少年に問われたら、以下のように答えると言います。
どうしていけないのかは、わかりません。でも絶対に、絶対にしないでください。もしやったら、あなたが想像しているよりもずっと、あなた自身が苦しむことになるから
読み終わってしばらく経っても、私はこの答えに違和感を覚えます。
それは2点で、
- 人を殺してはいけない理由の一言目が「わからない」ってどういうことだろう
- 殺された者への言葉がないのはなぜだろう
1について、なぜ「わかりません」と言えるのかが、わかりません。
元少年Aの正直な答えなのでしょうが、読んでいる人のことを、考えてないのでしょうか。
出版するのですから、多くの人の目に触れる場所に置かれます。
元少年Aは頭の良い方ですから、世間で話題になるのは承知の上での出版だと思います。
なのになぜ、「人を殺してはいけないのか、わからない」と言えるのでしょうか。
それを読んだ人から、
――結局、犯罪を犯した者の根っこは変わらない
と、思われるだろうことは、わかっているはずです。
さらにその答えにより、元少年Aだけにとどまらず、元犯罪者が一括りにされる可能性があります。
元犯罪者それぞれの個性を見られるほど、交流があるわけではありません。
元少年Aは苦しんだはずなのに、この言葉で、「結局根っこは変わらないんだ」と思われたら、他の元犯罪者の更生を阻むことにもつながってしまいます。
良くも悪くも、元少年Aは注目の的です。
2点目、殺された者への言葉がないことについて。
元少年Aは、「殺したら自分が苦しむから、人を殺してはいけない」と言っているわけです。
――殺された人の苦しみは? 悲しみは? 残された人たちの気持ちは?
そういったものではなく、自分が苦しむから殺しはやめとけ、と言ってます。
もしかしたら、10代の少年に向けて発する言葉だからなのかもしれません。
――殺された側のことを考えなさい
だったり、
――人にはみんな生きる権利があり、あなたがそれを奪う権利はありません
と言っても、10代の少年には響かないだろう前提のもと、
「あなた自身が苦しむことになるから、人を殺してはいけない」という結論に至ったのかもしれません。
ただ、10代の少年に正論を言っても伝わらないという前提部分は書かれていないので、私の想像です。
私は元少年Aから、人を殺してはいけない真っ当な正論を聞きたかったです。
少年Aから正論を聞くことで、私自身が安心したかったからかもしれません。
――人は変わるんだ、変われるんだと、思いたかった。
だからこそ、人を殺すことについて、
- どうしていけないのかは、わかりません
- あなた自身が苦しむから絶対にしないでください
と、元少年Aが書いたことで、不穏さが残り、胸がざわざわと騒ぎました。