いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『鬼滅の刃』23巻(漫画最終巻) の感想【自分だけの幸せを見つける】

自分だけの幸せを見つける

最終巻を読んだ直後は、主人公たちの戦いが終わった後の、現代の話は不要に感じました

確かに、戦いで生き残った者、死んだ者のその後を描くことで、昔と今の繋がりを意識することはできます。

ですが私は、昔と今の繋がりなど、意識したくなかったのです。

主人公たちが生きた世界だけで十分だと。

なぜなら、その後の現代が描かれてしまうと、同時代に生きる自分を意識してしまい、現実に呼び覚まされる感じがするからです。

――せめて読み終わるまでは、『鬼滅の刃』の世界に浸っていたい

と願うのは、甘い考えかもしれません。

実際、『鬼滅の刃』を読んでいる間は、現実の厳しさから離れることができました。

ですが、

  • 東京都心のようなビル群の描写
  • 現代を生きる、主人公たちの子孫の暮らしぶりの描写

によって、フィクションに浸っていた場所から、厳しい現実世界に引っ張り出された感じがしたのです。

もしかしたら、作者にそういう意図があったのかもしれません。

最後には読者を、フィクションから現実に引き戻すという意図です。

作者の「あとがきがき」の一番最後は、

真っ直ぐ前を向いて自分だけの幸せを見つけてくださいね

と、読者に呼びかけています。

自分だけの幸せを見つけてください、とりわけ「自分だけ」という言葉から、

――自分だけの世界で幸せを見つけてください。いつまでもフィクションの世界に浸ってないで

と言っているように捉えられました。

一方で、

――『鬼滅の刃』に没頭している時間が「自分だけの幸せ」ならいいじゃないか

という意見もあるでしょう。

ただ、漫画やアニメなど、虚構を体験している時間は、「幸せ」ではあるかもしれませんが、「自分だけの幸せ」ではない気がします。

虚構を体験しているのは、自分だけではないですし、「自分だけの幸せ」が虚構を体験している時間というのは、なんだか寂しいです。

ただ、

――『鬼滅の刃』の主人公のように、精いっぱい生きよう

という、現実を生きる手助けとして、登場人物を言葉を借りたり、境遇を自分と照らし合わせたりするのは、良いと思いました。現実に繋がっているからです。

現実に繋がっていると思わせたのが、『鬼滅の刃』の現代の描写です。

現代の描写がなければ、昔と今の繋がりを意識することなく、『鬼滅の刃』の世界観に浸って終わりだったでしょう。しばらく抜け出せなくなったかもしれません。いわゆる「鬼滅ロス」です。

ですが、現代の描写があったことで、現代を生きている私につながり、今を生きようと思うことができました

作者の「あとがきがき」に、

もうだめだ、と思った瞬間こそが、

道を踏み外さないように踏ん張る時です。

困難な状況や苦しい境遇に負けないで欲しいです。

とあります。まさに『鬼滅の刃』に描かれている内容です。

現実から逃避するために『鬼滅の刃』をはじめとするフィクションに没頭し続けたくはないし、なってはいけないと自分を戒めました。

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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アニメ「鬼滅の刃」の感想はこちらです。

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