いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『自分の中に毒を持て』岡本太郎(著)の感想【できるだけ本音で生きる】

できるだけ本音で生きる

岡本太郎と聞いて、

  • 太陽の塔(万博公園)
  • 明日の神話(渋谷駅)

を思い浮かべる人は多いでしょう。

私はそれらの作品の良さはわかりません。むしろ、おどろおどろしく、子どもの頃に見ていたらトラウマものでしょう。ピカソのゲルニカのような、わけのわからなさがあります。

ただ、作品への姿勢には、参考にしたいところがありました

岡本太郎さんがどんな人だったか、わかりやすく示している文章を抜粋します。

ぼくはまず芸術表現の上で、日本の通念とまったく反対な表現をうち出した。(中略)あらゆる問題について発言し、全身をぶつけて「ノー」と言った。まったく危険な道である。

端的に言えば、それでは収入は得られない。食えない。つまり生活できないということである。好かれる必要はない。売らないという前提で絵を描き、あらゆる面で権威主義にたてつき、いわば常識を超えて、人の言わないことをあえて言い、挑んだ。

自分の信念を貫けば、収入を得られなくても構わないというスタンスです。

では、収入を得られずにどんな貧乏生活をしていたかというと、貧乏エピソードは書かれていません。18歳でパリで生活しており、貧乏要素のかけらも感じられません。

夢に賭けても成功しないかもしれない。

(中略)

でも、失敗したっていいじゃないか。不成功を恐れてはいけない。人間の大部分の人々が成功しないのがふつうなんだ

失敗したっていいじゃないか」と、成功者である岡本さんが語っても、説得力に欠けます。「成功しないのがふつう」だから失敗してもいいと、私は吹っ切ることができません。

成功とはいったい何だろう。結局のところ、自分の夢に向かって自分がどれだけ挑んだか、努力したかどうか、ではないだろうか。

夢がたとえ成就しなかったとしても、精いっぱい挑戦した、それで爽やかだ

夢が成就しない」=「夢に挑んで努力したけど、生活できないので夢を諦める」だとして、果たして爽やかな気分になれるでしょうか。

岡本さんが成功者だから、仮に「成功していなかったとしても爽やかだ」と言えるだけではないでしょうか

ひねくれた考え方かもしれません。ですが、成功せずに極貧生活を送っている人でないと、「精いっぱい挑戦した、それで爽やかだ」に説得力はありません

それでも、岡本さんは夢を諦めさせてくれません。

なぜ迷うのか。こうやったら食えないかもしれない、もう一方の道は誰でもが選ぶ、ちゃんと食えることが保証された安全な道だ。それなら迷うことはないはずだ。もし食うことだけを考えるなら

そうじゃないから迷うんだ。危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだほんとはそっちに進みたいんだ

  • 食えることが保証された安全な道(行きたくない道)
  • 食えないかもしれない危険な道(行きたい道)

の2つで、行きたい道を選べというのは簡単です。行きたい道なのに、食えないかもしれないから選べないのです。

例えば私は、社会人で仕事をしています。食えることが保証された安全な道です。趣味はこのブログ執筆ですが、これでは食えません。仕事を辞めて、ブログを書いて生活するのは、食えない危険な道です。毎月20万円の収入があればとは思いますが、仕事を続けています。

危険な道に惹かれるのは確かです。ですが、本や映画の感想文を書いて食っていくのは無理だと諦めています

岡本さんは、自分の信念を曲げません。

私はこのブログで、

  • 自分が良いと思ったものは良い
  • 良くないと思ったものは良くない

と、発信し続ける勇気をもらいました。

良くないと思った作品でも、良い部分を無理に取り上げて感想を書いたことがありました。マイナスの部分ばかり取り上げていると、読んだ人が嫌だろうと思ったからです。

ですが、本当に言いたいことを隠す方が不遜だと気づきました。なので本音で書きます。