精神病院からの脱走劇
21歳女子大生の主人公は、入院中の精神病院から脱走します。
主人公と一緒に脱走するのは、名古屋出身のなごやん24歳。
なごやんも患者です。
21歳女性と24歳男性の、逃亡劇。
なごやんの車で、博多から大分、熊本、宮崎、鹿児島と走ります。
目の前には未知の山々が連なっている。高い山はないけれど、越えても越えても緑のうねりがどこまでも続きそうだ。これが、「逃げる」ということなんだろうか。知らないところへ、誰も知らないところへ。
逃げるとは何だろうか。
そんなことを考えました。
今いる場所から逃げたとしても、楽ではないかもしれません。
ただ、逃げても楽しいかもしれない。
主人公となごやんの逃亡劇は、大変そうですが、楽しそうにも見えました。
- 高級車に車をぶつけて逃亡
- 畑で野菜を食べて逃亡
- 店で食い逃げ
- 免許ないのに運転
無謀です。
無謀だし馬鹿げてるけど、二人が楽しそうに笑っている画が浮かぶんですよね。
読んでいるこちらも、楽しくなります。
馬鹿だなあと、自然と笑顔になってくるような。
病院から車で逃亡なんて、一生話せるネタですね。
車中泊に嫌気がさした主人公たちは、旅館に泊まります。
ああ、お部屋はいい。お布団はいい。もう車中泊はたくさんだ。あたしに必要なものが判った。自由と布団と少しのお金だ。
自由と布団と少しのお金、良いですね。
逃げていると、本当に必要なものが何か、気づけるのかもしれません。
現実に直面してる間は忙しいから、自分に本当に必要なものが何か、ゆっくり考えられません。
主人公は、なごやんに言います。
してもよかよ
(中略)あたしはただ、こんなに幾晩も一緒にいて、男と女なのに一度もさせてあげなかったら可哀想かな、と思っただけだった。
なごやんは、
いかんがあ
と名古屋弁を使います。
恋人じゃない人としたらいかんて。俺じゃなくても、誰とでもそうだからね
なごやんは普段、標準語を話しているのですが、このときは名古屋弁を使います。
それがいいんですよね。
思わず名古屋弁が出てしまった感じ。
そして、もう一つの名古屋弁。
くそたわけっ
いつか実家に帰ったらいいという主人公の提案に、なごやんが発する言葉です。
怒りの叫びのはずなのに、山に向かって叫んでるからか、すがすがしさがありました。