相手と自分に気を遣う
以前、好きな小説家についての記事を書きました。
読んでくださった方から、以下のような質問を受けました。
「本について本音で話すのは、気を遣うから難しいのです。」について、もっと詳しく知りたいです。
面白い質問です。
本について話すことを、掘り下げて考えたことはありませんでした。
「本については本音で話さない」と、ブレーキを掛けていました。
ご質問をいただいた良い機会なので、整理してみます。
「本について本音で話すのは難しい」のは、気を遣うからです。
誰に気を遣うかというと、「相手」と「自分」です。
相手とは、ネット以外の、リアルな人間です。
ネット(ブログ等)で発信しているのは本音です。
なぜ、生の人間には気を遣うのでしょうか。
一方的な発信ではなく、直接的な対話だからです。
自分が話した内容に、必ず返答が返って来ます。
「好きな作家は誰ですか?」の質問に、
「町屋良平さんです」と回答した場合、
想定される返答は、
- 初めて聞きました。おすすめありますか?
- そうなんですね。どんな作家さんですか?
- そうなんですね(質問なし)
- 芥川賞取った作品は読みました
- 『ほんのこども』読みました
と、5パターンあります。
次に私が返答する番です。
- 読みやすいのは芥川賞取った『1R1分34秒』ですね
- 青臭い作品から難解な作品まで幅広いですね
- ○○さんは最近良かった本ありますか?(質問返し)
- 『1R1分34秒』ですね。どうでした?
- 『ほんのこども』はどうでした?
盛り上がりそうな会話は4と5ですが、そんな会話になったことはありません。
『ほんのこども』(町屋作品でかなり難解な作品)について相手に語られたら、私はついていけません。
このように、会話一つとっても言葉を選ぶ必要があるので、気を遣います。
好きな作家を「町屋良平」と答えるとき、芥川賞作家だから名前を出せるとも、思っています。
直近で読んだ小説を語りたいときもあるでしょう。
最近では、グレゴリー・ケズナジャットさんの『開墾地』が良かったですが、話題には出しにくいです。
相手に合わせ、相手に伝わる返答をしてしまいます。
- オタク(特殊な人)に見られたくない
- 自分のことしか話さない人と思われたくない
言いたいことを抑え込むのは、自分にも気を遣っている証拠です。
漫画にも同じことが当てはまります。
- 『なるたる』が好きなのに、無難に『スパイ・ファミリー』と答えてしまう
- 『ルックバック』ではなく、『チェンソーマン』と答えてしまう
本に限らず、リアルでは本音で話すのが難しい。
ブログでは、気を遣うことなく発信できるので良いです。