悪霊から逃げるゲーム
主人公は女子高生です。
主人公は、父親と同じ歳くらいの男性のマンションで、暮らしています。
同居の男性の名は、「碧」(あお)。
年配の男性にしては、珍しい名前です。
主人公は、「碧くん」と呼びます。
なぜ、主人公が碧と暮らしているのかはわかりません。
主人公が実家に戻ることもあるので、親との不仲ではなさそうです。
ただ、実家に母親はいないようです。
主人公の小学校高学年の回想として、母親は登場します。
母親は、ゲームをしていました。
なるべく話しかけないように努力していた。私が話しかけなければ、母親も私を無視せずに済んだ。
独自のルールを作り、そのルールを忠実に守る。遠野さんの小説によく見られる形式です。
主人公は、母からの声掛けにうまく答えられませんでした。
私が気の利いた返事を、いや、ありきたりなことでもいいから、何か返事をできていたら良かった。もしかしたら、わずかな可能性かもしれないけれど、それに対して母親がまた何かを言い、ふつうの親子のような会話になったかもしれない。
現在は、ふつうの親子のような会話ができない状態なのかもしれません。
普通をふつうと、ひらがなで書いているのは、普通に対するアンチテーゼでしょうか。
主人公は、碧の家で、テレビゲームをします。
ロールプレイングゲームで、ゲームのタイトルは「浮遊」です。
ゲームのメインキャラクターは、記憶を失っています。
襲ってくる悪霊から逃げ、自分の記憶を取り戻したらゴールです。
本のタイトルも「浮遊」です。
ゲームの内容(悪霊から逃げる世界)と、本の内容(主人公の生活する世界)に、リンクがあるのかもしれません。
共通するのは、
- 舞台が日本の都心であること
- 主人公もゲームの登場人物も東京タワーに行っていること
- 主人公の母も、ゾンビゲームをしていたこと
これだけでは弱いです。
ゲームのラスト、メインキャラクターは、記憶を取り戻します。
取り戻した記憶が、バッドエンド過ぎて、驚きます。
誰がこんなゲームやるんだよ、とすら思います。
ただ、主人公も、ゲームと同じようなバッドエンドな人生を送ってきた可能性があります。
主人公の行きついた先が、
- 親との別居
- 碧との同居
なのかもしれません。
わからないことが多いです。
例えば、主人公が、ゲームでバッドエンドを迎えたときにどう思ったか、描かれていません。
碧との同居の経緯も、書かれていません。
かかれてないことは、読者が想像するしかありません。
碧はゲームのハンドルネームかもしれないし、ゲームをきっかけに交流を持つようになったのかもしれません。
わからないことが多いですが、想像の余地も大きいので、面白く読めます。
小説を書くとき、面白そうなアイデアを思い付くのは簡単で、それを最後まで書き切るのが大変だと言っていた。本当に大変なのはアイデアを出すことじゃなくてそれを実現することなんだ
碧のセリフですが、作者が顔を出してる感じです。書き切るのが大変なのは同意します。