いっちの1000字読書感想文

平成生まれの社会人。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『サブマリン』伊坂幸太郎(著)の感想【やられたらやり返すは悪か】

前作を読んでいなくても楽しめる

 Amazonの文庫ランキングで1位だったので手に取りました。

 伊坂さんの小説『チルドレン』の続編です。

 『チルドレン』の内容は忘れてしまいましたが、楽しく読めました。

 以下に興味がある人におすすめです。

  • 少年犯罪
  • 復讐
  • 更生
  • 家庭裁判所調査官
  • お仕事もの
  • 変わった登場人物
サブマリン (講談社文庫)

サブマリン (講談社文庫)

 

一言あらすじ

 家庭裁判所調査官の武藤が、先輩職員陣内と、犯罪を犯した少年の更生に尽力する。

 

主要人物

  • 武藤:家裁調査官。妻と子供がいるがなかなか家に帰れない
  • 陣内:武藤の先輩。思ったことをストレートに言う
  • 棚岡佑真:無免許運転で歩行者をはね殺した19歳。友人を交通事故で亡くした
  • 小山田俊:脅迫者に脅迫状を送って、保護観察中の少年
  • 若林青年:10年前に棚岡の友人をはね殺した青年

 

やられたらやり返すは悪か

 交通事故を起こした人間をひき殺すのは、なぜいけないのか。

 法律的に言うと、人を殺すことは犯罪だからです。

 とはいえ、大切な人が交通事故に合ったら、事故の加害者に復讐したくなる気持ちはわかります

 犯罪なのに、です。

 少年(棚岡)は、無免許運転で歩行者をはね殺しました。少年は、10年前に友人を交通事故で亡くし、その友人を引いた運転手(若林)に復讐するため、交通事故を起こしました。

 友人を亡くした少年が、事故を起こした青年を恨むのは仕方ありません。しかし、その青年に対し復讐を実行してしまうと、少年は悪になります。

 では、やられた方はやられっぱなしで、泣き寝入りしなくてはいけないのでしょうか

 被害者側にとって残念ですが、そうです。

 本書はこうした問いをいくつも投げかけてきます。

 

加害者はいつまでも許されないのか

 『サブマリン』の意味は潜水艦です。潜水艦が出てくる箇所を抜粋します。

 彼の起こした事故は、十年経っても消えることがなく、姿が見えない時もどこか、視界の外に潜んでいる。水中の潜水艦の如く、そしてことあるたびに、急浮上し、若林青年に襲い掛かるのだ。(p.264)

 タイトルは、加害者である若林青年に向けた言葉です。

 事故の傷が消えないのは、被害者側と同様に加害者も、ということでしょうか。

 以下は、事故を起こした若林青年へ向けた陣内の言葉です。

サッカーで失点に繋がるミスをした選手が、後半に二点取って、挽回することはできる。ただ、おまえの場合はそうじゃない。何をやろうと、挽回はできない。人の命は失ったら、戻らないからだ。(p.172)

 厳しいですが事実です。いくら更生しても殺された人間は戻ってきません。

 その上で、加害者はどうすればいいかを考える。ですが、答えは見つかりません

サブマリン (講談社文庫)

サブマリン (講談社文庫)