いっちの1000字感想文

一応平成生まれ。主に読書感想文を書いてます。

第161回芥川賞、直木賞の選考委員をメッタ斬り ラジオ日本『大森望×豊崎由美 文学賞メッタ斬り!スペシャル(結果篇)』の感想

番組概要

 7月17日(水)に第161回芥川賞、直木賞が決定しました。

 芥川賞:今村夏子『むらさきのスカートの女

むらさきのスカートの女

むらさきのスカートの女

 

 直木賞:大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

 

 受賞予想した作品の答え合わせや、結果を受けて話すラジオ番組です。

 前回、今回の放送とも、radikoのタイムフリーで聴けます。。

 前回の放送の感想はこちらです。

 文学賞の作品をメッタ斬りというより、賞の選考をメッタ斬りでした。

 特に直木賞の選考委員をメッタ斬りしています。

 

出演者(予想する方)

  • 大森望(書評家、SF翻訳家)
  • 豊崎由美(書評家)

 

芥川賞候補作の点数

 

芥川賞予想作品と発表を受けて(大森望)

 的中です。

(『むらさきのスカートの女 』についての発言を抜粋)

この作品は、非常に読みやすいしわかりやすいので、初めて今村夏子を知ったという人が読むにもいいんじゃないでしょうかね。

結構、売れてましたね。

 

芥川賞予想作品と発表を受けて(豊崎由美)

 はずれです。

 豊崎さんは『ラッコの家』の選考に納得がいっていないようです。

(『ラッコの家』についての発言を抜粋)

落とすんだったら、具体的に、あなたのやりたいことはわかるけども、ここがこういうので読みにくくて、こうでああでこうだからって具体的にね、言ってあげなさいよって。高い選考料貰ってるんだから

指導者としてさ、何とかしてあげなさいよって思うわけ。

 確かに選考委員からの具体的な落選理由は欲しいですね。

 とはいえ、『ラッコの家』は候補作の中で一番地味で、面白みに欠けました

 タッコという主人公の名前が「ラッコ」と聞き間違えられたことがタイトルの由来ですが、だから何?って感じです。

 仮に受賞しても、本書を手に取った読者は「やっぱ芥川賞って難しい」と最後まで読まない気がします。

 その点、今村さんの作品は読みやすく、かつ多様な読み方ができるので、芥川賞を受賞して良かったです。

 豊崎さんも今村さんの受賞については好意的です。

(『むらさきのスカートの女 』についての発言を抜粋)

今村さんが獲ったというのはものすごく順当なことだし、非常に良いと思います。

これ一作だけを取り上げるわけじゃなくて、今まで発表したこちらあみ子』とかあひる』とか素晴らしい作品をずっと書き続けている人だから

 『むらさきのスカートの女 』が良かった人には、こちらあみ子』、あひる』もおすすめです。

こちらあみ子 (ちくま文庫)

こちらあみ子 (ちくま文庫)

 
あひる (角川文庫)

あひる (角川文庫)

 

馬鹿な質問でもすることが大事

 芥川賞、直木賞とも、受賞後の記者会見があります。

 記者の質問に受賞者が答える形式ですが、なぜそんなことを訊く? という質問も少なからずあります。

 例えば、今村さんに「2歳のお子さんに、報告しましたか?」という質問。

 2歳の子にはわからないでしょうと、誰もが思います。

 ですが、大森さんは質問の意味について話します。

(大森さんの発言を抜粋)

あの質問をしたおかげで、今回の作品は子どもに読ませたいと思うような作品ではなかったっていう答えが引き出せたわけです。

だから馬鹿だと思う質問でもすることが大事なんです。どんな答えが返ってくるかわからないんだから。

 優しいフォローですね。質問に丁寧に答える今村さんあっての話ですが。

 

直木賞候補作(点数の話はなし)

 

直木賞予想作品と発表を受けて(大森望)

 ダブル受賞の予想でしたので、一作品は当てましたが、もう一つははずれです。

(『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』についての発言を抜粋)

すごく売れるっていう題材ではないので、こういう形で光が当たって、しかも全部、候補作家が女性っていう、特に直木賞に注目が高かったときに、こういう作品が取って良かったんじゃないかなと思います。

 これを読んで文楽に興味を持つ人が出てきますもんね。

 

直木賞予想作品と発表を受けて(豊崎由美)

 的中です。

(『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』についての発言を抜粋)

順当な結果で、大好きな小説なので、何のあれもないのですけど、希望としてはね、大森さんの予想みたいになるといいなあとは思っていたんですよね。

  なおさら選考の点数が気になります。

 

明るい小説はダメか

 柚木麻子『マジカルグランマ』が、明るいところが損をしたという理由で一番最初に落とされたことについて、二人ともかわいそうと言います。

(大森さんの発言を抜粋)

笑えるような作品って難しいのか

明るいところが損をしたと言われてしまうと……

(豊崎さんの発言を抜粋)

明るいのが不利になっちゃうっていうのは、本当に日本ってユーモア小説に対する評価が低いっていうかね、かわいそう。

 芥川賞ならわからなくもないですが、直木賞でなぜ明るいのがダメなのか、謎です。

 

作者が何を書きたいのかわからない

 原田マハ『美しき愚かものたちのタブロー』は、「作者が何を書きたいのかわからない」と言われて落とされたそうです。二人はテーマがわかりすぎるくらいだと反論します。

(豊崎さんの発言を抜粋)

重要な文化財を後世に残すっていうことの、命を懸けて頑張って戦った人たちの話なわけでしょ。

(大森さんの発言を抜粋)

美しいものの陰には、それを支えてきた、守ってきた、無名の人たちがいて、松方幸次郎だけじゃないんだぞっていうね、無名の人たちに光を当てて検証するみたいな目的もあるだろうし、美術というものの深さというか、業とか因縁とかいうものも感じさせる。

 テーマの受け取り方は読者の側にもあるのに、「何を書きたいのかわからない」と切り捨てられてしまうのは、残酷ですね。

 

ちゃんとしたフィクションで取ればいい

 窪美澄『トリニティ』は、実在とする出版社がモデルで、当時を知っている選考委員が多いので厳しい意見が多かったようです。

(豊崎さんの発言を抜粋)

窪さんは力のある作家だから、こういうね中途半端なフィクションなんかで獲らなくていいわけで、全然この後、ちゃんとしたフィクションでまたやり直せばいいだけのことだから、どんまいでしょ。

 温かい言葉です。

 

リアリティのある言葉遣い

 朝倉かすみ『平場の月』は、選考委員に「主人公が50代だが30代にしか思えない会話だ」と否定的な意見をされます。

 ですが二人とも、リアリティがある会話だったと反論します。

(豊崎さんの発言を抜粋)

今の50代って、ほぼ35歳くらいの感じなんですよ。

今の時代の空気とか今の時代の状況みたいのが全く分からないで、そういうの全く知らない状態の人がね、選考委員なんかやっているからいけないんですよね。

(大森さんの発言を抜粋)

主人公男女は落ち着いているなという感じ。

80代でも「いや僕はね」とかって言うわけですよ。役割言葉が使えない中で、どうやっておじいさん感を出すか

 高齢者から「じゃが」とか「わし」なんて言葉、聞かないですね。

 芥川賞(文藝春秋9月号)も直木賞(オール讀物9月号)も、選評が出たら読みます。

 

 第161回芥川賞・直木賞の結果発表、会見、選評の感想はこちらです。

 私の第161回芥川賞の予想はこちらです。