92歳で産経新聞「朝の詩」に初掲載
著者の柴田さんは、息子さんの勧めで、90歳を過ぎてから詩を書き始めたそうです。
柴田さんが腰を痛めて趣味の日本舞踊が踊れなくなってしまったとき、息子さんはなぐさめるために詩を勧めたのでした。
その方の書いた本書が、100万部以上のベストセラーになりました。
柴田さんが産経新聞の「朝の詩」に投稿し、初めて掲載されたのは92歳のとき、「目を閉じて」という詩です。
目を閉じると
お下げ髪の私が
元気にかけまわっている
(中略)
九十二歳の今
目を閉じて見る
ひとときの世界が
とても 楽しい
目を閉じて、過去の出来事を思い返している詩です。
「九十二歳の今」が強いです。
仮に「社会人の今」だったら弱いでしょう。
作者が92歳だからこそ、過去を思い返す行動が、重くのしかかってきます。
90歳を超えた人間が詩を書いたから、売れたとも言えます。言葉にある説得力が違います。
文章は平易で、誰でも気軽に読むことができます。
産経新聞の「朝の詩」では、
投稿条件は1行10文字、14行以内。子どもから高齢者まで、誰でも理解できる内容
を募集しており、柴田さんの文章も理解しやすいです。
忙しい朝のひととき、一読するだけで「今日も一日、がんばろう」と思えるような前向きで明るい内容が求められます。
柴田さんの詩もわかりやすく、元気を出させるような内容です。
やさしいことば
もらったら
心に朝顔
咲きました
柔らかくて、ほんのり温かくなるような読み心地です。
ポットから
注がれる
お湯は
やさしい
言葉のようだ
ただ、私が柴田さんに元気をもらえたのは、詩の内容からではありませんでした。
90歳を超えてから詩を書き始めたことや、詩を書き続けていたことに、「いつから何をやってもいい」と元気づけられたのです。
それに、何かがだめになっても(柴田さんは腰を痛めて日本舞踊ができなくなった)、他に何かできることがあるかもしれないと思わせてもらいました。
気落ちしていた柴田さんに詩を教えた息子さんもすごいし、受け入れて詩を書き始めた柴田さんもすごいです。
私 辛いことが
あったけど
生きていてよかった
あなたもくじけずに
いつからだって、何を始めたっていい。
柴田さんの生きざまで教わりました。