いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いています。

『奈落』古市憲寿(著)の感想【植物状態だが意識はある歌姫】

植物状態だが意識はある歌姫

主人公の歌姫は、悲劇のヒロインです。

人気絶頂でしたが、ライブ中にステージから転落し、身体を動かせなくなります。

ただ、意識だけはあります

声を出せず、身体を動かせないので、意識があることを誰にも伝えられません

家族に世話をしてもらいますが、家族との仲は良くありませんでした。

  • 母:家と親戚、町内会、保護者会という狭い世界でマウントを取りたがる
  • 姉:依存体質が強く、頼れる存在にすがる
  • 父:たまに意見を言っても母や姉から黙殺か反論される

主人公は、家族から離れたい一心で家を飛び出し、歌手になりました。

ですが、今は家族の世話を受けながら生きています。

家族は、主人公の回復を願っていません

母は、主人公のリハビリに消極的です。

姉は、主人公の印税で高級バックを買いあさり、嘘のエピソードを語ったりレコード会社に口を出したりします。

父は、主人公が身体を動かせないことを良いことに、身体を触りだします。

奈落=地獄です。

「死人に口なし」以上に辛い状況です。

死人には意識がありませんが、主人公には意識があります。家族や同業者に好き勝手されてる状況を、まざまざと見せられているのです。

以下に興味がある人におすすめです。

  • 植物状態だが意識はある人の末路
  • 自分が死んだときの周りの状況 
奈落

奈落

  • 作者:古市 憲寿
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/12/24
  • メディア: 単行本
 

一言あらすじ

人気絶頂の歌手は、ステージから転落し植物状態になるが、意識はある。意識があると思われていないから、家族に好き勝手される。意思疎通できるよう必死にもがくが、誰にも伝えられない。

主要人物

私:香織。ステージから転落し、植物状態になったが意識だけはある

発信しないのは悪いことか

誰もが発信できる時代で、

主人公は「沈黙は悪いことなのか」を考えます。

意見を言うか言わないか選べる時点で、その人はもう強者なのだ。事故に遭った私はどちらも選択できない。(p.37) 

発信するかしないかを、自分が決めたのであれば、どちらでもいいということです。

主人公のように、発信を受け取ってもらえない状況だと、周りにされるがままです。

障害者施設での殺傷事件を思い出しました。

殺してほしいと発信していたのかは、わかりません。(仮に発信したからと言って、殺すのは別問題ですが)

発信できない側、発信しても受け取ってもらえない側の意思を、正確につかむことはできません。

主人公の家族(主に母)が回復を望まないのは、

主人公の奈落が、事故後の人生なのに対し、

母の奈落は、主人公の事故前の人生だからです。主人公が回復すれば、発信されて奈落に逆戻りです。

主人公の回復を望まれない背景があるわけで、

単純に、主人公=善、母(家族)=悪とは思えませんでした。

奈落

奈落

  • 作者:古市 憲寿
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/12/24
  • メディア: 単行本
 

調べた言葉

  • 奈落:地獄、どん底
  • 土臭い:洗練されてない
  • 野暮ったい:あかぬけしていない
  • けたたましい:騒がしい
  • アーコロジー:高い人口密度で住人が居住している建造物
  • クイーンダム:女王の地位
  • けんもほろろ:無愛想に相談などを拒絶するさま
  • Cメジャースケール:ドレミファソラシド
  • 無心:人に金品をねだること
  • ダブルトラック:ボーカルやギターソロを重ね録りすること
  • ロートル:老人
  • マニピュレーター:手で操作する者
  • 尖足(せんそく):足先が下垂し、かかとがつかないもの
  • 堂に入(い)る:手慣れていて身についている
  • 無骨:ごつごつしていて洗練されてないこと
  • コラージュ:画面に印刷物・写真・布などを貼りつける絵画の技法
  • 諫める:あやまちや欠点を改めるよう言う
  • 舫(もや)い:船をつなぎとめること