植物状態だが意識はある歌姫
主人公の歌姫は、悲劇のヒロインです。
人気絶頂でしたが、ライブ中にステージから転落し、身体を動かせなくなります。
ただ、意識だけはあります。
声を出せず、身体を動かせないので、意識があることを誰にも伝えられません。
家族に世話をしてもらいますが、家族との仲は良くありませんでした。
- 母:家と親戚、町内会、保護者会という狭い世界でマウントを取りたがる
- 姉:依存体質が強く、頼れる存在にすがる
- 父:たまに意見を言っても母や姉から黙殺か反論される
主人公は、家族から離れたい一心で家を飛び出し、歌手になりました。
ですが、今は家族の世話を受けながら生きています。
家族は、主人公の回復を願っていません。
母は、主人公のリハビリに消極的です。
姉は、主人公の印税で高級バックを買いあさり、嘘のエピソードを語ったりレコード会社に口を出したりします。
父は、主人公が身体を動かせないことを良いことに、身体を触りだします。
奈落=地獄です。
「死人に口なし」以上に辛い状況です。
死人には意識がありませんが、主人公には意識があります。家族や同業者に好き勝手されてる状況を、まざまざと見せられているのです。
以下に興味がある人におすすめです。
- 植物状態だが意識はある人の末路
- 自分が死んだときの周りの状況
一言あらすじ
人気絶頂の歌手は、ステージから転落し植物状態になるが、意識はある。意識があると思われていないから、家族に好き勝手される。意思疎通できるよう必死にもがくが、誰にも伝えられない。
主要人物
私:香織。ステージから転落し、植物状態になったが意識だけはある
発信しないのは悪いことか
誰もが発信できる時代で、
主人公は「沈黙は悪いことなのか」を考えます。
意見を言うか言わないか選べる時点で、その人はもう強者なのだ。事故に遭った私はどちらも選択できない。(p.37)
発信するかしないかを、自分が決めたのであれば、どちらでもいいということです。
主人公のように、発信を受け取ってもらえない状況だと、周りにされるがままです。
障害者施設での殺傷事件を思い出しました。
殺してほしいと発信していたのかは、わかりません。(仮に発信したからと言って、殺すのは別問題ですが)
発信できない側、発信しても受け取ってもらえない側の意思を、正確につかむことはできません。
主人公の家族(主に母)が回復を望まないのは、
主人公の奈落が、事故後の人生なのに対し、
母の奈落は、主人公の事故前の人生だからです。主人公が回復すれば、発信されて奈落に逆戻りです。
主人公の回復を望まれない背景があるわけで、
単純に、主人公=善、母(家族)=悪とは思えませんでした。
調べた言葉
- 奈落:地獄、どん底
- 土臭い:洗練されてない
- 野暮ったい:あかぬけしていない
- けたたましい:騒がしい
- アーコロジー:高い人口密度で住人が居住している建造物
- クイーンダム:女王の地位
- けんもほろろ:無愛想に相談などを拒絶するさま
- Cメジャースケール:ドレミファソラシド
- 無心:人に金品をねだること
- ダブルトラック:ボーカルやギターソロを重ね録りすること
- ロートル:老人
- マニピュレーター:手で操作する者
- 尖足(せんそく):足先が下垂し、かかとがつかないもの
- 堂に入(い)る:手慣れていて身についている
- 無骨:ごつごつしていて洗練されてないこと
- コラージュ:画面に印刷物・写真・布などを貼りつける絵画の技法
- 諫める:あやまちや欠点を改めるよう言う
- 舫(もや)い:船をつなぎとめること