いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

映画「Dr.コトー診療所」の感想【人を救うのは】

人を救うのは 「Dr.コトー診療所」は、沖縄の離島で働く一人の医者と、島で暮らす人々を、描いた作品です。 医者の名前が五島(ごとう)で、あだ名がコトーです。 2003年、2004年、2006年に放送されて、2022年に映画化されました。 子どもの頃に見ていたとき…

『出版禁止 いやしの村滞在記』長江俊和(著)の感想【なぜ出版禁止か】

なぜ出版禁止か 『出版禁止』は、「放送禁止」シリーズの作者である長江俊和さんの小説作品です。 「放送禁止」とは、放送禁止になった映像を再編集したという設定の、フィクションです。 「放送禁止」は、 なぜ、放送禁止になったのか どの部分で、放送禁止…

『ビューティフルからビューティフルへ』日比野コレコ(著)の感想【膨大な読書量に裏付けされた感覚】(文藝賞受賞)

膨大な読書量に裏付けされた感覚 作者が18歳というのが、どうしても目についてしまいます。 若い感性で書かれた小説ね、と思ってしまいます。 よくない先入観です。早計でした。 言葉の引き出しが凄まじい作品でした。 作品を読んで、 選評を読んで、 対談を…

『ジャクソンひとり』安堂ホセ(著)の感想【敵と見なす勇気】(文藝賞受賞、芥川賞候補)

敵と見なす勇気 ジャクソンは、アフリカのどこかの国と日本のハーフで、ゲイです。 日本で言うところの、マイノリティの中のマイノリティ。 ジャクソンに似ている人間が、他に3人集まります。 4人が集まった場所で、4人の心情も描かれるので、これは誰の心情…

『最高の任務』乗代雄介(著)の感想【最高の任務とは何か】(芥川賞候補)

最高の任務とは何か 前回読んだときの感想(2019年12月)はこちらです。 そのときも、最高の任務とは何だろうと、思っていた気がします。 しかしそこには触れずに、書きやすそうなところを選んで感想を書いています。 最近は、わからないことはわからないと…

『未熟な同感者』乗代雄介(著)の感想【完全な同感者にはなれない】

完全な同感者にはなれない 前回読んだとき(2021年4月)の感想はこちらです。 本を再読したら、前回に書いた感想を読みます。 『十七八より』のときもそうでしたが、再読して感想が変わってます。 初読時の感想が残ってればいいと思ってましたが、再読時に感…

『窓』古川真人(著)の感想【視覚障害者の兄と二人暮らし】

視覚障害者の兄と二人暮らし 主人公は、大学を中退した後、兄と一緒に住んでいます。 兄は目が見えないので、主人公が手助けしています。 兄弟の生計は、兄が立てています。 兄は仕事をし、主人公は家事をします。 兄は出勤前に、窓を開ける習慣があります。…

『十七八より』乗代雄介(著)の感想【あの少女と呼ぶ理由】(群像新人賞受賞)

あの少女と呼ぶ理由 読むのは3回目です。 2021年2月に感想を書いてます。 今回読み返して、読み間違いが見つかりました。 前回の感想では、 回想形式の作品ですが、現在の主人公は、物語に登場しません。 と書いています。 しかし、現在の主人公は、書き手と…

「放送禁止」シリーズの感想【「有田脳」と「しじんの村」】

「有田脳」と「しじんの村」 くりぃむしちゅー有田哲平さんのラジオ番組「有田脳」で、「放送禁止」という映像作品を知りました。 「有田脳」では五十音順に、リスナーから募集した単語について、有田さんが語ります。 今回のお題は「え」。「映像」という単…

『30代にしておきたい17のこと』本田健(著)の感想【何をやりたいかを見極める】

何をやりたいかを見極める 私は30代です。 30代にしておきたいことが、自分は果たしてできてるだろうか。 そんな気持ちで読みました。 10代向けや20代向けのシリーズより、緊張感がありました。 できていない部分に、ため息をつくこともありました。悪い意味…

『列』中村文則(著)の感想②【整理券に書かれたもの】

整理券に書かれたもの 感想①はこちらです。 主人公は列に並んでいます。 何の列か、いつから並んでるかはわかりません。 並んでる理由もわからないのに、列を抜けることはしません。 主人公は、後ろの人から伝言を受けます。 後方からの噂ですが、どうやら私…

『列』中村文則(著)の感想①【列とは何か】

列とは何か 主人公は何かの列に並んでいます。 その列は長く、いつまでも動かなかった。 先が見えず、最後尾も見えなかった。 主人公は何のために列に並んでいるか、わかりません。 いつからか、列に並んでいます。 列に並んでいる前後の人たちと、会話はあ…

アニメ「ウマ娘 プリティーダービー(2期)」の感想【ヒールかヒーローか】

ヒールかヒーローか 1期の感想はこちらです。 1期と2期で主人公が違います。 1期の主人公が、2期では主役でないことに、最初は抵抗がありました。 1期では活躍していたのに、2期で活躍するレースがないからです。 史実に即してアニメを作る場合、1期と2期の…

アニメ「ウマ娘 プリティーダービー(1期)」の感想【トレーナーの重要性】

トレーナーの重要性 競馬はギャンブル。 競馬に対する私の認識は、その程度でした(それも間違ってますが)。 ウマ娘の登場人物は、実在の馬の名前が使われています。 トウカイテイオー オグリキャップ ハルウララ と、名前を聞いたことのある登場人物もいま…

『20代にしておきたい17のこと』本田健(著)の感想【誘われたらやってみる】

誘われたらやってみる 私は30代です。 20代でしておきたいことが、30代になってもやれてないのがあると思い、本書を読みました。 後悔はあります。 後悔は言い過ぎかもしれませんが、こうしておけば良かったことはありました。 誰かから、「○○やってみない?…

『10代にしておきたい17のこと』本田健(著)の感想【自然にできることを伸ばす】

自然にできることを伸ばす 私は30代です。 本書は10代向けでしょう。 「10代のときに読めたら良かったのに」とは思いません。 仮に私が、10代のときに本書を読んだからといって、さほど変わったとは思いません。 それに、過去の自分が読めたら良かったと言う…

『31歳、夫婦2人、月13万円で、自分らしく暮らす。』なにおれ(著)の感想【何者とは何か】

何者とは何か 著者名である「なにおれ」は、ブログ名「きっと何者にもなれない俺たちのライフスタイル」の略称からきているそうです。 僕は、今でも何者にもなれていません。 え? 本一冊出してるのに? 何者の定義はされてないので、なにおれさんの言う何者…

『疫病と戦争の時代に小説を書くこと』村上春樹(著)の感想【小説にしかできないこと】

小説にしかできないこと 本作は、村上さんがアメリカの大学で行われた講演されたときの、元原稿です。 僕がまず原稿を日本語で書き、それをイヴ・ジンマーマン教授が英語に翻訳し、更にそれに僕が手を入れるという作業がおこなわれた。 本書には、日本語だけ…

『がらんどう』大谷朝子(著)の感想【選評を読んで】(すばる文学賞受賞)

選評を読んで アラフォーの女性2人が、ルームシェアをします。 主人公は38歳で、経理の仕事をしています。 同居人は、仕事で知り合った女性です。 仲良くなったきっかけは、推しの男性アイドルグループが同じだったことです。 主人公と同居人が推すメンバー…

『ジューンドロップ』夢野寧子(著)の感想【選評を読んで】(群像新人賞受賞)

選評を読んで 主人公は女子高生で、 母は不妊症 父は母の再婚相手 物語でありそうな家族ものです。 選考委員の柴崎由香さんは、 全般に、語り手や中心となる人物が狭い範囲から出ることがなく、小説の深層で揺らぎが起きにくかったのではないか。 「全般に」…

「STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)」の感想【夏に見返したくなるアニメ】

夏に見返したくなるアニメ 見返したくなると言ってるくらいですから、何度か見てます。 感想もすでに書いていました。 何が素晴らしいかというと、登場人物の魅力です。 登場人物の魅力が、私にこの作品を何度も見せます。 ストーリーが面白いだけでは、何回…

『もぬけの考察』村雲菜月(著)の感想【選評を読んで】(群像新人賞受賞)

選評を読んで 舞台は、都会の賃貸マンションの一室です。 一人暮らし用の部屋で、入居者が頻繁に入れ替わります。 その部屋に住む人たちの生活が描かれます。 文章は読みやすく、最後まで一気に読めました。 「もぬけの考察」は、本作の一つの章のタイトルで…

『ハンチバック』市川沙央(著)の感想②【殺すために孕もうとする障害者】(文學界新人賞受賞、芥川賞受賞)

殺すために孕もうとする障害者 芥川賞を受賞したので再読しました。 前回読んだときの感想はこちらです。 主人公は、嫌っています。 例えば、ものに対して。 博物館や図書館や、保存された歴史的建造物が、私は嫌いだ。完成された姿でそこにずっとある古いも…

『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』の感想【勤務以外の16時間を充実】

勤務以外の16時間を充実 私が本書を読んで感じた結論は、 「勤務時間以外の16時間を充実させる」です。 「勤務時間の8時間は生活費を稼ぐための義務の時間だからしょうがないとして、残りの16時間を充実させよう」である。この16時間はすべて、もっぱら自分…

『犬馬と鎌ヶ谷大仏』乗代雄介(著)の感想【犬の散歩を最優先する青年】

犬の散歩を最優先する青年 タイトルの「犬馬」とは、「犬馬の労」からきていると思いました。 意味は、「主君のために、力を尽くすこと」 力を尽くすのは、主人公 主君は、主人公の飼っている犬(名前はペル) 主人公は、フリーターの25歳です。 大学生のと…

『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』乗代雄介(著)の感想【ワインディング・ノート】

ワインディング・ノート 本書を読むのは2度目です。 それでも、半分以上理解できませんでした。 よって、再読するでしょう。 ――半分以上理解できなかったのに、なぜ、再読すると言えるのか。 理解に苦しんだ作品を読んだとき、読者には、 再読しない選択 再…

Kindle Unlimitedキャンペーンで読んだ本【プライムデー3か月無料はおすすめ】

プライムデーの3か月無料はおすすめ Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)には、キャンペーンのときだけ加入します。 前回(2022年10月)は、「2か月99円」でしたが、 今回(2023年7月)は、「3か月無料」でした。 Kindle Unlimitedは、キャンペーン…

アニメ「リコリス・リコイル」の感想【殺人を未然に防ぐ組織】

殺人を未然に防ぐ組織 1話の冒頭で引き込まれました。 日本の治安が維持されているのは、「殺人を未然に防ぐ組織」によるもの、というアイデアに、面白みを感じました。 「殺人を未然に防ぐ組織」は公にはされておらず、誰も知らないところで日本の治安を維…

アニメ「灰と幻想のグリムガル」の感想【特殊能力なしで異世界転生】

特殊能力なしで異世界転生 主人公は、異世界に転生しますが、チート能力はありません。 特殊能力は与えられず、前世の記憶もありません。 お金もなく、携帯もありません。 携帯という言葉が何を意味しているのかすら、主人公は覚えていません。 何も知らない…

「伝説の一日 伝説の記憶」の感想【明石家さんまとダウンタウンのやりとり】

明石家さんまとダウンタウンのやりとり 「伝説の一日」とは、吉本興業創業110周年特別公演のタイトルです。 「伝説の記憶」は、「伝説の一日」の舞台裏を収録した映像です。 Amazonで視聴しました。 出演者の裏側を見られて良かったです。 特に、ダウンタウ…