いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『未熟な同感者』乗代雄介(著)の感想【完全な同感者にはなれない】

完全な同感者にはなれない 前回読んだとき(2021年4月)の感想はこちらです。 本を再読したら、前回に書いた感想を読みます。 『十七八より』のときもそうでしたが、再読して感想が変わってます。 初読時の感想が残ってればいいと思ってましたが、再読時に感…

『窓』古川真人(著)の感想【視覚障害者の兄と二人暮らし】

視覚障害者の兄と二人暮らし 主人公は、大学を中退した後、兄と一緒に住んでいます。 兄は目が見えないので、主人公が手助けしています。 兄弟の生計は、兄が立てています。 兄は仕事をし、主人公は家事をします。 兄は出勤前に、窓を開ける習慣があります。…

『十七八より』乗代雄介(著)の感想【あの少女と呼ぶ理由】(群像新人賞受賞)

あの少女と呼ぶ理由 読むのは3回目です。 2021年2月に感想を書いてます。 今回読み返して、読み間違いが見つかりました。 前回の感想では、 回想形式の作品ですが、現在の主人公は、物語に登場しません。 と書いています。 しかし、現在の主人公は、書き手と…

『30代にしておきたい17のこと』本田健(著)の感想【何をやりたいかを見極める】

何をやりたいかを見極める 私は30代です。 30代にしておきたいことが、自分は果たしてできてるだろうか。 そんな気持ちで読みました。 10代向けや20代向けのシリーズより、緊張感がありました。 できていない部分に、ため息をつくこともありました。悪い意味…

『列』中村文則(著)の感想②【整理券に書かれたもの】

整理券に書かれたもの 感想①はこちらです。 主人公は列に並んでいます。 何の列か、いつから並んでるかはわかりません。 並んでる理由もわからないのに、列を抜けることはしません。 主人公は、後ろの人から伝言を受けます。 後方からの噂ですが、どうやら私…

『列』中村文則(著)の感想①【列とは何か】

列とは何か 主人公は何かの列に並んでいます。 その列は長く、いつまでも動かなかった。 先が見えず、最後尾も見えなかった。 主人公は何のために列に並んでいるか、わかりません。 いつからか、列に並んでいます。 列に並んでいる前後の人たちと、会話はあ…

『20代にしておきたい17のこと』本田健(著)の感想【誘われたらやってみる】

誘われたらやってみる 私は30代です。 20代でしておきたいことが、30代になってもやれてないのがあると思い、本書を読みました。 後悔はあります。 後悔は言い過ぎかもしれませんが、こうしておけば良かったことはありました。 誰かから、「○○やってみない?…

『10代にしておきたい17のこと』本田健(著)の感想【自然にできることを伸ばす】

自然にできることを伸ばす 私は30代です。 本書は10代向けでしょう。 「10代のときに読めたら良かったのに」とは思いません。 仮に私が、10代のときに本書を読んだからといって、さほど変わったとは思いません。 それに、過去の自分が読めたら良かったと言う…

『31歳、夫婦2人、月13万円で、自分らしく暮らす。』なにおれ(著)の感想【何者とは何か】

何者とは何か 著者名である「なにおれ」は、ブログ名「きっと何者にもなれない俺たちのライフスタイル」の略称からきているそうです。 僕は、今でも何者にもなれていません。 え? 本一冊出してるのに? 何者の定義はされてないので、なにおれさんの言う何者…

『疫病と戦争の時代に小説を書くこと』村上春樹(著)の感想【小説にしかできないこと】

小説にしかできないこと 本作は、村上さんがアメリカの大学で行われた講演されたときの、元原稿です。 僕がまず原稿を日本語で書き、それをイヴ・ジンマーマン教授が英語に翻訳し、更にそれに僕が手を入れるという作業がおこなわれた。 本書には、日本語だけ…

『がらんどう』大谷朝子(著)の感想【選評を読んで】(すばる文学賞受賞)

選評を読んで アラフォーの女性2人が、ルームシェアをします。 主人公は38歳で、経理の仕事をしています。 同居人は、仕事で知り合った女性です。 仲良くなったきっかけは、推しの男性アイドルグループが同じだったことです。 主人公と同居人が推すメンバー…

『ジューンドロップ』夢野寧子(著)の感想【選評を読んで】(群像新人賞受賞)

選評を読んで 主人公は女子高生で、 母は不妊症 父は母の再婚相手 物語でありそうな家族ものです。 選考委員の柴崎由香さんは、 全般に、語り手や中心となる人物が狭い範囲から出ることがなく、小説の深層で揺らぎが起きにくかったのではないか。 「全般に」…

『もぬけの考察』村雲菜月(著)の感想【選評を読んで】(群像新人賞受賞)

選評を読んで 舞台は、都会の賃貸マンションの一室です。 一人暮らし用の部屋で、入居者が頻繁に入れ替わります。 その部屋に住む人たちの生活が描かれます。 文章は読みやすく、最後まで一気に読めました。 「もぬけの考察」は、本作の一つの章のタイトルで…

『ハンチバック』市川沙央(著)の感想②【殺すために孕もうとする障害者】(文學界新人賞受賞、芥川賞受賞)

殺すために孕もうとする障害者 芥川賞を受賞したので再読しました。 前回読んだときの感想はこちらです。 主人公は、嫌っています。 例えば、ものに対して。 博物館や図書館や、保存された歴史的建造物が、私は嫌いだ。完成された姿でそこにずっとある古いも…

『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』の感想【勤務以外の16時間を充実】

勤務以外の16時間を充実 私が本書を読んで感じた結論は、 「勤務時間以外の16時間を充実させる」です。 「勤務時間の8時間は生活費を稼ぐための義務の時間だからしょうがないとして、残りの16時間を充実させよう」である。この16時間はすべて、もっぱら自分…

『犬馬と鎌ヶ谷大仏』乗代雄介(著)の感想【犬の散歩を最優先する青年】

犬の散歩を最優先する青年 タイトルの「犬馬」とは、「犬馬の労」からきていると思いました。 意味は、「主君のために、力を尽くすこと」 力を尽くすのは、主人公 主君は、主人公の飼っている犬(名前はペル) 主人公は、フリーターの25歳です。 大学生のと…

『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』乗代雄介(著)の感想【ワインディング・ノート】

ワインディング・ノート 本書を読むのは2度目です。 それでも、半分以上理解できませんでした。 よって、再読するでしょう。 ――半分以上理解できなかったのに、なぜ、再読すると言えるのか。 理解に苦しんだ作品を読んだとき、読者には、 再読しない選択 再…

Kindle Unlimitedキャンペーンで読んだ本【プライムデー3か月無料はおすすめ】

プライムデーの3か月無料はおすすめ Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)には、キャンペーンのときだけ加入します。 前回(2022年10月)は、「2か月99円」でしたが、 今回(2023年7月)は、「3か月無料」でした。 Kindle Unlimitedは、キャンペーン…

【芥川賞予想】第169回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2023年上半期)

第169回芥川賞候補作発表 2023年6月16日(金)、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、7月19日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 石田夏穂『我が手の太陽』群像5月号 第166回の候補『我が友、スミス』に続…

『エレクトリック』千葉雅也(著)の感想②【ないはずのものがある】(三島賞候補、芥川賞候補)

ないはずのものがある 感想①はこちらです。 主人公の父は、独立して広告代理店を営んでいます。 メインの仕事は、地元のスーパーマーケットの折り込みチラシの作成です。 父の経営は、そのスーパーに依存しています。 スーパーマーケットから契約を打ち切ら…

『我が手の太陽』石田夏穂(著)の感想②【検査員の存在は何か】(芥川賞候補)

検査員の存在は何か 感想①はこちらです。 主人公は工事現場の溶接工です。 予定より早く来た検査員が、主人公の溶接が「不合格(フェール)」だったと知らせます。 検査員は加えて、これまでの主人公の溶接で、ギリギリの判定もあったと言います。 長く続け…

『我が手の太陽』石田夏穂(著)の感想①【工事現場の人のプライド】(芥川賞候補)

工事現場の人のプライド 主人公は、工事現場の溶接工です。 約20年働いてきて、自分の仕事に自信を持っています。 自他ともに認める、技術の持ち主です。 しかし、主人公の溶接が、検査で引っかかり、溶接をやり直すことになります。 なぜ欠陥が出たのか、自…

『それは誠』乗代雄介(著)の感想②【溺れてる人がいたらどうするか】(芥川賞候補)

溺れてる人がいたらどうするか 感想①はこちらです。 比喩的に、主人公は溺れています。 修学旅行の自由行動の1日で、叔父に会いに行くわけですから。 班を離れ、単独行動を希望する主人公。 毎日薬の服用が必要で、吃音持ちの「松」は、主人公への同行を希望…

『それは誠』乗代雄介(著)の感想①【著者の最高傑作】(芥川賞候補)

著者の最高傑作 掲載されている文學界の表紙に、 4人の若者のかけがえのない生の輝きをとらえた、著者の最高傑作! と書かれています。 出版社側が最高傑作と謳った作品で、最高傑作だった試しがあるでしょうか。 ですが、心配無用です。 乗代さんの小説はほ…

『##NAME##』児玉雨子(著)の感想【交換可能な名前】(芥川賞候補)

交換可能な名前 主人公のジュニアアイドル時代と、アイドルを引退した後の大学生時代を描きます。 帯には、 私の過去は、”現代の闇”なのか? でもそれは、あまりにまぶしい闇だった。 「現代の闇」とは、どういうことでしょうか。 セックスを強要されたりヌ…

『ハンチバック』市川沙央(著)の感想①【選評を読んで】(文學界新人賞受賞、芥川賞受賞)

選評を読んで ハプニングバーの潜入記事から始まります。 いきなり性的な表現からか……。 読み始めの印象はそうでした。 しかし、それは入院している人間が執筆している架空の記事だとわかります。 体験ではなく、創作か。 小説自体、創作なのですが、体験を…

『松本』松本人志(著)の感想【ナインティナインはダウンタウンの○○】

ナインティナインはダウンタウンの○○ 本書は、1995年10月5日発行で、 週刊朝日の連載を、単行本化したものです。 ナインティナインについての記載があるのは、雑誌連載の最終回。 1995年7月14日号の週刊朝日だと思われます。 「ポスト・ダウンタウン」と言わ…

高橋弘希×星野智幸 対談「解放をもたらし得る小説」の感想(『群像』2018年2月号)

解放をもたらし得る小説 「解放」とは何でしょうか。 この対談は、高橋さんの小説『日曜日の人々』の話がメインです。 『日曜日の人々』では、自助グループ(悩みや問題を抱えた人たちが集まる場)を描きます。 『日曜日の人々』の感想はこちらです。 作中で…

磯﨑憲一郎×乗代雄介 対談「小説のプランを信じ続ける」の感想(『文学界』2020年8月号)

小説のプランを信じ続ける 小説のプランを信じ続けるとは、どういうことでしょうか。 私には理解できませんでした。 少なくとも、小説を書くためのプロット(プラン)を信じ続けて書く、ということではないでしょう。 理解できなかったのに、なぜ感想を書く…

「受賞者インタビュー 無職の二年間が精神修行になった」の感想(『文藝春秋』2017年9月号)

無職の二年間が精神修行になった 沼田真佑さんが『影裏』で芥川賞を受賞したときのインタビュー記事です。 タイトルが強烈です。 無職の二年間が 精神修行になった どういうことなんでしょうか? 沼田さんは、約10年間働いた後に、無職になったそうです。 九…