いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

2021-01-01から1年間の記事一覧

『短冊流し』高橋弘希(著)の感想【離婚前の別居期間】(芥川賞候補)

離婚前の別居期間 主人公は、自分の不貞(不倫)の約1年後、妻から離婚を切り出されます。 5歳の娘がいて、妻は妊娠8か月でした。 妻は、主人公に言います。 半年間の別居をして、その後、正式に離婚したい。 5歳の娘のために、妻は半年間の猶予期間を設けた…

『スイミングスクール』高橋弘希(著)の感想【泣き叫ぶ我が子を見て「ざまぁみろ」】

泣き叫ぶ我が子を見て「ざまぁみろ」 自分の幼い娘が泣いていても、主人公は無言で見つめています。 ふいと口元から、溜息のように、溢れるように、零れました。 「ざまぁみろ――」 無意識にこぼれ出た「ざまぁみろ」は、愛情とは真逆です。 ちょうど帰ってき…

『ルックバック』藤本タツキ(著)の感想【4コマ漫画を媒介にした世界】

4コマ漫画を媒介にした世界 小学4年生の主人公は、学級新聞に4コマ漫画を載せています。 ある日、担任の教師から、他の生徒の漫画も載せていいかと聞かれます。学校に来ていない生徒の作品のようで、主人公は、 学校にもこれない軟弱者に漫画が描けますかね…

『自分の中に毒を持て』岡本太郎(著)の感想【できるだけ本音で生きる】

できるだけ本音で生きる 岡本太郎と聞いて、 太陽の塔(万博公園) 明日の神話(渋谷駅) を思い浮かべる人は多いでしょう。 私はそれらの作品の良さはわかりません。むしろ、おどろおどろしく、子どもの頃に見ていたらトラウマものでしょう。ピカソのゲルニ…

ノートパソコンスタンドを使った感想【肩こり解消、タイピングスピード向上におすすめ】

肩こり解消、タイピングスピード向上 ノートパソコンスタンドを買いました。私が使っているノートパソコンは、11.6型です。 ノートパソコン スタンド PCスタンド改良 折りたたみ式 iVoler タブレット スタンドラップトップスタンド 高さ・角度調整可能 アル…

第165回芥川賞受賞作発表、選評(2021年上半期)の感想

第165回芥川賞受賞作発表 2021年7月14日(水)、芥川賞の受賞作が発表されました。 ダブル受賞です。 石沢麻依『貝に続く場所にて』 貝に続く場所にて 作者:石沢麻依 講談社 Amazon 李琴峰『彼岸花が咲く島』 彼岸花が咲く島 作者:李 琴峰 文藝春秋 Amazon …

映画「響 -HIBIKI-」の感想【アイドル映画ではない】

アイドル映画ではない 主人公の15歳の女子高生が、小説の新人賞に応募します。 タイトルの「響」は、主人公の名前です。 主人公の小説が、新人賞を受賞し、芥川賞と直木賞にノミネートされます。この時点でおかしいです。 ノミネートの基準は、 芥川賞:雑誌…

『大家さんと僕 これから』矢部太郎(著)の感想【血のつながらない親族】

血のつながらない親族 前作『大家さんと僕』の続編です。 『大家さんと僕』の感想はこちらです。 冒頭の、大家さんと僕の人物紹介に、 大家さん:知的なイケメンがタイプ 僕:大家さんとの日々を漫画にしたら思わぬ大ヒットに とあります。前作の人物紹介に…

『いい子のあくび』高瀬隼子(著)の感想【歩きスマホに自らぶつかりにいく】

歩きスマホに自らぶつかりにいく 著者の文章は読みやすいです。小説ですがエッセイを読んでいる感じでした。タイトルもエッセイっぽいです。 なぜエッセイっぽいかを考えると、日常生活に起こる、主人公の思考の流れが中心で、極端に描写が少ないからだと思…

読書メーターの「芥川賞・直木賞特集ページ」にレビューが掲載された経緯

読書メーター「特集ページ」への掲載経緯 読書メーターとは、読んだ本の管理や感想(レビュー)を記録できるサービスです。 今回、読書メーターの「芥川賞・直木賞特集ページ」に、私の感想が掲載されたので、その経緯を記しておきます。 「芥川賞・直木賞特…

『貝に続く場所にて』石沢麻依(著)の感想【震災で行方不明になった知人】(群像新人賞受賞、芥川賞受賞)

震災で行方不明になった知人 主人公の女性は、ドイツのゲッティンゲンに住み、論文を書いています。 そこに、東日本大震災で行方不明になった知人が来ます。大学のときに、主人公と同じ研究室に所属していた男性で、9年ぶりの再会です。 話しぶりや様子を見…

『氷柱の声』くどうれいん(著)の感想【三月十二日を忘れない】(芥川賞候補)

三月十二日を忘れない 主人公の女子高生は、東日本大震災を経験しました。 2011年(被災、美術部での活動) 2016年~2021年(仙台での大学生活、フリーペーパーの編集者) 高校で美術部に所属する主人公は、高校最後のコンクールで「滝」を描きます。主人公…

『水たまりで息をする』高瀬隼子(著)の感想【風呂に入らない夫】(芥川賞候補)

風呂に入らない夫 35歳になる夫は、 風呂には、入らないことにした と、主人公に宣言します。 なぜ、風呂に入らないのか、わかりません。 夫に聞いても、 くさくない? (中略) あとちょっと痛い と、よくわからない理由です。 夫は以前、ずぶ濡れで会社か…

『大家さんと僕』矢部太郎(著)の感想【Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)のおすすめ】(手塚治虫文化賞)

Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)のおすすめ 『大家さんと僕』、一気読みしました。 なぜ、一気読みできたかというと、 上品な大家さんが魅力(挨拶が「ごきげんよう」、伊勢丹によく行く) 芸人だがうまく喋れない僕が魅力(矢部さん本人) 周りの…

『1%の努力』ひろゆき(著)の感想【AmazonオーディオブックAudibleのおすすめ】

AmazonオーディオブックAudibleのおすすめ 初めてオーディオブックを聞きました。 オーディオブックとは、簡単に言うと、本の朗読サービスです。本に書かれた文字を、ナレーションの方が読み上げてくれます。 本を手に取って読めば、身体を拘束されます。で…

『孤独論 逃げよ、生きよ』田中慎弥(著)の感想【死ぬよりは逃げる道を選ぶ】

死ぬよりは逃げる道を選ぶ 著者の田中さんは、大学受験に失敗して15年、仕事をせず家にいました。 朝起きて、食事をして、たまに母や祖父と言葉を交わし、テレビを眺め、窓越しの景色を眺め、本を読み、文章を書く―― そんな生活です。 29歳のときに、書いた…

『マジックミラー』千葉雅也(著)の感想【いつか必ず失われる姿】(川端康成文学賞受賞)

いつか必ず失われる姿 マジックミラーは、男性同士の性的交流の場(ハッテン場)の入り口に置かれています。 狭い玄関だった。例によって正面にマジックミラーとスリットがある。どこのハッテン場でも同じだ。 主人公は、新宿二丁目のバーで、過去の出来事を…

『穴』小山田浩子(著)の感想【穴は誰かとつながる存在】(芥川賞受賞)

穴は誰かとつながる存在 主人公は、夫の転勤に伴い、夫の実家の隣に住むことになりました。 田舎で、何もありません。 仕事の求人はなく、主人公は専業主婦になりました。 引っ越しの荷物が片付くと、私は何の予定も宿題もない夏休みを与えられたような気持…

『オーバーヒート』千葉雅也(著)の感想【『デッドライン』のその後】(芥川賞候補)

『デッドライン』のその後 2018年、主人公が大阪に住んでいるときの話がメインです。 主人公は、京都にある大学の准教授ですが、大阪に住んでいます。 長い間東京に住んでいた主人公にとって、 京都は「沈鬱な地方都市」 大阪は「関西の東京」 だと思ったか…

『嫌われる勇気』の感想【読書感想文ブログの運営方針】

読書感想文ブログの運営方針 本書で書かれていることは強烈です。 例えば、 トラウマは、存在しない すべての悩みは「対人関係」 あなたは世界の中心ではない ワーカホリックは人生の嘘 人はいま、この瞬間から幸せになることができる などです。 中でも私が…

『星月夜』李琴峰(著)の感想【子どもに依存する親】

子どもに依存する親 主人公は台湾人の女性で、日本の大学で日本語を教える非常勤講師です。 教え子の女性に、恋人のような存在がいます。 教え子は新疆ウイグル自治区出身で、日本の大学に通いながら、大学院を目指しています。 教師と教え子が、どのように…

『道化むさぼる揚羽の夢の』金子薫(著)の感想【この世界には道化のみ似つかわしい】

この世界には道化のみ似つかわしい 主人公は、さなぎの形の拘束具に閉じ込められています。 首から上は外に出ていますが、身体は拘束されています。よって、糞尿垂れ流しです。 やっとのことで解放された主人公は、工場で揚羽(アゲハ)蝶を作るよう命じられ…

【芥川賞予想】第165回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2021年上半期)

第165回芥川賞候補作発表 2021年6月11日、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、2021年7月14日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 石沢麻依『貝に続く場所にて』(群像6月号) 初の候補入りです。 同作で群…

『空が青いから白をえらんだのです』寮美千子(編)の感想【少年刑務所受刑者の詩集】

少年刑務所受刑者の詩集 本書は、奈良少年刑務所の受刑者が書いた詩で、構成されています。 タイトルの「空が青いから白をえらんだのです」も、受刑者の書いた詩です。 詩を書いた受刑者の人となりを、編者の寮さんが補足します。 残念ながら私は、57編の詩…

『生き方の問題』乗代雄介(著)の感想【従弟と従姉の生き方】

従弟と従姉の生き方 24歳の主人公は、2歳年上の従姉に、長文の手紙を出します。 作品全体が主人公の手紙で構成されているので、長い手紙です。 長文の理由を、主人公は、 僕は貴方との数少ない思い出を絞って一滴残らず文字に変え、その冷たい艶を潤滑油に、…

『ポラリスが降り注ぐ夜』李琴峰(著)の感想【新宿二丁目の女性専用バー】(芸術選奨新人賞受賞)

新宿二丁目の女性専用バー 「ポラリス」とは、新宿二丁目にある、女性専用のバーです。 バーに集まるのは、主にレズビアンの女性たち。 本作は、店主やバイト、客の、7人が語り手となります。 本作で特に良いと感じたのは、 同じ言葉が、後になって別の意味…

『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介(著)の感想【介護する側される側】(芥川賞受賞)

介護する側される側 28歳の主人公は、前職を自主退職し、就職活動をしています。 仕事がなかなか決まらないので、家で資格の勉強をしたり、筋トレをしたりします。 主人公は、 現在無職だが死にたいと思うようなときなど一瞬もおとずれず、生を謳歌したい気…

『死んでいない者』滝口悠生(著)の感想【まともでない奴が魅力的】(芥川賞受賞)

まともでない奴が魅力的 死んでいなくなった男の通夜に、親戚が集まります。 子、孫、ひ孫。以前から関係性のある者もいれば、関係性のない者もいます。 親戚一同を分ける場合に、2通りあるそうです。 上の世代、下の世代(年齢)で分ける まともな奴、まと…

『異類婚姻譚』本谷有希子(著)の感想【家族の末路】(芥川賞受賞)

家族の末路 専業主婦の主人公は、旦那と二人暮らしをしています。 ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。 結婚して4年の主人公は、同じマンションの住人の女性に、旦那と顔が一緒になってきたことを打ち明けます。 女性の知り…

『大阪の西は全部海』岸政彦(著)の感想【思考から離れられる場所】

思考から離れられる場所 大阪に住む40歳過ぎの女性が、一人語りしています。 パートナーらしき男性に語っているようですが、誰なのか、生きている人への語りなのかは不明です。 私はただの地味な、真面目な、あんまりよう喋らんけどひとに気ばっか使ってる事…